その十七:お墓参り
「それじゃぁ、行こうか?」
「うん……」
服を着込んで私とイオタは出かける準備をする。
目的は彼のお墓に行く事だ。
「おっと」
「ほらしっかりしなさいよ。もう、あんなに激しく頑張るからよ? 初めての癖に」
「い、言うなよ/////// だって、サーナがあまりにお可愛くてさ////////」
「なっ///////!」
さっきまでイオタと愛し合っていた。
いや、一晩中と言うか。
そして事が終わり、やっと落ちつた頃に当初の目的である彼の墓参りに行く事にした。
私もイオタも準備が出来て下の階に降りて来ると、カウンターの店主がニヤニヤしていた。
もうバレバレである。
この宿には数日泊まる事は決めてあるので、今後店主に顔を合わせるのが恥ずかしい。
それでも一階の食堂で軽く朝食を取り、私たちは目的である彼のお墓に向かう。
「それで、そのお墓ってのは何処にあるんだい?」
「うん、国の共同墓地にあるんだ。お城のすぐ近くなんだけどね。ただ、その前にちょっと買い物がしたいんだ」
イオタの腕に手をかけて私はそう言う。
何となく嬉しいのと、まだちょっと緊張するのとが入り混じっているけど私がイオタの腕に抱き着くことにイオタは嫌がる様子はない。
「買い物って何?」
「うん、お墓にお供えするお花」
私の答えにイオタは「ああぁ~」とか言っている。
まさか花も持たずにお墓参りに行くつもりだったのだろうか?
「そうだよな、お花は必要だよな」
「私が言うまで気が付かなかったでしょう?」
「いや、そのそれは……」
少し慌てるイオタにおかしくなってくる。
しかしイオタはパチンと指を鳴らし、私に言う。
「とにかく、花屋を探してお墓参りに行こう。そして俺たちの事も伝えよう」
「……うん、そうだね」
彼のお墓に新しい彼氏を連れて行くってのもなんだけど、過去に対してキリをつけたい。
それに、今はイオタがいるのだから彼だって判ってくれると思う。
大通りを歩いて花屋さんを探す。
昔の記憶とやはり若干街並みも変わっている。
だから記憶にあるお花屋さんも今は無い。
「うーん、昔はここにお花屋さんがあったのに」
「ははは、仕方ないよ。探しに行こう」
イオタはそう言って私に手を差し伸べる。
私は嬉しくなって、彼の手を取り二人してまたお花屋さんを探し始めるのだった。
* * *
「花も良し、タルタルから預かったお酒も良しっと」
なんだかんだ言いながら二人していろいろなお店を寄り道ばかりしながらやっと花屋さんを見つけた。
お昼も回ってしまって、軽く食事をしながらなのでまるでデートでもしているかのようだった。
しかし大通りの裏にあった小さなお花屋さんを見つけ、やっとお花を買ったのでいよいよ彼のお墓に向かう。
「そう言えば、さっきの花屋が言ってたけど、今って墓参りの次期なんだって?」
「うん、このジマの国には夏頃と冬が明けた頃にお墓参りをする風習があるのよ。なんでも先祖を敬う習慣の一つらしいけどね。そう言えば、その頃にはあの世から先祖の魂が一定期間帰って来て子孫と共に数日間過ごすと言われているらしいわね」
「なんだよそれ? まさかゴーストでも出るんじゃないだろうな??」
確かに妙な習慣だった。
この世界には実際に死者の魂が何らかの理由でゴーストとなる場合がある。
肉体が残っていればアンデッドになる事も。
それなのに死者の魂をこの世へ迎え入れ、子孫と数日共に過ごす風習とかもの凄く変だと思う。
でもまぁ、私が訪れたこの時期がたまたまそれだったのは、何かのめぐりあわせだろうか?
そんな事を思いながら二人してお城へ向かう。
険しい山に寄りかかるように建てられたそのお城の横に目的の共同墓地がある。
そこは国に対して忠義を全うした者たちが眠る場所。
そして彼が眠る場所でもあった。
「もう少しで着くわ」
「結構登るな、こんな高台に墓地があるんだ」
そこはこのジマの国が見渡せるほどの高台にあった。
まるでこの国を見守るかのように。
そして私は記憶の中にある、彼の墓へと向かう。
あの頃毎日毎日通った彼のお墓。
ここはあの当時と変わっていなかった。
この通路を曲がって、そして行き当たりの場所が彼のお墓だ。
私は昔の事を思いだしながら、切なさをかみしめながら確認するかのようにその道をたどって行く。
そしてとうとう彼の墓標へとたどり着く。
が、そこには真っ黒な髪の毛で、真っ黒な服を着た女性がいたのだった。
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