第6話 入所テスト①

「試験頑張ってくださいね、シェリー」

「まああれだけやれば大丈夫だろ!」


あれから1週間、私は魔法の特訓と時々勉強を頑張った。そして今日はいよいよ魔法研究所の入所テストだ。


「では、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「いってら!」


私魔法研究所まで移動するためには用意してもらった馬車に乗りこんだ。


――――――


「わぁぁ…!」


シュバルツていのある首都の中心街から少し離れたところまで移動すると、だだっ広くて白い壁に囲まれた建物が見えてきた。ここが魔法研究所施設だ。


もう少し移動すると、巨大な鉄格子の門の前に着いた。ここが入り口らしい。


馬車を降りて門の前まで移動すると、そこには男性が1人立っていた。


「お待ちしておりました、シェルシェーレ・シュバルツ侯爵令嬢。私は副所長のアシュトン・ジェンキンスです。」

「お出迎え頂きありがとうございます、アシュトン様。」


副所長のアシュトン様はロマンスグレーの髪に紫色の目をした知的な雰囲気の初老の男性だ。というか、ただの新米所員候補1人のために副所長さんが来るってどういうことですか。侯爵令嬢だからって対応手厚すぎませんか。


「では、さっそく中へどうぞ」


アシュトン様について行き研究所の中を進む。建物は主に石造りで、沢山の部屋に分けられている。そっと部屋の中を覗くと、剣や魔法銃など、なにやら物騒なものが並べられていた。


「あの、質問よろしいでしょうか?」

「はい、可能な範囲でならお答えしますよ。」

「どうもお部屋の中には武器ばかりが沢山あるようなのですが、魔法薬とかの類は扱わないのですか?」

「ああ、それはここが軍事魔法部門の建物だからですよ。研究所は大きく分けて軍事魔法部門、生活魔法部門、工業魔法部門、総合魔法部門に分かれています。魔法薬は他の部門では頻繁に使いますが、軍事魔法部門はあまり使わないのです。」

「なるほど、そういう事でしたか」

「シェルシェーレ嬢は、どういった研究がしたいという希望はございますか?」

「いえ、特別これがしたいというのは…本を読むときも色々な分野のものを満遍なく読んでいましたので…あ、でも武器を作るよりは魔法薬や魔法陣の研究がしたいなーというのは漠然とあります」

「なるほど、それでは軍事魔法部門以外がいいかもしれませんね。まあそれはテストが終わってから色々見学してゆっくり決めてください。」

「はい。とはいえ、そのテストが上手くいけばの話ですが…」

「ハハ、そう心配することはありませんよ。通常は魔法学校を卒業した後に受けるようなテストですが、あの優秀なシュバルツ侯爵のご令嬢とあれば問題ないでしょう。」

「ハハハ…」


いや、シュバルツ侯爵お父様は元々優秀な歴代のシュバルツ侯爵の中でも最高峰と言われてるんです。たまたまあの人が凄いだけで他はそんなでもないんです。ハードルあげないでください。


と心の中で反論していると、机と椅子があり、机の上に時計と問題用紙らしきものがある小さな部屋の前についた。


「さて、ではまずここで筆記テストをおこなって頂きます。制限時間は約2時間、特に試験監督は付きませんが、テストの後に嘘発見器を用いてカンニングをしたか確認させていただきますので、くれぐれもカンニングをしないように。とはいえシェルシェーレ嬢がそういったことはなさらないとは思いますが、毎回おこなっていることなのでご協力お願いします。」


なるほど、仮にカンニングをした場合、"カンニングはしてません!"と言えば嘘発見器が鳴ってカンニングがバレるってことか。まあ元からそんなことするつもりは無いから問題ないけど。


「わかりました。」

「それでは、終わる頃に参りますので、頑張ってください。」

「はい」


副所長さんが去ると、私は用意されていた筆記用具を持って問題を解き始めた。よし、とにかく今から2時間頑張るぞ。

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