忌まわしき恥のエッセイ


 二〇二四年の五月下旬、筆者の脳内に声が響く。


『番組の途中だけど、ここで臨時ニュースをお伝えするのだ』


 声の主、それはボイスロイドずんだもん。筆者は、ずんだもんを頭の中に住まわせる異常者であり度々たびたびずんだもんの声に従ってエッセイを執筆しながら、投稿もしくはボツにするなどしていた。


 本書「助かるかもしれない運転」というエッセイは今朝まで続きもの四話完結の内容を投稿しており、次回は五月二十六日の午前七時として最終回である四話を予約投稿済み。


あいだに差し込んではさめてもいいのだ。〝恥〟の章つながりで、駐禁チューキンの話をブチ込むのだ』


 駐禁、駐車禁止ちゅうしゃきんしの略称。


 そんなしょうもない違反で罰金や免許の点数という罰則ペナルティを課されるなど、自分に限って起こり得ない。筆者はそんな風におごたかぶっていた。


 まず、自動車を運転しない方々に向けて〝一方通行〟の図解。読みは「アクセラレータ」ではなく「いっぽうつうこう」である。

 

 パソコン、スマホ問わずブラウザ版カクヨムまたは、アプリで文字サイズを「小」にすると正確に表示可能。


右図、二車線交互通行

左図、二車線一方通行


    ↑ ↓         ↑ ↑

 建物┃ ┃ ┃建物   建物┃ ┃ ┃建物

 建物┃ ┃ ┃建物   建物┃ ┃ ┃建物

 建物┃ ┃ ┃建物   建物┃ ┃ ┃建物

 建物┃ ┃ ┃建物   建物┃ ┃ ┃建物

 建物┃ ┃ ┃建物   建物┃ ┃ ┃建物

 建物┃ ┃ ┃建物   建物┃ ┃ ┃建物

    ↑ ↓         ↑  ↑


 建物に挟まれ、自動車一台分の道路が二本並び「矢印」は路面を走行する車両の進行方向を意味する。

 左の図は二本の道路それぞれが進行方向の異なる、いわゆる「交互通行」であり、右図の場合は二本のレーンどちらも同じ進路への走行が定められた「一方通行」となる。


    ↑  ↑ ↑  ↑

 ビル┃ ┃ ┃ ┃ ┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃○┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃ ┃コンビニ!!

 ビル┃ ┃ ┃ ┃ ┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃○┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃○┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃ ┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃○┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃○┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃○┃ビル

 ビル┃ ┃ ┃ ┃ ┃ビル

 ビル┃ ┃●┃ ┃ ┃ビル

    ↑  ↑ ↑  ↑


 大きな、一方通行の路面も存在する。それがこちらの図である。補足として「○」は路肩に路上駐車をした第三者の車両、●は筆者の車両を表す。一方通行なので進路は当然、四つのレーン全て「矢印」が示す方向への走行が義務付けられている。


 図の最下段にあたる部分を走行する●車両トモフジテツは図の上部を目指し直進する最中さなか突発腹痛ポンポン・ペイン見舞みまわれた。


 コンビニに、行くしかない! 図の上部右側にコンビニが存在する。路上駐車が多いが、さいわい車線変更をして隙間をうように車を停めることが可能。


 この判断が、誤りだった。


 トイレを借り、手を洗い、数百円の買い物を済ませ車に戻った筆者の目に飛び込んできたものは……駐禁ステッカー。


「え、でも前後にたくさん路上駐車してた車いたのに? いや違う、大虐殺ジェノサイドだッ!」


 全員が、おそろいで仲良く駐禁ステッカー。例外なく景気よく、公安による路上駐車禁止の取り締まりフィーバー。


「うそやん……」


 ●車両トモフジテツのみならず図で「○」と記載された六台の運転手が残らず一網打尽、皆殺しにされた。違反切符で、ふと気になる表記が目に入る。


『補助標識なし』(違反切符に記載)


 補助標識、それは当該エリアに駐車することを許可しない旨を主張する案内板。筆者や「○」の者達が車を停めた路面には、その補助標識が影も形も見当たらない。


 しかし、ダメなのである。


『左側端に沿わない放置』(違反切符に記載)


 自動車を路肩に寄せ停車するなら「左端」に停めるべし。


 これが、強制力の高い規則ルール。つまり●車両トモフジテツは、左から二つ目のレーンを走っていた初期状態から「さらに左」へ車線変更をして駐車、その上で道路三車線を徒歩で横断しコンビニに駆け込むのが正解だった。


「気に入らないけど、致し方なし」


 法に則った〝正解〟を選び交通量の多い道路を歩いて三つ渡るより、コンビニの目の前に停めた方が合理的。そんなものは筆者の勝手な屁理屈である。ルールは守らねばならない。そして、冷静に思い返せば教習所で習った気がしないでもなかった。筆者は、途端とたんに恥ずかしくなる。


「同じことしてる人、多いなぁ」


 ●車両トモフジテツと一緒に滅ぼされた「○」の六台にせよ、そこから市内を走る途中で目にした光景にしても、類似例がとにかく多い。


【一方通行路面で右側に駐車するやからは多い】


 彼らは自分と同じように教習所で習ったことを忘れてしまったのか、あるいは知った上で無視シカトしているのか。


 そこは、さしたる問題ではない。


『早めに、発信したほうがいいのだ』


 ずんだもんが定期的に出すエッセイ指示を、筆者は受信。



 運転免許の点数は痛い。ゴールド免許が遠のく。しかし、それ以上に辛いのは違反金である。


 その額、脅威の一万五千円。


 アラサーにもならぬ頃、ちょっと色々あって泣きながら二十万円近く支払った罰金に比べればマシ。


 それでも、一万五千円はあまりにも重い。


 コメダ珈琲店で三十杯近く頼める、月のタバコ代でお釣りがくる、配信者に赤いスーパーチャットを送れる、チョコボールピーナッツ味を半年分、いやそれ以上に確保できる金額。


 駐禁の違反金、一万五千円は高額である。


 そうして筆者は悲劇の連鎖を断ち切りたいと願い、エッセイを執筆した。


(追記)

 確かに教わった記憶はあるものの、理由何だっけなと調べました。

 まず前提として「左側から追い越す」がアウトなんですよね、それはそう。峠道とかで起こりがちだけども、普通に禁止です本当は。


 そうなると、推奨の追い越し択は右側の車線。


 それを遵守して右側へ車線変更した走行車がいるのに「右側路上駐車」が居座っていると追突事故に発展しかねないわけで。


 だから、駐停車は『左側の端』じゃないとダメなんですねー。なにが「気に入らないけど」やねん。なーにが「コンビニ目の前のが合理的」やねん。

 恥の上塗りですが、戒めとして本文そのまま当初のものを残します。

 余談というか調べた副産物ですが、左端に停める時『歩道に少し乗り上げる』という手法もアウトでした。あまり使わないけど、傍目から見て「走行者に対する気配りー」と好意的に捉えていたから意外だった。


 守ろう、交通ルール!


(備考)

 ATOKのシリーズは明日の朝7時に投稿されます。なお、どうして突発腹痛ポンポン・ペインが起きてコンビニのトイレに駆け込んだか考えてみると昼下がりに別なコンビニで「やった、ついに今年もスイカバーのシーズンが来た!」と浮かれて一気に二本買って二本食したのがダメだったのかもしれません。

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