第14話 精霊と契約
(フィアン)――魔装・一閃
――ズドン……
「よし、開通したぞ!」
俺は[魔装・一閃]を計4回放ち、岩壁の外殻部分を切断した。
かなり闘気を込めての攻撃を放ったわけだが、疲れは全くない。
闘気が無限に近い……どうしてそうなったのかはよく分からない。
幼少の頃から頑張ったおかげだろうか。
「これでアルネさんが十分に通れますね!」
「ああ、10人くらい同時に通っても大丈夫だ!」
ネビアは砂煙を風魔法で払いながら喜んでいた。
ルーネとテーネも喜んだ表情を浮かべて、一目散にアルネの元へと走った。
俺はその姿を微笑ましく思いながら、二人の後を追った。
・・・
「おばあちゃん! 外へ出られるようになったよ!」
ルーネは扉を勢いよく開け、大きな声で椅子に座るアルネに言った。
「あんた達、無事だったのかい! 本当に良かった……!」
アルネはルーネとテーネを抱きしめながらそう言った。
「アルネさん、試練に合格して、小さな穴の場所に風穴を開けたぞ! 出入り自由だ!」
俺はアルネにそう言うと、アルネは少し微笑みながら、
「まさか。50年程たった今、ここから出られる日が来るとはのう」
と言った。しかし、その声には少し寂しげな雰囲気もあった。
「おばあちゃんいつ出る? 準備はすぐできる」
テーネがそう言うと、アルネは頭を撫で立ち上がり、窓の外を見た。
「しかし、わしはもう歳を取り過ぎた……今更契約者を探す旅など出来ぬ」
「アルネさん……」
そういうアルネを見て、ネビアは少し悲しそうにしていた。
アルネは俺達の元に来て、頭を撫でた。
そして、二人が出入り口を作ってくれたことは本当に嬉しい。
だが、ここでのんびりと暮らす事にするよと静かに言った。
「おばあちゃん、一緒に冒険するって言ったでしょ! 外に行こうよ!」
「ルーネや、すまないな。もう身体が思うように動かなくてのう」
アルネさんは再び椅子に腰を掛けた。
「そうじゃ。フィアンにネビアよ。試練について知っている事を教えてあげよう」
アルネがそう言ったので、一旦俺達はアルネの話に集中した。
ルーネとテーネも聞く態勢となった。
アルネはゆっくりと説明をしてくれた。
・・・
我々全ての生物は、必ず試練を与えられる。
試練を達成する毎に自身の能力が上昇し、全ての試練を達成した者は天族へと覚醒する事が出来る。
人の寿命は精々70~80歳程だが、天族に覚醒すると寿命と強さが遥かに伸びる。
「天族になると、身体の構造が大きく変わる為、女性は子供が産めなくなるし、男性は……達観した感じになるのじゃ」
アルネは少し言い方を迷っていたようだ。
多分、性欲がなくなるとかそんな感じだろう……。
なんだが凄いデメリットな気もするぞ……?
「わしもあと一歩じゃったが……お主たちに会えて思い残すことはない。たまには遊びに来ておくれ」
アルネはそう言って、次にルーネとテーネを見て、
「ルーネ、テーネ。冒険はフィアンとネビアと共にするのはどうじゃ?」
と提案した。
しかし、ルーネは
「それは……ルーネ達は外に出られて嬉しいけど、おばあちゃんが出れないのは嫌!」
「おばあちゃんが出ないならテーネ達もここで住む」
と断固拒否していた。
長年一緒に暮らしてきた3人だ。
もはや家族みたいなものだろう。
「おばあちゃん! あと一歩って何をすれば試練合格だったの?」
ルーネはアルネに質問を投げかけた。
「いずれ伝えねばと思っていた事じゃ。この機会に話そう」
そう言ってアルネは二人が精霊だと言う事、契約者を見つけて覚醒すれば一気に魔法等を使えるようになる事……
そして、二人を覚醒させることが試練だった事などを詳しく伝えた。
ルーネとテーネはその話を真剣に聞いていた。
「契約者……」
テーネはそう呟き、ネビアの元へと言った。
「どうしたんですか……?」
テーネはネビアをじっと見ながら、
「ネビアと契約する」
と静かに言った。
「ルーネも! フィアンさんと契約します!」
ルーネは俺の方へと駆け寄ってきた。
「いや、すげえ嬉しい提案だけど、出来るのかな……?」
俺とネビアは少し困惑していたが、
「実は、初めて見た時から何か、びびっと来ていたのです……」
「……テーネも」
二人はそう言ってそれぞれの腕に絡んできた。
正直、凄く可愛い……!
「皆がいいなら試してみる価値はあるのう。びびっと来たと言うのは、偶然じゃないかもしれん……」
「俺達の試練は精霊と契約だから、これの事なのかもしれない。ルーネと出来るのなら本当にありがたいよ」
そして、俺とネビアは契約させて欲しいと頷いた。
「わかった……」
アルネはそう言って、目を軽く瞑った後、大きく見開き、
「よし、じゃぁまずは強く抱き合うのじゃ!」
と声を上げた。
俺とネビアは戸惑っていたが、ルーネは元気よく返事をして柔らかい腕でぎゅっと抱きしめてきた。
ルーネの顔が俺の肩に来た時、花のように甘い香りとお日様の匂いが広がり、ポカポカした気持ちにさせた。
一生懸命に抱きしめるルーネに応えるように、俺もルーネをぎゅっと抱きしめた。
ルーネの髪はふわふわでさらさらな髪だ。ずっと触っていたい。
いや、そんな事を思うなんて変態だ! 契約に集中しないと……。
「次にその状態で、魔装魂をするんじゃ! 相手を包み込むようにな!」
そう言われ、俺は魔装魂に闘気をいつも以上に込めて範囲を広げた。
しかし、思いの外難しく、中々ルーネ全体を包み込む事が出来ない。
「ああ……フィアンさんす、すごいです……」
ルーネは俺の魔装魂にあてられ、身体をぴくぴくさせ、足を崩しそうになっていた、俺はルーネが崩れ落ちないように必死に支えていた。
「ごめん、ルーネ……もう少し密着する」
ルーネを何とか自分の広げた魔装魂に入れるべく身体全体をぴたっとくっつけた。
「よし! 何とか入った! 次は!?」
そう言うと、アルネは更に目を見開き、
「その状態でキスをするんじゃ!」
と叫んだ。
この完全に密着した状態で!?
というよりキスって……流石に……!
そう思い恐る恐るルーネを見た。
すると、「早くー」と言わんばかりのうっとりとした表情で待っていた。
完全密着のままのキス……首を何とか曲げそのままルーネの唇に触れた。
前世でもキスなんて殆どした事無いに等しい……。
ルーネの柔らかい唇が自分の唇に触れた瞬間、心地の良い幸福感で全身が震えた。
キスって素晴らしいな……!
そう思った瞬間、俺達は大きな光に包み込まれた。
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