第8話 一行怪談8
二〇〇二年の八月三十一日を繰り返し続けて、もう六百二十七回目。
己の体が朽ち果てる時に死を望むほどの激痛に苛まれながら美しいものに再生するという呪いを課せられたかつての傾国の美姫だった白猫は、断末魔をあげながら体を小さく折り畳んでいき小さな肉塊に変わった後、その肉塊から美しい赤い薔薇が咲いた。
私の弟だと名乗る見知らぬ女がベランダから飛び降りるのも、これで四度目。
古本の最後のページの隅に書かれた「キタモトさんをご存知ですか」という文言が、それ以降に読んだ様々な本のページに浮かぶようになった。
最近買ったクッションから聞こえる読経の声は、祖父の葬式で唱えていた坊主のものに似ている。
近所に住むおばあさんの家で飼われていた文鳥の死因は卵を詰まらせたことになっているが、本当は卵ではなく腐った人間の目玉だったことを私は知っている。
靴下を脱いでも中身があった。
「何があっても目線を逸らさないでください」というテロップが突然ニュースに差し込まれたかと思うと、私の耳元で苦しそうな喘ぎ声が生臭い息と共に襲ってきた。
人懐こい甥だが、私に対してだけ「まさか覚えていないわけないですよね」と私が辞職まで追い詰めたかつての部下の声で笑うため、家族に隠れて甥をどうにか消せないか画策中だ。
娘が連れてきた婚約者は、私が今の夫と結ばれるために自殺に追いやったかつての恋人と同じ顔をした蝋人形。
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