(6/8)ピンク色をした丸い生き物


 やがてキモオジに進化しエッセイを書くなどするクソガキが小学生の頃の話。

 

 本を読み漫画を楽しみ多くの誤りを少しずつ正しながら、人生を謳歌し毒を用いたギミックに憧れ始めたクソガキは、久方ぶりに〝友人〟と遊ぶ。


 引っ越しや転校を挟んだ関係から少しずつ疎遠となり、思い返すと〝友人〟との最後の思い出はこの一日だったのかもしれない。

 以降は互いがそれぞれの人生を歩み、クソガキは小学生時代「トモフジテツ」という名の「トモ担当」や「フジ担当」に該当する大切な友人と出会うことになるが、それはまた別な話である。


(備考)

 トモフジテツの中の人が数人いるわけではなく、五人の友達の本名から(無断で)漢字を一文字ずつ貰って混ぜた名前がトモフジテツでした。

 少し前に「実在の人を取り上げるなら確認や連絡大切よな」的なことを書いて舌の根も乾かぬうちに、このシリーズ作るの良くないと思った。これっきりにしよう。幼少期の友人エピソードは無断で書いてます。

(以下、本文)


 結果的に「最後の一日」となった友人宅での時間、クソガキは心を揺さぶられた。


 ピンク色の丸い生物を主人公としたゲームソフトに、感動し打ち震える。


 最新のゲームというわけでもなく、何ならそのソフトを動かす本体より後発の次世代機が一世を風靡する時代だったが、少なくともクソガキにとって他のどのゲームよりも新鮮に映った。


 理由は、協力プレイ。


 クソガキの知る多くのゲーム作品は「一人用」であり複数人いれば交代で楽しむか、複数人の遊戯を想定した作品の場合は多くが殺し合いである。

 殺すまでいかずとも、基本的に他者を蹴落とす内容が多い。爆弾を駆使して協力しあうゲームでさえ、面白半分に友人同士で双方の爆死を狙い攻撃を始めることで紛争に発展しがちだった。


 そこにきて、ピンクまん丸のゲームは違う。


 仲間を殺さない、消去は可能でも痛めつけ惨たらしく殺すことはできない。手を取り合い敵を倒し、攻略を目指す。友人と二人で同時に遊ぶ。


 そして、この日の友人の立ち回りが〝今後〟のクソガキ人生を大きく左右することとなった。仲違いしたわけでもなく自然消滅のように疎遠となり顔もはっきりとは思い出せず、よって「トモフジテツ」という名の由来に組み込むことのなかった〝友人〟だが、クソガキは彼から間違いなく大切で重要なことを教わった。


「やったことある?」

「ないなー。でもいけると思う」


 型遅れの本体にゲームソフトを差し込み起動する友人。


「お前こっち使えよ、俺こっちな」

「おっけー」


 クソガキに手渡される操作機。


 最後の一日が、はじまった。


 

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