(3/8)価値観や常識の変化
「だって……〇〇君が、毒だって!」
余談となるが
これは友人が静かながら謎の圧を放ち続け言説に一定の説得力を持つからだったのかもしれないし、苗字や名前が三文字〜四文字イコール呼び捨てという雰囲気の中で〝友人〟の苗字は二文字だったので、苗字プラス君付けの方が響きや収まりが良いことが理由だったのかもしれない。
いずれにせよ
『人のせいにしないの!』
かの有名なロボットアニメを園児が履修していたなら、彼も頬を抑えながら「二度もぶった」と恨めしく名場面を再現した可能性がある。
母親も母親で、両の腕を良い角度で伸ばしながら「殴って何が悪い!」と艦長の真似をしたかもしれない。だが、残念ながらロボットアニメの初代が放送されたのは
「〇〇君も〝イトコのオニイチャン〟からカリフロワ危ないって話、聞いたって言ってた! 食べたら死ぬって!」
『まず名前カリフラワーね、ほら。カリフロワじゃないでしょ』
今の時代ならスマホを開いた母親がググってウィキってドン! だが当時は携帯電話すら存在しない。
黄色い背表紙『植物の図鑑』である。
「あっ……」
小〇館の学習百科図鑑、中でも『生き物の観察と飼育』『昆虫の図鑑』の二冊は振り仮名に助けられ何度も読破した
この日に『書籍から知見を広げる』という行為の有用性を再認識しながら、図鑑全般に含まれる謎の文字に苛立ちを覚える。
そこから更に月日が経ち「未知の言語」の正体は漢字という存在だったと知るが、それはまた別の話。
「本も、もっと見てみよう」
母親から懇々と諭されたこともあり
他者の発言を鵜呑みにしてはならない。
自身で、書籍などを用いて調べてみる。
(追記)
キモオジがどうして〝友人〟にスポットを当てた「助からない編」の執筆に取りかかったかと言うと、以前書いたキモオジ史や執筆速度が云々の章にて冒頭で登場した幼稚園児こそが、その〝友人〟だったからに他ならない。
連鎖的に、芋蔓式に、思い出が蘇り楽しい気持ちになってきたのである。
『この先、肉か魚のどっちかしか食べれないならどっち選ぶ?』
この質問を在りし日のキモオジ、つまり〝園児〟に投げかけたのが、友人。
二〇二四年、五月十六日。キモオジは記憶違いではないかと気になり母親に事実確認の連絡を行った。
友 人 は 、 実 在 し た 。
母の供述によると友人は「暴れん坊系」とのことで少し驚きつつ、流れ弾で身に覚えのない過去の悪事を擦られ改めてキモオジは謝罪。
その後も、母親によってキモオジの過去の失態を曝く文面が断続的に続く。
幼い日々を懐かしみ楽しくなりつつも人間の記憶は案外あてにならない、と思い知ったキモオジは恥ずかしさと申し訳なさに包まれながらスマホをそっ閉じした。
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