第30話 帰還後
「ここは……!」
目を開けると、瘴気の森へと戻ってきていた。
「は……はは……! 助かった……!」
「フィアンさん!」
すると、目の前にはルーネがいて、すぐに俺を抱きしめた。
「よかったです……本当に……!」
俺はそれに答えるように、ルーネを抱きしめながら撫でた。
「フィアン! よかった、無事だったんですね」
前方からネビアは駆け付けた。
俺はそれを見て更に安心していた。
すると、ネビアの表情が一気に青ざめ、俺の脚を指差した。
「フィアン! 足が!!」
「え……? い、いってえええ!!」
足を見ると、右足の膝から下が完全に両断されなくなっていた。
見た瞬間、とんでもない激痛に見舞われた。
意識しなかったらこのまま痛みは無かったのだろうか……。
「し、死ぬ……!」
「フィアンさん!!」
ルーネはそう言って祈るポーズをとった。
すると俺の全身は光始め、足が綺麗さっぱり元に戻っていた。
「これが……[光精霊魔法:光のささやき]か……!」
光精霊魔法:光のささやき
契約者にのみ有効、絶大な回復効果がある。大半の怪我は治療される。(1度使うと1週間程使えない)
「大半の怪我なら治るって言ってたけど、失った足も完治するなんて……!」
「すごいでしょ! ただ、前にも言ってますが一度使うと1週間は使用できませんからね!」
「まぁその間、足が吹き飛んでも耐えれば……」
そう言うとルーネは怒りながら、
「腕とか足の欠損修復は、傷が新鮮な時じゃないと出来ませんから!」
と言った。
「そうか、気を付けるよ……! しかし、いつ斬られたんだろうか。見当もつかない……」
そして改めてルーネを撫でながら、
「ありがとうルーネ! 本当に助かったよ」
と言うと、ふふん! とドヤ顔をしていた。
「とりあえず、いつもの場所に戻って飯でも食べましょう」
そういうネビアに同意し、俺達はいつもの修行場へと戻った。
・・・
・・
・
「なぁネビア……」
「どうしました?」
「シャドウディメンションの最深部に、ヴィスターンという堕天使が居たんだ」
俺はそう言って、何があったかを説明した。
「シャドウナイトとは比べ物にならない強さですか……」
「試練で討伐対象のレッドも堕天使だろ? 多分このままじゃ勝てない」
俺がそう言うとネビアは神妙な表情となった。
「んで、俺には魔力が足りないと痛感した。片方が無限でも、こっちがなくなってバテテしまう!」
「たしかにそれは有りますね。僕も闘気が無くなって疲れてしまいます」
「だから、それぞれ不得意な方の上限を上げないとって思ったぞ!」
俺はネビアに力説した。
「そうですね! なんだかんだで僕は魔法ばかりになってました。闘気も上げないとですね」
「俺も魔力を上げる! 効率の良い修行を考えないとな」
「とりあえず、暗くなってきましたし今日は帰りましょう」
ネビアはそう言って荷物を片付け始めた。
俺もそれを手伝いながら、
「ネビア、今日の事は内緒で頼むな……」
とお願いした。
ネビアはそれに対して微笑みながらもちろんですよと言ってくれた。
・・・
・・
・
「ただいま!」
「こら遅すぎるわよ! こんな夜中まで何してたの? 危ない事はしてないでしょうね」
「ごめんよ母さん。ちょっと探索してただけ! あと右足が吹き飛んだだけだよ。お風呂入ってくるね!」
そう言いながらそそくさと服を脱ぎお風呂場へと向かった。
「そう……右足がね……ってちょっとどういう事!?」
・・・
その夜……
「フィアン、それぞれ魔力と闘気を上げる話をさっきしましたよね」
「ああそうだな! どうするのが良いだろうなあ」
「そこで思ったんですが、学園に入学する時逆にするのはどうでしょう?」
そういってネビアは一つ提案をしてきた。
それは学園で俺が魔法を習って、ネビアが剣術を習うと言うものだ。
たしかに学園では本当に初歩的な部分から教えてくれるだろうし、実技などで上限アップに期待できるかもしれない。
普通に学園で学ぶ場合なら、それでもよかったかもしれない。
しかし、今回は抜きんでた才能を発揮し、レッドの目に留まらなければならない。
目立つ為にはそれぞれ得意分野でさらに学ぶ方が良い気がする。
それをネビアに伝えると、
「確かにそうですね……! レッドの事をちょっと忘れてました」
と笑いながら言った。
そして、少しだけ考える素振りを見せた後、
「わざわざ不得意な方をそれぞれ受けなくとも、後で共有すればいいですね!」
と言ったので、俺もそれに同意した。
「とにかく、今日はもう寝ようか」
そう言って俺達は眠りについた……。
・・・
朝食の時に俺は魔法、ネビアは剣術の練習も本格的にやってみようと決めた俺達は早速修行場に来ていた。
そしてなんと、ネビアがスチームエクスプロージョンを会得しており、それを見せたいとの事だ。
「いきます……」
ネビアは両手を前に出し、ライトペイントを操作した。
魔法陣は大きい3つが繋がり、向かい合うように配置され、
小さい魔方陣3つがそれぞれそれらを繋ぐ形で描かれている。
1分ちょい掛けて描き終わると、魔法陣の中央部に溶岩の球体が現れ熱気を放っている。
そして、熱々の鉄板に水をかけた時のようなジュワっという音の後に、
とてつもなく大きな高音の音が鳴り響き大爆発した。
かなり離れていたが、熱々の水蒸気がこちらまで飛び散ってきていた。
「[スチームエクスプロージョン]……いや、やばすぎるだろ……」
爆心地には直径5m程のクレーターが出来ており、
蒸発するような音と木の軋む音が鳴っている。
周囲の木は黒く焦げている。
俺はしばらく呆気に取られていたが、
「実はこれ、魔力を10パーセント程に抑えています」
というネビアの発言に驚きを隠せなかった。
「うそだろ……? おま、これ100パーセントで放ったらどうなるんだよ……」
「絶対に自分も巻き込まれて死にますね!」
ネビアは笑いながら言った。
「いや、笑い事じゃねーよ……」
「フィアン、魔法陣について気づいたことがあります」
そう言うとネビアはその気づいた事を共有してくれた。
それは、魔法陣ごとに込められる魔力の限界があると言う事だ。
魔法陣が複雑なほど発動に必要な最低魔力と込められる最大魔力の上限が増える。
例えばバーンファイヤでは10の魔力で発動して、最大30まで込められる。
ファイヤエクスプロージョンの場合、50の魔力で発動出来て、最大100の魔力まで込められるというイメージだ。
「最大値を理解しないと、魔力が無駄になります。限界を超えると垂れ流し状態になるんです」
ネビアは魔法陣をコップ、魔力を水にしてたとえ話をしてくれた。
コップギリギリまで水を入れると最大威力で魔法を放てるがそれ以上込めても溢れ出すだけで意味がないとのことらしい。
分かりやすい例えだなと俺は感心していた。
「[スチームエクスプロージョン]は魔法陣が多い分込められる魔力も多い……つまり威力もそれだけ跳ね上がります」
「なるほどな……」
「フィアンは最大値を理解すると魔法でばてにくいかもしれませんね。込める魔力量は僕が見れますから一緒に練習しましょう」
「助かるぜネビア! じゃぁ俺も剣術の事を少し説明しようか」
教えるって程でもないが……俺はコツを伝える事にした。
「剣術は何度も同じ技を繰り返し使用して、身体にしみこませるのが一番大事だ」
そう話始め、
込められる闘気量は武器によって大きく変わる。
剣術は色々やるよりまずは2~3つの技を極める方が良い。
と言う事をネビアに伝えた。
「[閃光脚]、[魔装・一閃]、[ブレードブラスト]……まずはこの辺りだな。使い勝手がいい」
「なるほど……! 分かりました!」
「じゃぁ早速練習だ!」
そう言って俺達はそれぞれ魔法と剣術を練習する事になった。
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