第68話、苦労人、春ちゃん

信じられないけど実際にあるから信じるしかなかったから認めたけどそれでも美女しか見えない。まあ、自分もよく女に間違われる事があるから他人のことを言える立場ではないけど・・・それでもやばいよと内心ではそう考えていた。






神様、絶対に色々と間違っていると伝えたい、この人を美女として生まれさせるべきだったでしょう。それはそれでしたら春ちゃんを巡って争いが必ず起きてしまうけど。






そう考えると神様の判断は間違いではなかったと言うべきかもしれないけど美女として会いたかったと落ち込んでいると春ちゃんが自分に対して話しかけてきた。






「その反応を見ると僕が女だったら良かったのにと顔に書いていますよ。なんですか、僕だって立派な武士ですよ。女、扱いをしたら文句を言いますからね。女みたいだから政事など参加させないと言わないで下さいよ」






いや、他所の勢力は分からないけど真里谷家は実力があれば女性でも参加して良いからと話すとそんな事があるのですかと驚いた顔で話していた。






自分は本当だよと伝えてから春ちゃんに関して話など始めた。甲斐武田家にどのような理由で仕えて、どのような事が起きたのかと聞いてみると話してくれた。






春日虎綱は元々は農民であり、親の遺産、争いに負けてしまって生きるために甲斐武田家に仕えたと言うのだ。意外に幼い頃から苦労しているなと感じながら聞いていた。






その後、仕えてからも農民出身だから他の武士に馬鹿にされてこの見た目で男から馬鹿にされている上に気持ち悪い目で見てくるというのだ。






うん・・・いつかは希望があるからと励ましているけど明らかに暗い表情していた。更にここから暗い話があるというのだ、これ以上に暗い話と待ち構えているとその内容を話した。






それはある日に武田晴信に一緒に温泉に入ろうと誘われて一緒に入った時に起きたと言うのだ。それは武田晴信が春ちゃんに対してこう言ってきたというのだ。






「虎綱、わしの朱槍(意味深)を見てくれ」




「凄く・・・大きいです」






待て待て!そのやり取り何処かで聞いたことがあるぞと慌てながら聞いていると続きを語ってくれた。






「虎綱、お前に頼みたい。わしの朱槍を手直ししてくれぬか」






春ちゃんはどうすることも出来ずに内心は泣きながら嫌々とやったと言うのだ。ごめん、聞いているだけでも辛くなってきた。






その噂が広がり、色んな男たちから同じことをやれと無理やりさせられたと言うのだ。もう、逃げれば良かったじゃんと言うとまだ幼い妹がいたので逃げたくても逃げれなかったと言うのだ。






大好きだった両親が最後に遺してくれたものを絶対に守っていくと心に決めていたからどんな事でもやってこれたと言うのだ。






すみません!ここに理想の姉・・・ではなくて兄がいます。妹の為に頑張るとはまさに天晴と言うべきだろう。






そんな時に武田晴信が甲斐の国にいない時に小山田氏が急に裏切って応戦したが寡兵のみでは守りきれずに捕虜になり春ちゃんと妹は捕まりどうなるかと思っている時に小山田の大将が二人を降伏の証として献上しようと言って連れて来られたというのだ。






そして男だとバレないように女物の服を着せられてからここ来て今に至ると言うのだ。まあ、大変だったなとしか言えないな。






それにしても妹さんは何処にいるのかなと尋ねると一瞬だけ表情が暗くなったと思うと妹は別の部屋で休んでいますと話した。






そうか、先程のことも考えると余程に疲れたのであろうから無理に会いに行かない方が良いな。それにまだ事後処理が残っているしと考えていたら密偵が情報が届いたので何事かと尋ねてからこっそりと聞いたけどその内容が信じられなくて言葉に出してしまった。






「嘘ーーー!信濃の豪族たちが一斉に自分に帰順して村上氏を滅亡させて、信濃における甲斐武田家の勢力を追い出した上に隣国の飛騨国の豪族たちも帰順を願い出ているだと」






あまりにも信じられない事に大声を出して返すとそれを聞いていた春ちゃんがそれはそうですよねと返答していたのでなんで分かるのかと尋ねてみた。






「それは小山田と同じ手紙が信濃に飛騨にも届いていたのであろうし、上総武田家の当主は約束以上の褒美を出してくれる事で甲斐、信濃で有名だったから信用されたのでしょう」






確かに実際に先ほども小山田氏に約束していた甲斐の国、半国だったのに一国を全て任せてしまったことを聞けば信用性は更に増して余計に信濃の豪族たちが嫌でも士気が上がりますよと説明してくれた。






それはそうかも知れないけどそこまでして信濃の豪族たちは自分の元に降りたいのかと言うと春ちゃんが溜息を付きながらこの事に関しても説明をしてくれた。






「あんまり信濃の情勢を知らなさそうなので説明をいたしますと信濃の豪族、民は甲斐武田家を恨んでいるのです。元々は甲斐の国があまりにも貧しい国でこのままだと生活も危ないから信濃に侵攻して物資や領土を奪い、信濃で取れた物資など甲斐の国に運んでいたから」






なるほどそうなると自然と信濃の豪族、民が苦しんで甲斐武田家を恨んでも仕方が無いなと感じた。でも自分も上総武田家で甲斐武田家の分家に当たるですけど。






そこは良かったのかなと思って言うと春ちゃんは農民や地方豪族は血筋よりも誰が一番治めてくれるか、誰が一番利益を出してくれるか。






出してくれるなら分家でも別に構わないのが農民などの本音ですと春ちゃんが教えてくれた。流石、元農民だけに詳しいなと感じた。






本当に自分に仕えようとして頑張っているなと見ているだけでも分かるぐらいだ。そうなるとここまで可愛い春ちゃんの妹は何処まで可愛いのか気になったので別の機会に会わせてくれとお願いをしてみると春ちゃんは妹は別に特に可愛いことはないのでと必死に話していた。






・・・何かな気になる、そこまでして妹さんに会わせたくないのは・・・妹が可愛いだけでは無さそうだな。何か隠している、妹さんの事で調べて見る必要があるなと考えを出さない様にして話を続けていた。






ともかく今は更に増えた領土の管理など体制を整える必要があるなと感じるのだった。

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