第15話 二度目の達成
周囲は淡い黄色で光った雲で覆われた場所……どうやらまた女神様と会う場所に来たようだ。
という事は、さっきのルーネとの契約が試練達成の条件だったんだ。
だが、今回は目の前に女神はいない。
「女神様、居ないですね……」
横に居たネビアがそう言った。
「ここは! わしは試練を達成できたと言う事か!」
反対側にはアルネさんも居た。
「俺達もどうやらさっきの契約が試練達成条件だったみたいだ」
「おお、フィアンとネビア! おぬし等には感謝してもしきれぬ……!」
アルネは少し涙を流しながら喜んでいた。
そうしているうちに、遠くから
「ええ!? もう達成したの? 流石に早すぎよ!」
とバタバタと走る音とともに聞こえてきた。
その声は聞き覚えのある女神様の声だ。
そして、目の前が大きく光りいつもの神々しい表情で女神様が出現した。
女神は少し息が上がっており、髪が乾いておらず少し濡れているように見える。
そして、女神からはほのかに石鹸のようないい匂いがしていた。
それはまるで、風呂上がりの匂いのようだった。
「え、えーと、あっこほん……。フィアンとネビアよ二つ目の試練達成おめでとう御座います」
そう言った後、女神はチラッとアルネさんの方見て、一瞬驚いたような表情になっていたが……。
「また、アルネよ、最終試練よくぞ達成致しました!」
と大きめの声で言った。
「3人いる……」
女神は小さな声でそう呟き、ちょっと待ってもらえますか! と慌てた様子でもう一度光に包み込まれて一時退散した。
「ど、どうしたんでしょうか……」
「わからん……」
俺とネビアは困惑しながら顔を見合わせた。
「3人同時ってどうすればいいのよ! マニュアルにも載ってなかったわよ!」
また遠くで女神様の声が聞こえる……。
「あと一人最終試練達成者よ。私一人じゃ無理じゃない! 大天使様呼んできて頂戴!」
一体どこで話しているかは分からないが、丸聞こえだ……。
女神様というよりは人事担当みたいな感じだな。
てかマニュアルってなんだろう。気になるな……。
そうしてしばらくした後、
もう一度目の前が光始めた。
裏の声が聞こえてしまったせいか、もはやこれは演出の一つかな?
とか思い始めてしまっている。
「お待たせ致しました。まずはフィアンとネビアに報酬を与えます。アルネよ、大天使様が来られるまで少し待ってください」
遠くで聞こえていた声と今の姿にギャップがありすぎて噴出しそうになったが、何とか堪える事が出来た。笑ったりして怒らせて報酬無しとかになったら大変だからな。
「報酬ですが、まずは魔法の属性一つを選んでください。その属性の知識、私達の知る範囲での全てをお伝えいたします。一つだけですので、慎重に選択してください」
女神がそう言うと、早速俺とネビアは顔を見合わせ二人で悩んだ。
「アルネさんは何を貰ったんだ?」
「わしの時は、攻型の上級までの知識全て一択じゃった。選べるとかは無かったのう」
アルネがそう言うと、
「報酬は試練の難易度によって大きく変化いたします。私は大天使様より受けた試練と報酬の内容を伝えるだけの役目です……」
と女神は微笑みながら言った。
さすがプロだ。今の状況だけ見れば、高貴な女神様にしか見えない。
「どうする? ネビア」
「そうですね……先程契約した精霊の子達の属性知識を貰うのが良い気がしますね」
「お、それいいね! でもなんだったっけ……?」
俺がそう首をかしげると、目の前がぱっと輝き、ルーネとテーネが現れた。
「おお、ルーネ! ここにも来れるのか……!?」
「フィアンさんと契約をしたので、ルーネは精霊として覚醒出来ました。フィアンさんを媒体にいつでもこうやって来る事が出来ます!」
ルーネはそうやって簡単に説明してくれた。
どうやら俺と契約した事で精霊界と呼ばれる場所に行けるようになり、そこを経由していつでも俺の場所に現れる事が出来るようになったらしい。
精霊は契約者の魔力と闘気の属性変化、魔法と剣術のサポートをしてくれるようだ。
ルーネは光でテーネは闇属性の精霊……
精霊と契約できただけでも嬉しいのに更に特別感のある属性の子!
少年のように胸が躍ってしまう。
横に居るネビアの目の輝きを見ると、同じような事を思っているのだろう。
その様子を見ている女神が咳ばらいをした。
少し待たし過ぎてしまったようだ。
「俺は光の知識を貰う!」
「僕は闇の知識を下さい!」
そう言うと、女神は微笑みながら、
「知識があっても、適性が無ければ全く使い物になりません……が貴方達なら大丈夫そうですね」
と言って、そのまま俺達に手を掲げた。
すると、そのまま俺とネビアは光に包み込まれた。
・・・
・・
・
情報が頭の中に直接入れられているような感覚……。
高速でそれを理解し、自分の経験と合わさりものになっていくのが分かる。
すでに新たな閃きがあり、それを試したくて仕方がない。
そう思っている内に光が収まり事が済んでいた。
すると、目の前には先ほどまではいなかった、司祭の帽子をかぶったクリーム色の綺麗な顎鬚を生やしたおじいさんが居た。
「どうじゃ? 知識を吸収した気分は」
「はい。凄い経験でした。試したいことがいっぱいあります!」
ネビアはおじいさんのと問いに元気よく答えた。
「君達は凄いんじゃよ! 試練の達成速度、最速記録を大幅に塗り替えたんじゃ!」
おじいさんは少し興奮気味に話した。
どうやら俺達は最速で試練を立て続けに達成したらしい。
過去に一番早かったのが、試練を受けてから二年半後に達成。
だが、俺達は結果的にたった数時間程度で達成している。
もうこれを越える事はよほどの運と実力が無いと無理じゃ。もう現れないじゃろう! と言う事だった。
「大天使様……そろそろアルネの覚醒の儀を」
「おや、すまないのう。でアルネ、わしについてくるんじゃ」
アルネは頷き大天使の方へとよろめきながら向かった。
「あの、俺達はどうすれば?」
俺がそう質問すると、大天使はここで少し待つようにと言った。
どうやら3人一緒に帰還させるようだ。
「女神様、僕たちはここに飛んできていると言う認識で良いのでしょうか?」
「ええその通りです。ここは時間の流れが異なる空間です。1時間居ても戻れば数秒も経っておりません」
「てことは! ここで修行をすれば、凄い事になるんじゃ!」
俺がそう言うと女神は、
「残念ながらそれは出来ません。この場所は魔力や闘気を使おうとすると、すべてかき消されるようになっています」
と言った。実際に魔法を使おうとすると、まったく反応しないし、魔装魂もろくに纏えない。
本当に特殊な空間の様だ。
それでも何か使い道はありそうだが……自由に来れないから考えても無駄か。
「おや、フィアンにネビア! まだおったのかい」
その声の方へ向くと、そこには褐色肌で髪は茶色でおさげヘアー、中学生程の見た目の少女が笑顔で立っていた。
「え! もしかしてアルネさん!?」
俺がそう言うと、その少女はピースはしながらそうじゃ! と答えた。
……ギャップが凄すぎて唖然とするしかなかった。
「凄いじゃろ? 身体も若い時……いや、それ以上に良く動く。最高の気分じゃ!」
アルネは凄く健康的な体つきで、少し褐色がかった肌が夏のような雰囲気を醸し出している。
さっきまでお婆さんだった事がとても信じられない。
「アルネや、お主も天族の仲間入りじゃ。先ほど伝えた事、考えておくのじゃよ」
「分かりました。大天使様」
アルネは礼儀正しく返事をした。
「さぁ皆さま、そろそろ帰還の時間ですよ」
女神がそういった時、ネビアはすかざす
「僕たちの次の試練は何でしょうか?」
と質問した。
俺もそれは気になっている。試練の事も聞かないまま帰るわけにはいかない。
「えっと、それなのですが……」
そう言って女神は少し困った様子を見せた。
「わしから説明してあげよう」
そう言って大天使が一歩前に出てきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます