第50話、信政、最後のあがき
自分はすぐに牢獄に向かい、すぐに捕まっている二人に会いに行った。二人とも自分のことを主凄く恨んでいるようで凄い目で見てきたけどそれは酒吞童子に乗っ取られたからと言って言い訳で済まされないことだ。
だから許してもらうとかは考えていない、とりあえず今は二人をこの場から逃がしてそしてほかの者たちと一緒に国外に逃げて欲しいだけだ。自分は急いで二人に対して
「真田幸隆さん、信じてくれるとは思っていないけど聞いてほしい。自分は今、酒吞童子に体、人格を乗っ取られつつあるのだ。間違いなくこれが最後の機会になることだろう、謝っても許してくれないと思うけど最悪の事態だけは避けたいのだ。どうか、この無能な主である信政を最後に一回だけでも信じて欲しい」
自分は真剣に真田幸隆さんに対して目と目を見ていた、すると真田幸隆さんは自分を信じてくれると言ってくれたのである。とても嬉しかった、もう信じてくれないと思っていたが真田幸隆さんが自分に対して
「殿・・・数時間前の殿と雰囲気が違いすぎるのでもしかしたらと思っていたのですが・・・そうでしたか。殿、某こそ殿が困っているのに助けられずに申し訳ありません」
「何を言っている、真田幸隆さん。あなたには本当に助けてもらっているばかりで何もお返せずにいました。こんなことが最後の恩賞みたいになってしまいましたが必ず助けて見せますから」
自分はすぐに真田幸隆さんを解放してすぐ隣に捕まっている前田家元も解放させようとしたら
「俺は別に良いですよ、生きていてももう仕方がないことですからこのまま残りますから」
もう諦めた顔をしながらそう話している前田家元を見て自分はすぐに怒りながらも泣きそうになりながらしながら前田家元に対して話した。
「もう別に良いですよ・・・・ふざけるな!、こちらは生きたくても生きたくてももう鬼に人格を奪われるしかない人に対していう言葉ですか。自分だって生きたいですよ、本当に心から愛する女性と一緒に暮らしたいですよ。もっと国を大きくして民など家臣たちを安心して暮らせる国を創りたかったですよ。けれども・・・もう無理なんですよ。鬼に人格、体が乗っ取られつつある自分ではもう出来ることはこの場にいる二人とその家族と言える者たちを逃がしてあげることしかできないですよ」
自分はとても悔しい、本当ならば手に入ったかもしれない幸せが自分には訪れることがない悔しさで泣いていた。苦労はしてきたけどいつかは報われると思っていたから頑張ってきていたのに最後の最後でこんな終わり方をするなんて誰が想像できた、誰が納得できると思っている。
自分はこそもう泣き叫びたいだよ、すべてが嫌になるほど悔しいだよ。でも自分のことを信用してくれた者たち、そして本来ならば幸せになるはずだった者たちが目の前で自分と同じ不幸になっていく光景をただ見ていることはできないだよ。
だからお前だけでも生きて、お前だけでも自分が手に入るはずだった幸せを手に入れて欲しい。それが無能な主としてできる最後の恩賞だ。そう真剣に言うと前田家元も分かりましたと言って少しいやいやであるが逃げてくれることになった。
自分は二人を連れてすぐに真田幸隆さんの屋敷に向かって家族たちは万が一のことも考えて夜逃げの準備をしていたみたいで移動することは全然問題はなさそうであった。そして恭雲院は真田幸隆さんを見て泣きながらも嬉しそうにしながら抱きしめあっていた。
本当ならばとても良い感じで見ていたいけど自分には時間がないので済まないが急いでと言って準備をして出発をさせている間にも自分は諏訪姫がいる場所に来ていた。
同行しているのは前田家元のみで中に入ると先ほどを受けてこれからどうしようと考えているところに自分と前田家元が入ってきたので諏訪姫は驚きながら一体、何事なのかと慌てながら聞いてきたので自分はすぐに二人に話した。
「二人とも相思相愛だろ、だからお前たち結婚するがいい。本当ならば正式にもっと宴会みたいなものを開いて祝いたかったがもう自分にはそれが出来そうもない。だから前田家元、必ず諏訪姫を泣かすことはするなよ。自分の分まで幸せになってくれよ」
それを聞いた二人とも急に自分の口からそう言われて唖然としていたが時間がないのだと言って自分はすぐに前田家元に対して返事をするように言うと前田家元はすぐに
「も、もちろんです。こんな俺にとても美しい諏訪姫殿と結婚させてくれたこの御恩は忘れません。そしてなぜ、殿は俺と諏訪姫との関係を知っていたのですか」
時間はないけど自分は軽く説明をしたのであった、それはかつて夢であるけどと少しぼやかして伝えた。
「夢で諏訪姫と正室になっていた時に戦いで諏訪姫が敵の手に落ちてそこで敵将と諏訪姫が恋に落ちて子供などができるがその後に自分がその敵将を殺してしまって不幸になる夢を見た。その夢に出てきた敵将が前田家元、お前なのだ」
そう言うと前田家元は驚き、諏訪姫も驚きを隠せないでいた。まあ、夢で知ったと言われたら驚くよねと思いながら二人を見ていたけど二人ともとても赤くなりながら肯定をしていた。本当にお似合いだよなと思いながら自分と前田家元、諏訪姫は真田幸隆さんたちが待っている場所に向かって走り出した。
その途中で酒吞童子が起き始めようとしてまた人格を奪おうとしてくる感覚が伝わってきていた。不味いと思いながら急いだ、そうして合流したのちにみんなに対してもうすぐに酒吞童子が目を覚ましてしまうと言って急がせた。そうしてもうこれでお別れになることであろうと思ってみんなに対して
「これでお別れになるな、本当にみんなには申し訳ないことをしてしまった。自分ももうすぐに酒吞童子が表に出てくることだろう、そうなれば真田幸隆さんと前田家元は殺されることになる上に恭雲院さんに諏訪姫は襲ってしまうだろう・・・だからその前に少しでも早く走って逃げてください。これが自分の最後の願いですから」
それを聞いて真田幸隆たちは分かりましたと言ってその場から逃げ始めた。これで良かったと思ったその時に自分の内側から声をかけられる感覚がしたのである。
(まさか、来世の俺がここまでの抵抗をしてくるとは思いもしなかったぜ。腐っていても俺の来世だなと思ったぜ・・・だから全力でお前を封じて逃げた男たちを皆殺して女は襲ってやる)
そう言って再び、自分を支配しようとしてきたがまだだ、今はだめだと言ってすぐに刀を抜き自分の腕を刺してその上に建物に腕を貫いた刀を差して動きを封じた。それを見た前田家元が足を止めて殿と叫んだが自分はすぐに意識が飛びそうになりながらも
「家元・・・振り返るな、信じた道、そして大切な彼女を守れー男として愛する女性ぐらい守って見せよ。これが真里谷信政が命ずる最後の命令だーーー、進めーーー」
最後の力を振り絞って前田家元に対して叫び、命令をした。それを聞いた前田家元は泣きながらも承知しましたと言ってもう後ろをふり返らずに走り出した。後は一秒でも長くこの鬼に抵抗してやるだけだと思いで自分は酒吞童子に対して最後の抵抗を始めるのだった。
けれども流石、酒吞童子と言うべきかどんどん意識が遠のいてきていた、これが消えたらまた酒吞童子に人格が奪われるだろうなと思っていた時に遠くから前だ家元の声が聞こえてきたのである。
「殿ーーー、必ず助けに向かいます。それまではどうか、どうか耐えてください。この貰った大恩を必ず返して見せますからーーー」
ふん、無理なことをよく言えるわ。けれども嬉しいかなこれで不幸から助かった者たちがいるのだ。この抵抗も無駄ではなかったと知らず知らずに泣いていた。そして自分の意識は泣きながらとうとう消えてしまったのであった。
何も聞こえない、何も見えない闇に飲まれたのであった。もうこの闇から二度と出られることはないだろうな・・・・。
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