第6話 一行怪談6

「自分を見てくれなかったから」という理由でいじめを先導した私の前にとうとう彼女の亡霊が現れなかったのはきっとそれが私への罰なのだろうと、残りの一人だったあの時のクラスメイトが血塗れの自室であり得ない角度で関節が折れ曲がった状態で事切れている姿を見てまざまざと思い知る。


 ここから先の道を歩くには皆様の体の一部を切り落としていただかないと命の保証ができかねますので、ご了承ください。


 私を裏切った元婚約者の生首が玄関前に供えられていたので、私にまとわりついているストーカーとの交際を本気で考え始めている。


 よく見ている配信番組をラジオ代わりに流していると、「次はあなたの番です」と名指しされた気がするので画面を見てみたら、錆びた刃物が並べられた机の前で出演者たちがニコニコしながら全員こちらを見ていた。


 彼女に始めて作ってもらった鶏の唐揚げを食べた時、私が初めて食べたあの血生臭い味の正体に気づいた。


 再婚した妻が生んだ子どもが「久しぶり」と殺した前妻の顔で笑ったのを見てその頭をかち割ること、これで四回目。


 私の尻を撫でる男の手が半透明なことに気付き、今ではそいつが誰にも助けてもらえないことをいいことに、その腕の持ち主の体を見つけてサンドバッグ代わりにしてからというもの、毎日ストレス発散ができて快適です。


 写真に映る弟の指は、いつも一本少ないか多いかの二択だ。


 私を生んでからというもの、母の腹から毎月生まれてくるのは、ハートのクイーンのトランプが貼られたフランス人形が一体。


 クラスメイトにシャーペンを盗まれたのだが、もう夜中にあのシャーペンが部屋で般若心経を勝手に書き続ける音に悩まされずに済むと、心の底からほっとした。

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