第7話 一行怪談7
核戦争が始まるまでの世界を何度もタイムリープしたせいで疲弊した人類は、遂に鏡文字を共通言語として認識するようになった。
記憶の中の母も写真に映る母も目の前にいる母も、全て別人の顔をしている。
そのアイドルが自殺したその日から、後にアイドルと同じ名前を授かる小惑星が地球に向かってきた。
白百合の花弁に赤い滲みが浮かぶようになってから、親類縁者の訃報をよく聞くようになったと思う。
夜空からこぼれた星たちを空に帰すことを諦めた日から、この星では植物が血を流すようになった。
花壇から生えた無数の細い腕の中に、若かりし頃の祖母の腕が交ざっているはずだ。
閉めきった部屋でぶうらぶうらと揺れている姉の姿を見た時、私は初めて姉が美しいと思えたのです。
死んだ兄の番号からかかってくる電話に出るのはいつも知らない女の声で、こうして兄の声を忘れていって終いには兄の存在も薄れてしまうのかと、声しか知らない女のことが恨めしくて仕方ない。
燃えている雛人形たちの写真を私に見せて、うちの家族は寒がりだからと言う同僚の笑顔といったら。
この指には確かに絞め上げたあの肌の感触が残っているというのに、今日も弟は眠そうに瞼を擦って腐りかけの皮膚をボリボリと爪で掻く。
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