第62話、甲斐武田家の評定ともう一つの密書
しばらくして甲斐武田家は評定を行われていた。内容はついこの前に分家にあたる上総武田家からの密書が届いたのである。
そして内容がないようだったので重臣など集めて評定を開いて今後のことを話し合っていた。
「だから某はこの好機を見逃さずにこの密書通りに今川家を攻めて海を手に入れたら武田家は更に大きくなりましょうぞ」
そう発言しているのは馬場信房、先代から甲斐武田家に仕える武田家の中でも名将と呼ばれておりその信房はこれ以上もない好機だと発言して密書の作戦に乗ろうとしていた。
「お待ちください、馬場殿。確かに魅力的な条件でございますが今川相手にそう簡単に上手く行くものではないでございます、この勘助は反対致します」
そう反対したのは山本勘助、武田家の軍師であり武田家、当主の晴信から深い信頼をされている。主にこの二人が対立しており話し合いが続いていた。
山本勘助は今川家の実力をその肌で感じていたので難しいと判断していた。一方、信房は先代から今川家と戦っており長年の宿敵を倒せる好機とも捉えていた。
「しかし、これで上総武田家がこの密書通りになれば関東の支配者となり次の標的は我々になるかも知れないのに呑気なことを言っている場合でございますか。これは生き残るためにも戦うべきです」
晴信は確かにここ近年の上総武田家の勢力は急激に拡大しており留まることを知らずに伸ばしている。ここで地盤が完全に固まれば対抗できるのは機内の三好家のみとなる。
北条家が倒れたら天下を目指すのであれば甲斐武田家は邪魔者になる。なので先に先手を打っておく必要があるのもまた事実、その上にかなりの良い渡船が舞い込んできた。
ここで山本勘助が反対していなければすぐに決まったが反対をしているので評定を開いて会議をしていた。話し合いは平行線をなっており晴信はそろそろ打開策を打つかと密書の内容を振り返っていた。
密書には成功しなさそうなら参加をしなくても構わないと書かれてあった。これ即ち、有利な方に動けるということ、先制攻撃は難しいが確実に利益がある方に付けるという内容である。
それはこちらを信用させる為に示している行動であり、上総武田家の狙いは今川家に無駄な邪魔をしてほしくないと言うことだろう。それさえ無ければ北条家を完全に滅ぼすことも可能かも知れない。
しかし、今川家と言う存在で出来なくなっている。その今川家の力を出来る限りに無くすために我々と手を組んだ方が良いと判断したのであろう。
そして成功した暁には今回の一連では遠江を支配しても何も言わないと書かれてある。誰が書いたかはわからないが確かに確実に海を手に入れるのであれば今川家の本拠地、駿河よりも比較的に簡単とも言えた。
その上で勢力も分断することが出来て一気に今川家を弱体化させられる。そして気になるのが今回はと言う言葉、今はともかくもしこちらが油断すれば奪いに来ると言う事もあり得るということだ。
ならば馬場信房の言う通りに行動の準備をしていたほうが良いのかもしれない。無論、決めるのは今後の情報が入ってきてからだが。
そうして甲斐武田家はいつでも軍事行動を移せるように密かに支度を始めるのだった。信濃の村上氏はすぐに行動に移すほどの度胸に力も無きと晴信はそう考えていた。
領土の守りでの戦いは確かにうまいかもしれないがこちらの動きまで把握することは不可能だと考えて戦の支度をしていた。すぐに決着をすれば村上氏は軍事行動はできないと甲斐武田家はそう結論を出したのだった。
場所は変わってその頃、鎌倉で手土産を探しながら自分は早川ちゃんに聞いていた。そう、この前に密書を甲斐武田家に送ったばかりなのにすぐに違う密書を書いてほしいと言われたのである。
その送る先は信濃の村上氏で甲斐武田家が大規模な軍事行動を移すから手薄になったら南信濃の侵攻が簡単にできると密書に書いてほしいと。
そうすれば仮に甲斐武田家が遠江を支配出来ても信濃の領土が失地して思うように国力は上がらない上に前よりも守りづらくなり国力が回復しにくいので今後の事でもこちらが有利に進められるというのだ。
すみません、早川ちゃんはマジで天才ですか。手紙一つで・・・まあ、正確だと二つだけどそれでここまで出来るの?自分が阿呆なだけかもしれないけど、それにしても早川ちゃんは頭が良いでしょう。
その上で性格も良い、そして美少女でもある。あれ?欠点は何処にあるのですか、全然見つからないですけど自分の欠点は嫌なほどに見つかるのに。
それと無理はわかっているけどこれから早川ちゃんの父親である北条氏康と敵対すると考えると心の底から楽しめないなと思っていたら早川ちゃんから今は素直に楽しみましょうと言われた。
本当に早川ちゃんには助けられることばかりで自分が余計に情けなく見えてくる。でもその様な姿を見せればまた早川ちゃんに怒られるので今はゆっくりと楽しむことにしよう。
舞台も整えて自分と早川ちゃんは運命の分かれ道となる小田原城に向かって再び歩き出した。
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