(4/6)ゲームセンターに行こう


 声を抑えながら、それでも小学生のようにおおはしゃぎする僕を眺め苦笑いするテツ君に支払いを任せサイゼリヤを後にする。


「あの店ならなぁ、タバコ吸えるんよなぁ」


 訪れたサイゼリヤは市内中心部。解散ではなくカラオケに行こうという流れになり、昨今の時勢から禁煙店が増えたという話をしていた。


 高校時代、テツ君の実家は市内の近郊寄り。僕の実家と通っていた高校は郊外寄りに位置した。そんな郊外の片田舎に、テツ君や他の友人知人と何度も通ったゲームセンターが存在する。そして、カラオケが併設。


「地元のゲーセン行こう! この前、一人でカラオケ行った! あそこならタバコを吸える!」


 テツ君は非喫煙者。カスのような理由で突発のドライブに巻き込まれる形になったが、道中の会話も楽しかったし白熱していたので怒ってないと思う。


「なんかさー、出る前はてっきり高校ん時にやってたゲーセンのゲームの話とかになると思ってた、僕は」

「会社の話や政治的な内容になっちゃいましたね!」


 僕が以前勤めていた業テツ君の職種は異なるが、似通った部分もある。人が増え団体が増え利権や思惑が絡み合うと、うんざりすることも楽しいことも増える。互いに近い経験をしたエピソードになると相槌にも力が入り、数十分の道のりを延々と高い熱量で会話していた。



 高校時代、毎日のように学校帰り寄っていたゲームセンターに到着。

 

「あー、諸行無常ってやつだね」

「見る影もない、ですね」


 かつて多くのアーケードゲームで僕らを楽しませてくれた施設は、今や大半をクレーンゲームとメダルゲームに支配されている。


「もっと通い続けたらよかったのかなぁ」

「売り上げに貢献できなくなっちゃいましたしね」


 テツ君と過ごしていた高校時代か、あるいはそこから五年ほど経った辺りが「ゲームセンター」の最盛期だったのか、という気がしてくる。


「や、でもさ、僕達の世代が離れてもさー、令和の高校生や大学生、来たりしてくれんかったのかなぁ」

「音ゲーや他のは分かりませんけど、格ゲーは一時期衰退したらしいですよ」


 どうやら、僕がゲームセンターから離れている間に格ゲーも音ゲーもシューティングゲーも滅亡の危機に瀕した時期があったらしい。


 界隈全体の話はさておき、少なくとも田舎の小さな店舗であるこの地では既に息絶えてしまったのではないか。

 そう思ってしまうほどアーケード筐体が見当たらない。テツ君と二人で店舗内を散策するも、影も形もない。


 しかし、アーケードゲームは滅びていなかった。


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