第21話 試験の結果

「よし、結界を貼りなおすよ。二人は剣術がメインだから剣術での試合にしよう」


 ゼブは触媒紙を設置しながらそう説明した。


「武器に差があると不公平な為、同じ鉄の剣を使うように」


 ゼブがそう言うと、ティタはこの剣ね。と言いながら二本の鉄の剣を持ってきた。


「さぁフィアン! 全力で来るのよ!」


 ティタはそう言いながら俺に剣を手渡した。

 そして、その問いに俺は大きく頷いた。


「いくわよ。[天衣・兵翼]」


 結界コートに入り待機をした後、ティタは天衣を纏った。

 ゼブの堕天衣とは異なり、しっかりと両翼があった。


「よし……いくぞ!」


(フィアン)――ブレードブラスト


 俺は先行して[ブレードブラスト]を放ち、そのまま閃光脚で前にダッシュし続けて[ブレードスラッシュ]を放った。

 全力の魔装・一閃を放ちたい所だが、武器が耐えれず壊れるかもしれない。


 攻型見習い級剣術[ブレードスラッシュ]

 手に闘気を溜め、高速で相手を斬り付ける。


「よし!」


 俺の攻撃はティタに命中した……ように見えたが……。


「残像……!?」


 目の前のティタはそのまま霧の如く消え、後方から地面を大きく蹴る音が聞こえた。


(ティタ)――魔装・剣舞八連!!


 俺の目には8人のティタが周囲に映っていた。

 早すぎてそう見えているだけなのだろうが……!


「く……ッ!」


 咄嗟に閃光脚を溜め、一気に上空へ飛んだ。

 魔装・剣舞は地上でのステップが重要な剣術だ。

 空中では出来ないはずだ。


「フィアン……天族の剣術を見せてあげるわ……!」


 ティタは翼を大きく動かし上空へと飛んだ。


「無頼・空剣舞10連――!」


 空中で身動きが取れない俺の周囲でティタはステップを始めた。

 避けることはできないと悟った俺は、全開で魔装魂を全身に巡らせた。

 360度隙が無く10連斬撃をもろに食らい、そのまま地面に叩きつけられた。


「くそ……!」


 一瞬頭がクラっとしたが、何とか態勢を整えた。


「正直驚いたわ……その程度のダメージで済むなんて……! でもまだまだこれからよ!」


 その後もティタの猛攻は続く。

 剣は辛うじて防御が出来ているが、一向に攻撃に転じる事が出来ない。


 正直、閃光脚で地面を強く弾いているのは見えるがその後の動作が早すぎてほとんど見えていない。

 運と勘で防いでいるような物だ。


 だが、攻撃を防いでいる内に疑問が生じてきた。

 この感覚は運や勘だけでは説明がつかない。


 攻撃が自分に来る瞬間に感じるあの感覚……闘気なのだろうか。

 俺は未知の感覚に身をゆだねる事にした。


 そして……


――キンッ!


「フィアン、しっかりと防げるようになったわね」

「全然見えないけど……何となく捉える事が出来るようになってきた。ここからだよ母さん!」


 俺がそう言い放つと、


「なら母さんももう一段階上に行きましょうか」


 と言いながら剣身を地面と平行にして手を当て闘気を込めた。


「剣の四重奏(ソードカルテット)!」


 柔型上級剣術[ソード・カルテット「剣の四重奏」]

 使用している剣に闘気を溜め込み、同じ形の刀身「闘気剣」を三本作る。元の刀身から少し浮いた状態でそれは維持される。


 剣術の名の通り、鉄の刀身とは別に、光る刀身のようなものが3本鉄の剣に少し浮きながら重なり、その場で留まっている。

 闘気そのものを剣にするのか……! 今までみたどの剣術よりも難易度が高そうだ。


「それも天族の剣術?!」

「いえ、これは上級剣術……母さんは天力を混ぜないと使えない大技よ!」


 魔装・剣舞と同じ上級剣術なのか……!


 とても同じ難易度には思えないが……上級剣術と言う事は闘気だけでも使用できる剣術のはずだ。

 ティタの場合は天力を混ぜて強化した闘気を使用しなければ出来ないらしいが……。


 俺はどうだ……?


「いくわよ!」


 1本だった剣身が一気に4倍の数となった。

 だが、俺も感覚がだいぶ研ぎ澄まされてきているのか、攻撃のイメージが見えてくるようになっていた。


 四本の剣身を一気に防ぐ。

 そう考え実行したが……。


 キン! という金属音が鳴った後、すぐに悪寒が走った。


「ぐ!」


 なんと闘気剣3本が俺の剣を軸にして回転し顔めがけて飛んできたのだ。

 咄嗟にティタの剣を弾き、後退したが頬に切り傷を受けてしまった。

 そして、闘気剣はその後再び元の場所へと戻っていった。


「良い判断ね……!」

「剣身が独立して別の動きをするのか……厄介な剣だ。なら……」


 目に目を……だ!

 見よう見まねで同じように剣を地面と平行にし、闘気を溜めて剣身をイメージした。

 すると同じように3本の光の刀身が現れ、浮きながら留まった。


「よし、出来たぞ!」

「天力も無しに……! 見ただけで出来ちゃうなんてすごいわ!」


 闘気剣……どうやら魔力を使って浮遊させているようだ。

 ほんのわずかだが、俺の魔力が消費されている。


 俺は闘気剣の一つに触れた。

 思っている事は……できそうだな。


 直ちに剣を構え、剣先に集中した。

 ネビアと合体した時に放った爆発する剣術……名前は分からないが、闘気剣でも出来そうだ。


「ブレードブラスト!」


 俺はそう言って二本の闘気剣と共に剣気を飛ばした。

 だが、それらはティタの足元に突き刺さった。


「どこを狙っているの?」


 ティタがそう言った瞬間、闘気剣が大きな音で爆発し、砂煙が舞った。

 その煙に乗じて、俺はそのまま閃光脚で詰め寄った。


「目が見えなくても、フィアンの大きな闘気で場所は手に取るようにわかる……剣士に目つぶしは効かないわ!」


 だが俺はそのまま、[ブレードスラッシュ]でティタに切りかかった。


――キンッ!


 大きな金属音が鳴り響く。

 予想通りこの攻撃は簡単に防がれた。


「そんな単調な攻撃じゃ私に――ッ!?」


 ティタの言葉が詰まった。


「俺の闘気に気を取られ過ぎたね」

「そのようね……」


 ティタの背中には1本の闘気剣が深々と突き刺さっており、そのまま膝を崩し倒れ込んだ。

 その瞬間、結界コート内が光に包み込まれ、

 俺とティタは最初に立っていた位置へと戻ってきていた。


「合格よ。文句なしの強さね」

「有難う母さん」


 俺とティタは握手をして結界コートを出た。


「お疲れ様フィアン! やりましたね!」

「ああ! 何とかなったよ!」

「フィアン、凄かったよ。というかブレードブラストが何故爆発したんだい?」

「そうよフィアン! あの爆発は柔型上級剣術[ソード・エクスプロージョン]並みの威力だわ。でもそれは飛ばす攻撃じゃない……」


 ゼブとティタは興味津々に質問してきた。


「爆発する剣術……[ソード・エクスプロージョン]って言うんだな」


 俺はそのまま質問に回答した。


 わざとらしく[ブレードブラスト]と声に出して放ったが、実は[ソード・エクスプロージョン]の準備をしていた。

 回避されるのは分かっていたから最初から足元を狙い爆発による視界を奪う事に専念した。

 その状態で俺は真っ直ぐに突っ込んだがその時、ライトペイントをくっ付けた闘気剣をティタの背面へ移動させた。

 

 そして最後の一突き……という訳である。


「今思えば闘気剣自体が飛んできていたわね……その時点で[ブレードブラスト]じゃない事に気がつくべきだったわ……」

 

 ティタはその時気がつかなかったが、[ブレードブラスト]は闘気剣だったとしても、その闘気剣から剣気が射出されるため、それ自体は飛んでこないらしい。

 だが俺の場合、闘気剣自体が射出されていた。

 その違和感に気がつかれていたら結果は違ったかもしれない。


「ライトペイントをくっつけて闘気剣を自在に動かすなんてすごいですねフィアン!」

「やってみたら出来てよかったよ」


 俺は闘気剣に[ライトペイント]をくっつけて自在に動かしてみせた。


「父さん達にとって[ライトペイント]は飛ぶ魔法じゃない……その発想はとても出てこないな」

「ほんとよ……まさか負けるなんて思ってなかったわ」


 ティタは少し悔しそうにしていた。


「フィアン、煙を利用するなんて僕と同じような作戦ですね」


 ネビアは笑いながら言った。


「そりゃそうだろ! 俺達は同じヒト……双子なんだからな!」


 考える事は同じ。

 元が同じだから普通の双子以上にそうだろうな。


「さて、二人とも見事に父さん達に勝った! 本当に強くなったね。約束通り、もう止める理由は無いよ!」

「二人とも本当に強くなったわ。だからといって油断はしては駄目よ。しっかりと勉強と技を磨き続けなさい!」

「有難う御座います!」


 俺達は声を合わせて感謝を述べた。


「さて、もういい時間ね! お腹もすいたし帰るわよ!」


 こうして、卒業試験は無事合格に終わり、俺達は帰路についた。


・・・

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