第11話 一行怪談11
血塗れのトゥシューズを履いた足が、夜な夜な十字路でオデットを演じているという噂。
父の枕から香る土の匂いは日に日に強くなり、十年前に父が庭に埋めた秘密が明かされる日が近いことを悟った。
親戚から喪中の葉書が今年も送られてきたが、亡くなった親戚の名前は相変わらず毎年同じだ。
箪笥の肥やしになっている、母の形をした人の皮。
午前五時三十四分に炊飯器から聞こえる断末魔は、今では目覚まし代わりだ。
読む漫画に出てくる悪役の名前が、どれも私が苛めていたクラスメイトの名前。
先祖の墓の前で涙を流しながら何度も土下座をする半透明の男に、「あなたが謝るべき人の墓はもう別の場所に移されましたよ」と伝えそびれて早六年。
先ほどから祖母がクチャクチャと音を立てながら咀嚼しているものが口の端から見えたが、どう見ても爪が剥がれた人の指にしか見えない。
クッションから聞こえる呪詛を子守唄代わりにして寝る人間なんて初めて見たわ、と隈がひどい姉がため息をついて私にそう言った。
坂田さんの生け垣から生えている足について、あれについては見えないフリを続けることが決定しましたので、今後は議題にあげないようにお願いいたします。
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