第42話 達成と別れ
「お待たせいたしました。依頼達成の報酬です。こちらで3等分しておりますのでご確認下さい」
そう言って鑑定士が俺達に布袋を手渡した。
「え! 三等分した後でこんなに?!」
何と中には赤3 紫3 青5 濃い黄色9 の計335万9千円相当が入っていた。
あまりの額に驚きを隠せない。
所持金の数倍以上の金額だしな……。
「僕にも同じ量ちゃんと入ってますね……すごいです」
「それだけの依頼を達成したって事じゃよ! さ、今日はもう遅いから酒場で飯を食って宿屋で休もう」
アルネの言葉に俺達は頷いた。
・・・
「何でも食いたい物を注文するが良い。私のおごりじゃ! 斧を貰ったしのう!」
「アルネさん、ルーネ達も一緒に良い?」
「もちろんじゃ!」
そう言ってルーネとテーネも呼び5人で食事をする事にした。
「頂きまーす!」
テーブルには肉や野菜が並べられた。ルーネとテーネはそれを美味しそうに食べている。
「これはなんほにくっですか!」
「ルーネ、飲み込んでから話さないと何言ってるか分からないぞ!」
「ネビア、この丸い野菜をもう一度頼んで……」
「これが美味しかったんですか? とりあえず頼みましょうか」
そんな他愛もない会話をしながら楽しい食事をしていた。
そして、ひと段落付いた後……
「フィアンにネビア。学園と試験についてなんじゃが……」
アルネはそう話始めた。
俺達はここまで来るのに、約8ヵ月掛かったようだ。
体感半年ちょい位だったが、実際には8カ月……思っていたより経っていたな。
「試験は約2ヵ月後じゃが、それまでにやらねばならない事がある。何か分かるか?」
アルネがそう質問すると、ネビアが
「試験を受ける為の登録ですかね……?」
と言った。
「正解じゃ! だがそれよりも先にしなければならない事が……」
「あ、住む場所を探すとか?」
俺がアルネを遮ってそう言うと、その通り! と指をさしてきた。
「一般的には、学生寮に暮らすか、自分で探すかじゃな」
学生寮も宿屋もそれぞれメリットとデメリットがある。
まず、学生寮は家賃が無料で飯も安くて美味いそうだ。
また学園の中にある為、移動時間は無いに等しい。
但し、学生寮は剣と魔法の学園でそれぞれきっちりと別れており、俺達二人で一緒に住むことは出来ない。
そして、寮から出入りをするのに毎回申請をしなければならなくて、夜の22時までしか外出出来ないそうだ。
一方宿屋の場合……
長期滞在用の宿であれば、家賃が比較的安く済み、一緒に暮らす事が出来る。
学園から近い宿も沢山ある為、しっかり探せば自分にあった宿が見つかるだろうとの事だ。
但し、当たり前であるが費用はそれなりに掛かってしまう。
その話を聞いて俺達は少し迷ったが、長期滞在用の宿屋を探す事に決めた。
家賃が無料で飯が安いってのは非常に魅力的だが、二人が完全に分断してしまうのが少し面倒くさい。
まだまだ二人で合体の魔法も解明できてないし、お互いの情報交換は常にしておきたい。
後、消灯時間で動きが制限されるのも厄介だ。
幸いな事に依頼の報酬でお金は結構ある。
「まぁその方が良いじゃろう! お金に困ったら依頼を受けると良い。二人なら何でも達成出来るじゃろうて!」
「なら明日から宿探しだな……。アルネさんはこれからどうするの?」
「折角またこっちまで来たしな。しばらくは依頼を受けながら、お金稼ぎをするつもりじゃよ。私はここの宿で滞在するつもりじゃ。何かあればいつでも連絡してくれ!」
と俺達に宿泊する場所の情報をくれた。
「じゃぁ、一旦お別れなんですね……」
ネビアは少し寂しそうに言った。
俺も正直寂しい。
「学園まで二人を連れて行くっていう任務は達成できたからの。二人……いや4人でしっかりとやるべきことを頑張るんじゃ」
そう言うアルネにルーネとテーネは抱きついている。
「アルネさん、ここまで本当に有難う。貴方が居なければ俺達はここまで来れなかったと思う」
俺もネビアも長い期間の旅の仕方など一切知らなかった。
だが、アルネとの冒険を経て本当に色々知る事が出来た。
今後、俺達だけで長旅をする時には絶対に役に立つ知識ばかりだ。
こんなに親身に色々してくれた人は本当に初めて出会う。感謝してもしきれない……。
「何を言ってるんじゃ! 何度も言うが、私は本来あの洞窟で一生を過ごし、死んでいたんじゃ。まだまだこの恩は返せてないぞ? ここまで色々あったが良くぞここまでついて来たのう。本当にお疲れ様じゃ」
「アルネさん、依頼で大変なのがあったら手伝うから言ってくださいね」
ネビアがそう言うと、アルネは大きく頷いた。
「おばあちゃん! また一緒に冒険してくださいねっ」
「寂しい……けど泣かない」
ルーネとテーネはアルネと一緒に居た期間が長い。
俺達よりも別れが恋しいだろう……。
「まぁまた会えるじゃろうて。フィアン、ネビア……この二人をどうかよろしくな」
アルネはルーネとテーネの頭を撫でながら俺達を真剣な眼差しで見た。
「もちらんだ。二人は俺達にとって大事な存在だ」
「アルネさん、二人の事は僕たちに任せてください」
そう言うとアルネは安心した表情を見せた。
ルーネとテーネは少し照れくさそうにしていた。
「本日最終の高速馬車が間もなく来ます。乗る方は遅れないように!」
受付嬢が酒場に向かって大声で言った。
それを聞いてアルネは荷物をまとめ始めた。
「じゃぁそろそろ私は自分の宿に戻る。達者でな皆!」
「アルネさんもな!」
そして俺達は、馬車に乗るアルネさんを見送った。
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