第51話 シャドウホール探索
超高速移動装置を降りてから少し南下していくと、シャドウホールはすぐに発見できた。
と言うのも何かに隠れて発生する訳でも無く、普段なら人が行き来するであろう道のど真ん中に出現していたからである。
「結構大きいな……その分ダンジョンも大きいかもしれぬ」
シャドウホールは大小サイズがあり、大きい程内部のダンジョンが複雑で広い可能性があるそうだ。
「一度入った後すぐに出たりできるんですか?」
「大丈夫じゃよ。ご親切な事に、入ったところから普通に出られる」
そんな会話をしながら、シャドウホールの方へと向かう。
遠方から既に見えていたが、3名の兵士が安全確保の為、周囲を見張っている。
「警備ご苦労様です。私はアルネ隊のアルネじゃ」
「おお依頼を受けてくれたのか有難い。十分に気を付けてくれ!」
アルネが依頼書を見せながら話すと、兵士はすんなりと通してくれた。
「さて、近づいたらそのまま吸い込まれる。行くぞい」
そういってアルネが先頭を切ってシャドウホールの中へと吸い込まれた。
俺達もそれを追うように恐る恐る入場していった。
・・・
「ここがシャドウホールの中……」
飛んできた場所は、シャドウディメンションに吸い込まれた時と同じような場所だった。
真正面には大きな扉があり、壁や周囲は瘴気で覆われている。
違う点があるとすれば、後方には帰還用のシャドウホールがあり、全体的にフロアが深緑の色調になっている。
「どういう原理で飛んできているのでしょうか。ワープみたいなものですよね」
ネビアは周囲の壁に触れたりしながら色々考察している……。
「さて、気を引き締めるんじゃ。この扉を開けた瞬間シャドウが居る可能性もある」
アルネのその一言で俺達はしっかりと戦闘態勢を取った。
隊列はアルネを先頭に、2番目に俺、3番目にはネビアとオリアで最後尾にはリッタという縦隊型の構成だ。
――キィ……
目の前の扉はすんなりと開いた。
その先には瘴気と木の幹に覆われた広めの通路が、左右に二本続いている。
「何だか神秘的な雰囲気だにゃ」
「葉っぱが無くて木の幹しか見えてないのが異様ですにゃ。森の匂いが一切しない……」
リッタとオリアは周囲を見渡していた。
そして、アルネはまずは右から行こうと提案し、俺達は同意した。
・・・
木の幹が大小張り巡らされており、非常に歩きにくい通路である。
油断をすると足を引っかけて転んでしまいそうだ。
「通路が続くだけ……敵も出ないですね」
2時間程歩き続けているが、シャドウたちにも出会う事がない。
「よし、[浄化の光]設置完了」
俺は定期的に[浄化の光]を設置している。
瘴気が薄まるし、迷子になる可能性も低くなる。今の所分かれ道などは無いが……。
「にしてもどこまで歩けばいいにゃぁ……」
リッタがそう言うと、アルネは急に止まり、前方を指差した。
「どうやら無駄に歩かされたようじゃ」
何と俺達は元の入り口の場所へと戻ってきていた。
[浄化の光]が設置されている為、間違いないだろう。
「途中で分かれ道とか無かったよな?」
「ええ。なかったと思います……」
俺達は今、入り口付近の[浄化の光]内で話し合い中だ。
このダンジョンは円状になっており、約2時間程歩くと1週する程度の広さだ。
道中はそれらしい分かれ道などは無かった。
「とにかく、入念に壁などを調べてもう一度回るしかないのう」
そういって皆でもう一度回る事にした。
「次は左から回ってみるかね」
そうして俺達はまた進み始めた。
・・・
・・
・
「駄目だな……」
「何度も無駄に回る訳には行かぬ。どうしたものか……」
左回りで回り終えた結果、怪しい壁などは特に見当たらなかった。
張り巡らされた木の幹の裏に道があるのではという話になり、
木の幹を壊そうと魔法や攻撃をしたが……。
火を含め魔法が効かない。
剣技でぶった切ってもすぐに再生する。
という大きな問題を抱えており、破壊できない状況だ。
「何も思いつかないにゃ!」
リッタがうなされている横で、ネビアが
「マッピングはデバシーで済んでいます。これを書物に写して一度帰りますか?」
とアルネに言った。
アルネは少し迷ったようだったが、
「そうじゃな。仕方がない! 一度帰還しよう」
と俺達に言った。
非常に残念だが、なにも思いつかない以上仕方がない。
立て直すのも大事だろう。
そして俺達は来た扉を戻り、帰還用シャドウホールの前へと来た。
「この部屋の壁は木の幹が無いからぶっ壊れたりしてな!」
俺はネビアに冗談交じりでそう言ったが……
「フィアンそれじゃ! ぶっ壊してみるぞ!」
とアルネが大声を上げた。
そして早速、帰還用シャドウホールに触れないように四方の壁を調査し始めた。
「皆! ここだけ音が軽いにゃ!」
耳の良いリッタが違いにすぐに気が付いてくれた。
「よし、フィアンこの壁を叩いてくれ」
「わかった。下がってて!」
俺はアルネに言われた通り、壁の前に立ち、剣技を放った。
(フィアン)――グランドスマッシュ!
俺の剣技で目の前の壁はバラバラに砕け、もう一つの大きな扉が顔を出した。
オリッタが使っていた剣技……力の方向を変えると壁にも撃ち込む事が出来た。
思っていた通りになると気持ちが良い!
「にゃ!? 今の[グランドスマッシュ]!」
リッタとオリアは驚きながら言った。
「この前、見せてもらったおかげで覚える事が出来たよ。ありがとう! 強い剣技だな」
「[グランドスマッシュ]はオリッタにならないと使えない、とっておきの技ですにゃ。それを見ただけで……!」
「くやしいいにゃああ!」
リッタとオリアは悔しそうな表情だ。
「ふふ……ちなみに[ビートスタンプ]もできるぞ☆」
ドヤ顔でリッタにそう言うと
「にゃああああああ!」
と声を上げながら頭を抱えていた。
とは言え見てすぐに出来た訳ではない。
何度も練習した結果だ!
俺は天才ではない……がそれは努力と筋肉でカバーする。
俺は努力は裏切らない……この言葉は間違っていると思う。
ずっと努力をする事で、報われたと思う日がちょこちょこ来る! こっちの方が正しいだろう。
実際、昔から闘気を増やす練習をしていなければ、ここまで上手くはいかなかっただろうと思うしな。
「よし、開けるぞ!」
そう言ってアルネは扉を押し開けた。
その先は木の幹で覆われた通路があり、雰囲気は先ほど周回した場所と同じである。
「まて、前方にシャドウが居るぞい」
俺達もアルネの視線の先を確認した。
そこには全身木で出来たシャドウウォーカーが二体ふらふらしていた。
「まだこちらに気づいていないですね。魔法で先制攻撃しましょうか?」
「いやダメじゃ。纏っている木は多分魔法があまり効かない木の幹と同じ物じゃ。物理でぶった切るのが一番じゃな……」
ネビアとアルネの会話を聞き、俺は武器を構え立ち上がった。
「じゃぁ俺がやるよ。二匹なら一気にいける」
「にゃ……! 気付かれずにあそこまで行けるのかにゃ……!」
(フィアン)――シャドウウォーク
(フィアン)――ソード・カルテット
リッタにグッドサインをして見せ、そのままシャドウの方へと向かった。
「完璧な[シャドウウォーク]……最上位の獣人並にゃ……!」
――ザシュ!
俺はそのままシャドウウォーカーに近づき、
[魔装・一閃]にて二体同時にコアを破壊した。
「よし! 倒せたぞ。先に進もう!」
そうして俺達はさらに先へと進み始めた。
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