第59話、不穏な暗雲

自分は新野がいると教えもらった場所に向かっていた。人材は多いほど良いからなと思いながらその場所に向かった。




酒場で酒を飲んでいるだろうなと思いながらも滝川に教えてもらった特徴を元に探し始めた。するとそれらしい人がいたのであったがその人物は切実そうに見えるがなんとも言えない嫌な予感した。






それはかつて内藤に裏切れてた事があるのだがその内藤と似たような感じをしたのだ。まるで目的があってここに来たような感じをしていた。




少なくても召抱えたいと思いは消えていたがもしかしたら裏をかけるかもしれない、もし裏があれば今川家が絡んでいることだろう。




ならば自分を信用しているように見せて裏をかけるかもしれない、そうなれば敵の情報や思惑がいち早く分かり対応できると考えたのだった。




そんな意味でも自分は疑われない様に新野だと思われる人物に声をかけるのであった。










その頃、小田原城ではとある人物と密かに密会をしていた。相手は真田幸隆であり北条氏康と話し合いをしていた。




「では、お主の話だと今の真里谷信政は鬼だと言うのか。そんな馬鹿な話を信じろと言うか」






「確かに信じろと言われても無理な事はこちらも理解をしています、ですかこのままでは関東は鬼の手に落ちてしまいます。それに貴殿の大切な娘もただでは済まないのは火を見るより明らかですぞ」






余りにも現実味もない話ではあるがもし本当であればこのままだと早川が危ないのは確かではある。しかし、それだけで決めるのは良くないと考え話をさらに聞いていた。






しかし、話を聞けば聞くほどに信憑性が出てくるのだ。そもそも真里谷は十年前は我が北条が助けがなければ滅亡していた勢力が今では安房、上総、下総、常陸の大半を治める大名家に成長を果たした。






少なくても今の当主が余程の天才かまたは物の怪の類ではないと説明がつかないことは理解はしていた。ならばもし物の怪であれば北条家はもちろんの事、娘の早川も危機的な状況なのではないかと思っていた。






それにそれを抜きにしても北条家は真里谷家を何とかしたほうが良いと考えているものが多い事も事実であった。真里谷家のや政策は民にとってとても評価や信頼を置かれている。






その為に北条家の勢力からでも民が真里谷家の勢力に流れていたのだ。そしてそんな流れた民たちを真里谷家は見事に受け入れている。日々、その実力は大きくなっている。






もう北条家よりも勢力が強くなっているとも考えられる。その為に愛する娘を真里谷家に嫁がせたのだ、これで安心したと思っていたらここで真里谷信政が鬼かもしれないとはとても頭が痛くなる話だ。






「もちろん、協力をしていただけたら関東は北条家の物になりましょう。某も上野、下野を治める大名として認めていただけるのであれば北条家には逆らいません。それに武田家も今川家も味方でございます」






幸隆の話は確かに美味しい話である、北条家の悲願である関東の支配が叶う話でとても利益があるので良いがそうなると幸隆にはあんまり利益が無いように思えたので北条氏康は幸隆に対して質問をするのだった。






「確かに北条家にとってみれば利益がある話であるがそちらの利益はあるのか。そしてそれを教えてくれないと信用することはできない」






それを聞いた幸隆は目を一旦閉ざして考える様に静かになりそして目を開くとそれは真剣な表情で氏康の質問に答えるのであった。






「某は昔は故郷を追い出されて誰にも仕えて家族など養うこともできない牢人でありました。そんな某を真里谷信政様は拾って家臣に迎いれてくれました、何処から来たのかもわからない某を」






氏康は静かに幸隆の話を聞いていた、そして話している幸隆は良い思い出を語るような表情もしていた。






「某は真里谷信政の元で働きましたがある日に殿は鬼に憑依されてしまいました。某と前田殿でなんとかしようとしましたが相手の方が上手で捕まってしまいました。某の運命もこれまでと思いましたが殿は憑依してきた鬼に必死に抵抗して理性を僅かの間でありますが正気になり我々を逃してくれました」






余りにも普通ならば信じられない話であるが話している幸隆の顔は氏康はある程度見たことがある顔だった。その顔をしている者は未だに嘘を言ったこともない誠のことを話しており、そして目の前の幸隆もそうであろうと考えていた。






「もちろん鬼も黙っていないで殿を食い殺そうとしてまたしても殿を支配しようとしましたが殿は己の腕に刀を刺し足止めをしました。そのお陰で我々はこうして再起を図り、上野、下野の国を統一したのです。全ては殿を救う為にです、それ以外の事は微塵も考えておりません」






そう言って幸隆は氏康に対して殿を救う為に協力して下さいと頭を下げてまでお願いをしてきたのである。それを見た氏康はそうか、ならば儂がみた真里谷信政は全てが偽りではなかったという訳かと少し安堵した。






しかし、そうなると早川が危ないことになると思いで受け入れたのであった。こちらも安房、上総、下総、常陸の大半を手に入れる好機であり上手く行けば真里谷信政を助け出しそのまま家臣にすることもできるかもしれないと氏康はそう考えているのだった。






そうなれば幸隆も上手く行けば家臣にでき関東は北条家の物になる。これほど良いことはない、その為に念入りの策を幸隆、氏康は練り始めるのであった。






ようやく関東に平和が訪れたかに見えたが大きな戦乱の暗雲が関東を覆い尽くそうと迫ってきていた。そしてその暗雲を止められる者は誰もいない。



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