白き爆弾魔(前編) コメントの転載


 ピンク色をした丸い生き物が活躍する作品を楽しむよりも以前、クソガキはあらゆる機械や生物を爆殺するゲームに興じていた。


 クソガキのようにそのゲームで遊ぶ者は、白いヘルメットを装着した爆弾魔の男性を自分の分身として操作し、画面の中で動き回る爆弾魔の行動を選択しながら無辜むこの原生生物や敵対する機械などを皆殺しにする。


「この面、金色の超火力アイテムあるからね」

「そうなんだ!?」


 クソガキは一人で何周も重ね、攻略するステージに配置されたアイテムの種類も記憶し友人に教示した。そう、このゲームは複数人の協力プレイが可能だったのである。


「このオレンジのヤツからボスいきなり強くなるよ」

「ほんとだ、2めんまでのボスより攻撃早い!」


 大抵のテレビゲームには〝ボス〟が存在する。


 赤い服に赤い帽子、ヒゲヅラの配管工が活躍する作品では冒険と攻略を繰り返しながら一定の周期サイクルで大型の敵と対峙するように。

 黄色い電気鼠をはじめとする小さな怪物モンスター使役しえきする作品でもまた、立ちはだかる熟練の育成者ジムリーダーに挑戦し勝利することで称号バッチを獲得するように。


 爆弾魔を操作するゲームにも、何体かのボスが配置されていた。



 攻略の手ほどき、ボスの説明、協力プレイは和気藹々わきあいあいとした穏やかなものになるかと思われた。


「へへ、もーらい!」

「は? ズルいぞ、十分じゃんもう! よこせよ!」


 いさかいも、発生する。


 爆弾魔の移動速度を向上させるアイテム、設置した爆弾が起動した際に発生する爆風の火力を底上げするアイテム、それらの個数は一定にして有限。


 パイの、奪い合い。


『同士討ちが可能なシステムだと、それなりに成熟してないとまともに協力できませんからねぇ。

そうでなくてもアイテムの取り合いとかが発生すると荒れがちだったり。』


 先日、本作へ寄せられたコメント。これは〝まさに〟である。より強く在りたい、速くなりたい、優位に立ちたい、そこにはもはや無邪気な小学生の姿はなく、双眸でテレビの画面を見つめるのは血に飢えた二匹の獣だった。


「おい、閉じ込めんなよ!」

「へへっ」


 特に深い理由もなく、面白おもしろ半分に〝相手〟を殺害する遊びも始まる。点在するゲーム内の敵などそっちのけである。

 有人キャラクターしか表示されない対人戦専用の機能モードも選択可能だったが、あくまで事故や流れ弾に見立てて偶然を装い殺害する行為の方が盛り上がった。


 やがて、殺し合いは新たな〝段階フェイズ〟に突入する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る