第四章 誰も助からない編

(1/8)飲食物には危険が潜む(潜まない)


 誰かにとって、何かの役に立ちたい。


 そんな目的で始まったはずのエッセイでついに誰も助からねえ地獄のような章が幕を開けます。


 経験者が見たら怪訝けげんな顔をする可能性があったとしても、これから書き始める人が「こういう生き方で楽しく過ごしてる奴おるねんな」「こんな単語あるんか」とほんの少しでも思って欲しいと願い執筆してきたエッセイですが、マジのガチで1ミリも役に立たん章が来ました。


 来た理由は思い出が連鎖的にあふれてきて、楽しかったから章が離れないうちに残したくなっただけの話です。

 本人(つまり僕)にとって実は大切な思い出や教訓だったのではなかろうか、という感じですが普通に何も役に立たんと思ってます。エンタメとしても微妙です多分、エッセイで話盛るのも違うからありのままに書きたいし。



 つらつらと長ったらしく言い訳を書き連ねたキモオジは、本文の執筆に取りかかる。気持キモちを叩きつけるオジ、略してキモオジ。


 テーマらしいテーマはあるものの、いつにも増して浅い内容であることからキモオジは深く溜息ためいきをついた。


『何事も鵜呑うのみにしてはいけない』

『既知の情報を信じきり更新アップデート放棄ほうきしてはならない』

『楽しませてもらうと嬉しいし、楽しんでくれると自分も暖かな気持ちになる』


 この三つを、キモオジは幼少期の体験を通して学んだのかもしれない。ゆえに強いてテーマを定めるなら、その辺りである。


 キモオジは幼い日々に思いを馳せた。


「うわ、カリフロワ入ってる!」


 お昼の時間、友人の声。


 キモオジの当時の立場は〝園児キッズ〟であり、最も親しい友人と一緒にお弁当を食べていた。

 友人は園児キッズの弁当箱に入ったカリフロワ、正式名称カリフラワーを見た途端に大声を上げる。


「うん、カリフロワ」

「死ぬぞ! 捨てないと!」


 園児キッズは一瞬だけ驚いたが、少し考えた後に納得した。カリフロワの危険性を示してくれた友人から以前、チョコレートや炭酸飲料の恐ろしさも教わっていたことを思い出したからである。


 友人の母いわく、チョコレートを大量摂取すると死ぬ。


 友人の母曰く、炭酸飲料を飲みすぎると歯と骨が溶けて死ぬ。


 友人は母から聞いた言葉をそのまま園児キッズに伝え、園児キッズもチョコレートの脅威にはいささかの心当たりがあった。調子に乗ってバクバクむしゃむしゃと食べていた日、鼻血が出たのである。

 ものすごく鼻血が出た、びっくりした、ならば……チョコレートを食べた先に死が待ち受けていても何らおかしなことはない。危険物の溢れる世界において、眼前のカリフロワが致死性のリスクを内包していても不思議ではない。


 それが、友人から得た知見と自身の経験という符号を合致させた園児キッズが導き出した結論である。


 カリフロワの真の名、チョコレートも炭酸飲料も人体に害はないという事実、それらを園児キッズと友人が知るのは少し先の話となる。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る