第60話、罠だけど行かないといけないのは辛い
自分は新野の登用を一応採用した、かなりの確率で間者の可能性が高いけどこれを上手く利用すれば。かつて三国志で赤壁の戦いで呉の大都督が敵の間者を上手く利用して勝利に導いたこともある。
自分も同じように利用して勝利をしたいけど上手く行くかなと考えながらもその年も平和に終わりそうだと思っていると北条家から使者がきた。
それは新年を小田原城で祝いながら関東の新たな秩序に関して話し合いをしないかと言われたのである。確かにそれはそうかと言いたいがなんせ真田家と密会をしているのだ。
罠だという可能性が高いと思っているが行かなければ両家に亀裂を入れたのはこちらだと世間からそう思われてしまう。
非常に厄介なことになってきたと頭を抱えて考えていた。なんとかして向こうのせいにできれば問題は無いのだけどそんな事は出来ないのは分かっている。
そして言葉で説得は無理だろう、そうなると残された道は北条と真田を同時に戦うしかない。そうなると両面作戦はもちろんの事、兵糧などが心配になってくる。
しかし、こちらとして有利なことは自分を罠に誘導する為に相手のごく一部の者しか知らないということだ。すなわち上手く行けば相手が抵抗する前にある程度城を落とせるかもしれない。
成功したら武蔵の殆どを奪えるかもしれない、流石に多摩川を超えては無理だけど多摩川を国境にさせることが可能だ。
そうなれば北条家が反撃して来ようとしても応戦が楽になる。まあ、逆にこちらからも攻めにくくなるけど別に攻め滅ぼすつもりはないから良いのだけど。
それに真面目に攻め滅ぼそうとしたらあの難攻不落、小田原城を落とさないといけないから普通に無理です。
余程の物量で攻めないと落ちません、ですから多摩川で守りやすい位置まで奪えたら問題なし。
もちろんの事、小田原城で罠が待ち受けているとしたら密会で話し合っている真田家も関連している事だろう。だから既に上野国と下野国の国人たちや滅ぼされた大名家の残党など連絡しており機を見て行動してくれと言ってある。
やはり真田家は急に勢力を広げからだいぶ恨みを買っている、国内が完全に掌握していない。本来であればそれをする筈だ。
真田幸隆や前田家元は馬鹿ではない、けれど自分という存在、真里谷家の存在がそれを許さないだろう。自分が行っている政策、国力差が二人に安定させるという選択肢を消しているだと思う。
それでも何かを仕掛けてくるには早過ぎたと思うけどね、それで倒せたら苦労はしないよ。それは良いが一つ心配なことがある。
早川ちゃんの事だ、もし実家と戦うとなったらとても苦労をさせる事になるだろう。出来ればそれを回避はしたいがそんな方法は無いのが現実、恐らく早川ちゃんは戦いになればこちらに残ってくれると思うけど残っても待ち受けているは辛い現実だ。
敵国の姫になってしまう早川ちゃんに味方をしてくれる人はいないだろう。そうなるぐらいならば実家に返してあげるのがせめての優しさかもしれない。
もちろんこれが全てが自分の思い過ごしという事がある、でもこんな時の自分の勘はよく当たるのだ。今日ほど自分の勘が外れて欲しいと思っている。
仮に作戦が上手く行っても関東地方は完全な平和にならない。北条家と多摩川を挟んで長い冷戦状態になるだろう、それも終わりが見ない冷戦に。
そう思うと溜息が出てしまう、ようやく平和に内政に集中出来ると思っていたのに北条家と共に新たな秩序を作れると信じていただけにショックである。
更に早川ちゃんに対して想いを裏切ることになる、そんな事はやりたくないけどやらないと苦しい想いをさせてしまうかもしれない。
本当ならば教えてあげて早川ちゃんの想いを聞きたいけどこれで作戦がバレて全てが駄目になる可能性があるので言い出せなかった。
被害が自分だけであれば早川ちゃんにどうするのかを聞けるけど自分だけではなく家臣そして民まで被害を及ぶことになるのだ。
本当に嫌な時代だよなと思いながら滝川一益が放った草の報告を待つのであった。どうか自分の考え過ぎなように願いながら。
それから数日後に滝川一益が放った草が戻ってきたので良い報告を願っていたが出てきた報告は。
「その報告は本当だな、小田原城で自分を亡き者にしようと密かに動いているというのだな。滝川、この草の報告を信用できると思うか」
「出来ると思います、この者は草としては某よりも優秀であります。もし彼が間違いを起こしたら誰も成功はしないと思うほどでございます」
あの滝川一益がこれほど他人も褒めるとは余程に優秀な草だろうな、そうなると誤報という可能性は低いと見て良いだろう。
事前に災いを察知して喜ぶ気持ちとこれで早川ちゃんと離れ離れになる事も覚悟を決めないといけなくなった。
本当に嫌な予感は当たるよな、でも逆に言えばこの作戦が成功する可能性が高くなってきたという事でもある。
喜ぶところかもしれないが個人は複雑な気持ちだ。でもこのままだと殺させれてしまうことは間違いない、真里谷家の当主として殺されるわけには行かない。
そうなると小田原城から入ったら逃げ出さないといけなくなるが幸いな事に昔に小田原城にいたことがあるので色々と城の中を探索していた。その中に小道など覚えている。
それらを上手く使えば逃げ出す事は可能だ、そしてあちらから裏切ったと言えるので面会する日の翌日に国に残している部隊を出陣させて武蔵、下野、上野を一気に奪おうと言う企みだ。
もちろん間者であろう新野がいるので集める目的は常陸統一と言う目標で騙す、でも常陸の佐竹を倒したいからそちらには新野を向かわせる予定だけど。
これで成功すると関東の支配者は真里谷家になり新たな秩序を作る事が出来る。後は朝廷と幕府に文句言われない位の資金を提供すれば越後の龍も来ないだろうから平和になると考えている。
残りの問題は真田幸隆さんと前田家元をどのように説得すれば良いのかと考えているぐらいだ。あの二人を説得するのには苦労はすること間違いはない。
でも素直に話せば問題は無いよな、また家臣として来てくれると信じている。自分はその様に考えながら事を進めていくのであった。
その先に待ち受けている結末はまだ誰も知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます