第12話 ねこじゃないもん?
「犬飼柴太郎さまのご依頼でみなさまをお迎えに上がりました」
「「「「犬飼柴太郎って誰?」」」」
「誰なのかな?」
「犬飼柴太郎さまはイナバウアー食品社長の御親戚で大株主でいらっしゃいます。まさかみなさまは犬飼柴太郎さまをご存知ないのでしょうか?」
「うーん。心当たりがありませんね」
「ぼくも知らないんだな。知らない人について行っちゃダメなんだな」
「ええっ! いやいやいや、そんなことを言われたら、仕事でお出迎えに来た私が困るんですけれど! ホントに誰も心当たりがないんですか?」
「うーん。あああっ!」
「思い出しましたかっ!」
「このタイミングでそんなサポートをしてくれる人って、ごろにゃんこゴーゴー組長だけだよな」
「「「「「ええええええ!」」」」」
「ごろにゃんこのおじさんって、本名は犬飼柴太郎なのかな?」
「いくらなんでも、そんなはずあるかい!」
「犬飼柴太郎って名前だったら絶対ワンコスキーよねえ」
「きっとネコ派だから、名前を変えたくなったのではないでしょうか?」
「それでごろにゃんこゴーゴー組長になった!」
「「「「「「うん、ありえる!」」」」」」
「よし、把握した。で、あなたはタイのイナバウアー・フードの方ですか!」
サブロウがサラリーマン風の男に尋ねる。
「いやあ、思い出していただいてホントによかった。私、タイ・イナバウアー・フードの
そういうと食べかけのカップラーメンを床に置くと、懐から名刺を取り出し、両手をそろえてサブロウに差し出してきた。
「タイ・イナバウアー・フード第一営業部、猫池一夫さんですか。では改めて、私が一色サブロウで、こっちがユーリ・タチネンコ。あとは私たちの仲間のモブです」
「「「「扱いが雑ぅ!」」」」
「モブのことはお気になさらないでください。本日はよろしくおねがいいたします」
「よろしくなんだな」
「「「「よろしくお願いいたします!」」」」
「あ、はい。よろしくお願いします」
サブロウたちがやたらと元気に挨拶をしたので、猫池氏は気圧されながらもきっちり45度でお辞儀をした。
空港の駐車場にはごく普通の白いマイクロバスが待っていた。
「コニチワー、サワッディクラップ」
運転手はサングラスをかけた浅黒い地元の人らしかった。
「「「「「こんにちは」」」」」
「こんにちはなんだな」
猫池氏の案内で一同、冷房がガンガン効いているマイクロバスに乗りこみ出発する。
「皆さまお疲れさまでした。ではこれから、皆さまをタイ・イナバウアー・フード社までご案内させていただきます」
「猫池さん、本当に急で大変だったんじゃないんですか」
「いやあ、実はみなさまの到着3時間前になって本社からのメールで今すぐ迎えに行けと言われたんですよ。ところがちょうど社用車が故障して、代わりのレンタカーの手配とかでてんやわんやでした」
「それで食事をする時間もなかったから空港でカップラーメンを……」
「いやあ、お恥ずかしい」
「でも、ちゃんとご飯を食べないと元気が出ないんだな」
「まったくその通りです。でも、お食事だけでなく、タイは暑いですから水分もしっかりとってください。よく冷えたお飲み物をご用意いたしました。よろしかったらどうぞ」
猫池氏がテキパキと説明する。
「ところで、猫池さん」
猫池氏の隣に座ったサブロウが再び声をかける。
「なんでしょう?」
「出発したばかりで申し訳ないんだが、トイレに行きたいんだけど」
「ええっ! しばらくガマンできませんか?」
猫池氏がびっくりした顔でサブロウを見ている。
「無理。今朝から腹の調子が悪いんだよ。どこかのガソリンスタンドによってもらえないかな。でないと漏れちゃう」
「ちょっと、レンタカーなんですからそれだけはやめてください! わかりましたから、ガソリンスタンドにつくまでガマンしてください!」
「サブロウさん、がんばるんだな」
「努力する」
ガソリンスタンドに着くなりサブロウは妙に慎重な足取りでトイレに向かう。
「もうひとふんばりやで。でもまだふんばらんといてな。ははは」
カズマが冷やかしながら後をついていく。
「センセ念のためコンビニでパンツ
「頼む」
ガソリンスタンドの敷地に丁度コンビニも入っていた。
「コンビニがあるんだな。ぼくもおりるんだな」
「ユーリさま、いかがなさいましたか」
キョン子が聞く。
「ぼくはおにぎりが食べたいんだな」
「では、わたくしもご同行させていただきます」
「あたしも行きたい。こっちにしかないアイスがあるのよね」
「わたしも行きます。果物ないかな。ドリアンとか」
「いやいや、これレンタカーなんでドリアンの匂いが残ると下手したら損害賠償になるんです。ドリアンだけは勘弁してください!」
「そうなんですか。残念」
結局全員が降りてコンビニであれやこれやと買いまくった。
「これからタイ・イナバウアー訪問するのに、どうしてアイスまで買い
「どないすんねん! とけてまうで!」
「「「ごめんなさい!」」」
「ごめんなんだな」
「しょうがない。猫池さん、やっぱり先にホテルに寄ってもらえませんか?」
「はあ、仕方ありませんねえ」
マイクロバスは先にサブロウたちが宿泊する予定の高級ホテル、パンダリン・オリエンタルに向かい、とりあえず荷物一式をホテルの部屋に運び入れることにした。
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「猫池さん、色々と手伝わせちゃってごめんね」
「いいえ、どうってことないです」
「のど乾いたでしょう、コーラ飲みます?」
「あっ、ありがとうございます」
「なあんちゃって」
プシュウウウウ
サブロウがコーラのペットボトルのキャップを回すと猛烈な勢いでコーラが噴出して猫池の顔に直撃した!
「うわっ、一色さま、こ、これは、い、いったい、な、なんのマネです!」
「よく振っておいたからね。もう1本メ▷トスコーラも追加だ。 うりゃあ!」
シュオオオオオオ
「ちょっと! やめてください!」
「カズマ、チカ、猫池さんを確保! 拘束だ!」
「「了解!」」」
カズマとチカが手際よく、ずぶ濡れの猫池氏の両腕をねじり上げ後ろ手にして結束バンドで固定する。さらに膝裏を踏みつけて膝まづかせ、そこからうつ伏せにして両足首もまとめて結束して床に転がした。
「「完了です!」」
「いったいなんでこんなことするんですか? どういうつもりですか! 」
猫池が抗議するがサブロウは意地の悪い顔で見下ろして言う。
「ということで、みんなで、はい、せーの!」
「「「「ドッキリ大成功!」」」」
「なんだな」
「はあああああ?」
つづく
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