【助】(2/22)鳴人という女(後編)
(備考)
ススム君という作家が色々と学ぶ物語です。
(以下、本文)
前回のエッセイを通して「多くの素晴らしい企画が存在する」という大切なことを、ススム君は伝えたつもりになっていた。
・声や演じ分けは、思っていた何倍も尊い。
・執筆中、時に寄り道するのも楽しい。
この二点を書き残す目的で作られたのが後編、どちらもススム君が
汚らしいカラスのような鳴き真似を「これはペンギンの声である」と言い張って憚らないだけでなく、親しみのわく少女の声や美しく聡明な女性キャラクターの雰囲気を表現することも得意とする女、それが
二〇二四年の春、百二十作品を配信で〝朗読〟するという正気の沙汰とは思えない企画を、
「うわ、応募する作品のチョイス……ミスったな」
ススム君は参加表明したにも関わらず、直前になって「公開処刑になりそうだし、読んでもらうのやっぱナシでお願いします」というコメントを打っては消し打っては消しで踏み留まる体たらく。これは、選んだ作品に問題がある。
作品そのものは気に入っていたが、第一話に関しては褒める部分がまるでない。辛うじて「文末のフックを設けることは出来た」程度。
地の文が異様に薄い。(作品総文字数の関係で仕方ない)
会話劇の構成も読みにくそう。(制約からこれも仕方ない)
だから工夫したものの、辛そう。(手は尽くした)
主人公がヒロイン二人に罵られるだけで終わる。
他は許容できるとしても、最後の「構成」はあまりにも朗読向けではない、主人公が罵倒され詰められるだけの配信なんて空気が凍る、そうススム君は思い震えていた。
*
なお、実際に場の雰囲気が悪くなることはなかった。これは偏に、
主人公、先輩系ヒロイン、後輩系ヒロイン。
声色の変化から「うわ、居るわ、後輩って感じの声だ」「そうそう、年上お姉様系は〝こう〟よな!」とテンションが上がるススム君。
『送ってくれたススム君の作品、キャラが濃いですね〜』
否、そうではない。
作品が良い具合に濃さを出せているというより、
「最初に僕の作品を朗読して下さったの、
*
ところで、ススム君は活動開始からしばらくの間は某テニスプレイヤーのスタンスで生きていた。
「一つの所に命を懸ける、一所懸命ッ!」
周囲の気温を上昇させるテニス選手の名言である。専念するものがあるなら、脇目も振らず書こう、それがススム君にとっての処女作。
それでも思うように書けない時がある、筆が乗らない日もある、問題が発生しヘラったり病み散らかることもある。
「そうだ、ペンギン杯を書こう」
ストイックに一点を突き詰めるのも有意義だが、息抜きに無関係なものを執筆するのも楽しい気持ちいい、と前編で紹介したペンギン杯を通してススム君は学ぶ。
『変なルールで自分を縛り苦しむ必要はない』
短編や掌編の楽しさ、気分転換の重要性、大切なことを教えてくれた
本当は
配信を通して汚ねえカラスの鳴き声をアピールする素敵な女性である点も、多くの企画を主催する行動力も、全て実話である。
創作系ペンギンYouTuber、天野蒼空さんを何卒よろしくお願いいたします。
<了>
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