第52話 シャドウホール踏破!

 先程倒したシャドウの名はシャドウフォレストウォーカーだ。

 木に憑依したシャドウらしい。

 岩になっているシャドウゴーレムが居る以上不思議ではないが、思った以上に何にでも憑依するようだ。


「また扉じゃな」


 真っ直ぐに進むとまた大きな扉が現れた。

 俺達は武器を再び構え、アルネの合図とともに扉を開けた。


 すると、大きめのフロアがあり、中央には瘴気の塊……。


「早く入るんじゃ! 分断されてしまうぞい」


 急いで全員中へと入った後、間もなく来た入り口が濃い瘴気で包まれ退路を断たれてしまった。


「にゃあ! 退路がにゃい!」

「リッタ、ダンジョンは基本そうなる。後ろを見ている場合じゃないぞ!」


 焦るリッタに俺は大きめの声で言った。

 そして、中心部に瘴気が集まり始め、そのまま四散し5体のシャドウフォレストウォーカーが出現した。


 シャドウ達は出現と同時に3つに分かれ、後ろのリッタ達を狙っている。

 並のシャドウウォーカーより速度が倍以上速い……!


(アルネ)――ディフェンスオーラ!


 アルネは武器の柄で地面を叩いた。

 すると、俺達を包み込むように緑色のシールドのような膜が貼られた。


 シャドウ達の攻撃はその膜に吸収され攻撃を防ぐ事が出来た。


 守型上級剣術[ディフェンスオーラ]

 自身と自身の近くに居る仲間に対して、闘気の防御膜を貼る。


「中々重い攻撃じゃのう!」

「アルネさん、守型の上級剣術も使いこなせるのか……! すごいな」


 そして、俺はそのままよろめいていた一体を切り倒した。

 シャドウはそれを見て、他4体は後退した。


「フィアン、上から何か来ます!」


 ネビアにそう言われ俺は上を見た。

 そこには優しく発光する木片が、纏って舞っていた。

 ぱっと見、丸いカバシラのようだ。


 敵意などは一切感じなかった為、俺は不意に手を伸ばしてしまった。

 

「これは! フォレストウイスプじゃ! 下がれい!」


 アルネがそう言った時には既に遅かった。

 フォレストウイスプは急に俺の右腕に纏わりつき高速乱回転をし始めた。


――ザザザ!


「いってええ!」


 高速回転する木片が腕を襲う。

 振りほどこうとするも全く離れない。

 その間ずっと腕が切り刻まれている。


(アルネ)――ウインドウォール!


 アルネは急いで俺に向かって風を飛ばした。

 その結果まとわりついていたフォレストウイスプは吹き飛んでいったが、俺の腕は既にズタボロになっていた。

 [魔装魂]を使用しているにもかかわらずこの怪我……中々の威力だ。


「くそ、不注意だった、すまない……」


(オリア)――ヒーリングライト!

(触媒紙)――ヒーリングライト! 


 オリアは俺に駆け寄り、触媒紙と自前の治癒魔法で治療してくれた。


「オリア有難う! 完治したよ」


 そのやり取りの間、フォレストウイスプは3体に増えその場で舞い続けており、ウォーカー4体はリッタとアルネさんで抑えている。

 何度か攻撃を当てているようだが、致命的なダメージは与えられていない。俺は直ぐにアルネに加勢した。


「ネビア、ウィスプには魔法しかとおらん! 火の魔法でなんとか倒してくれんか!」

「了解です!」


 そう言われ、ネビアはフォレストウイスプと対峙した。


・・・


(アルネ)――インパクト! 

中級守型剣術[インパクト]

闘気を溜めた盾などでバッシュをした瞬間、闘気を開放し後方へ吹き飛ばす。


 アルネは1体のウォーカーを斧の腹で思いっきり後方へと吹き飛ばし、ウォーカーはそのまま地面に倒れた。


(フィアン)――ソード・エクスプロージョン


 吹き飛んだウォーカーに即座に剣技を放ち、消滅させた。

 複数名のチームで戦うと、チャンスは自分で作らなくとも転がってくる。それを上手く拾えば致命的なダメージを与えられる……。

 かなり楽だな……。


「ウイスプは片付けました!」


 ネビアは既にオリアと共にウイスプを全て倒しているようだ。

 仕事が早いな!


「よし、やっと一体倒したにゃ!」


 前方ではアルネが2体引き付けている内に、1体をリッタとオリアで倒したようだ。

 リッタが怪我をしているので、オリアがすぐに治癒をしている。


「アルネさん、[閃光脚]で思いっきり後退して!」

「あいよ!」


 そう言って俺とアルネは一瞬で場所をスイッチした。


(フィアン)――魔装・剣舞8連!


 俺は2体のウォーカーを巻き込み剣舞をした。

 2体は全方位から飛んでくる斬撃に対応できず、その場から動けないまま魂片となった。


「ふう。これで全部じゃな! ちゃんと魂片を回収するんじゃぞ! これで終わりなら外へ吐き出されてしまう!」


 アルネがそう言ったので、俺達は休む間もなくせっせと魂片を回収した。

 その途中で周囲が暗転し、俺達はシャドウホールから吐き出されてしまった。


「にゃあ! いくつか拾えなかった!」


 アルネが言う通り、すぐに吐き出されてしまったな……。

 余裕があれば魂片は回収しつつ、倒す方が良いのかもしれない。


「アルネ隊ですね。シャドウホール消失を確認致しました。お疲れ様です!」


 警備に当たっていた兵士がそう言って、書類をアルネに手渡した。


「報告時には必ずこの達成証明書をお持ちください。ではお気をつけて!」


 兵士たちはそう言って、早速撤退の準備を行っている。

 その表情はとても嬉しそうだ。


「皆お疲れ様じゃ! 早速かえって報告しよう!」

「はーい!」


 そうして皆で冒険者ギルドへと戻る事にした。

 言うまでも無く帰りもあの高速移動装置だ。

 リッタは疲れもたまっていたせいか、行きより更に思いっきり吐いていたがそれはまた別の話……。


・・・

・・


――冒険者ギルド 酒場


「いやー、お疲れ様じゃった! 無事にクリアする事ができて嬉しいぞ!」

「にゃ……こ、こんなに大金を……!」

「紫魂片とか久しぶりにもちましたにゃ……」


 今回の報酬は拾った魂片を含んで、一人頭[紫6,青4](64万円相当)これまた中々の大金を受け取る事が出来た。

 俺達の所持金は二人合わせて[赤5個・紫16個・青19個・濃い黄色8個](679万8千円相当)

 となり、当分困る事は無いだろう……。


「今日は私のおごりじゃ! 好きなだけ食うと良い!」

「いえーい!」


 そして早速飲み物を頼み、乾杯から始まった。

 もちろん未成年なのでジュースである。

 アルネ以外は……。


「アルネさん! それエールですにゃ? 未成年は飲んでは……!」


 オリアは心配そうに言っている。


「お、未成年に見えるか? 嬉しいのう! こう見えても80歳を超えておるわい!」


 アルネの発言にリッタとオリアは驚愕していた。


「天族ですからね、アルネさん」

「天族になると若返るのかにゃ……! 羨ましいにゃあ」


 リッタはそう言ってアルネさんをまじまじと見ていた。


 結局、試練に間に合うかの心配は完全に杞憂だった。

 まさか二日以内程で完了するとは思いもしなかった。

 超高速装置に乗った甲斐があるってものだな。


 そして、皆で食事を十分に楽しんだ後、その日は冒険者ギルドの宿屋で一夜を過ごす事にした。


・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界に転生したら俺が二人になってた。[新生版] @TOYA_notte

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ