第35話、信政・・・家督を譲る

それからは桃花さんに言われて出来る限りのことをして直していたがそれでも家臣は認めてくれることはなかった。でもすぐに認めてくれると思っていないから頑張っていればいつかはと思いながら過ごしていた。






けれども最近、あんまりいい噂ではないものが流れていた、それは自分を倒してほかの真里谷一族が当主になるとそう噂が流れていた。この状況であればありえる話であり、それに真里谷一族は良く身内で内乱をするので余計に信用性があった。






本当に信用できる身内がいないのも困る物だよねと思っていた。本当に周りには味方と言える者は今では桃花さんぐらいしかいなかった。最近では吉乃もそこまで信用はできずにいた、無理もないだろう、ここまで悪い噂をされていたら危険だと思うのが当たり前だ。






だから自分が吉乃に対してもし何かしらで危険だと思ったらすぐにいなくなっても構わないと言ってあげた。これで明日、急にいなくなってもどこかに向かったとわかることだろう。






本当にみじめだよなと思っていた、情けないと考えていた時に桃花さんが今夜、一緒に寝ませんかと誘ってきた。






いやいや、桃花さん。その男性と女性が一緒に寝るとか意味を知っていますよねと思いながらその夜に一緒に寝ることになった。正直に言って最近は嫌なことばかりだったので少しは良いことがあったかなと思って待っていた。






すると早速、桃花さんが布団に入りこちらにと言ってきたので入ってた、すると桃花さんが真剣な顔をして静かに自分に対して話を始めた。






「信政さん、あなたは今とても危険な状況になっております。私が調べたら真里谷一族・・・すべてがあなたを亡き者にしようとしています。証拠なる手紙の一部をこちらのほうに書き写しましたので内容をご覧になってください」






その内容は自分を殺して真里谷一族の者が自分の弟にあたる呉次郎が成人するまで代理をして成人してから呉次郎に当主をさせると言うものであった。それはこの国に味方が完全におらずただ敵のみしか残っていないことを理解した。






どうしてだ、自分は不才ながらも頑張ってきた。国を亡ぼすようなことまではしたつもりはない。一門衆たちも優遇してきたのにどうしてだ、そんな思いがあふれ出ていた。






涙も流していたがもうどうすれば良いのか分からなくなっていた。そしてこうやって分かった以上はここから出て行くしかないと思っていた。島津将希には大変申し訳ないけどもう主としてこのままいたら自分は家臣たち、一族たちに殺されてしまう。






そう思い、桃花さんにもここから出て行くようにお願いをした。お世話になった桃花さんまで巻き添えをしたくはないと思いで言っていたがここで桃花さんから申し出があったのである。それはこの国を出てともに逃げようと言うものであり、そこで一から頑張りましょうと提案を出された。






でも自分に対してそこまでのことをしなくても構いませんからと言うと桃花さんは私は好きでこのようなことをしているだけですから気にしないでくださいと言ってきた。本当にここまで良い女性はいないだろうなと言うと桃花さんは






「私が良い女性ですか・・・全く、信政さん。私はこう見えて悪女ですから見た目だけで判断はしないほうが良いですよ」






いやいや、そんなことはありえないですからと言うと桃花さんは悲しい顔で我が子を放置させたこともあるのにですがと言ってきた。それを聞いていたがその顔には明らかに後悔と無念が伝わってきていた。






桃花さんほどの人物がそうしないといけない状況にでも追い込まわれたのであろう。そしてまだ二歳ほどの子をそうさせてしまったことを未だに鮮明に覚えていると言うのだ。もうすぐに見捨てられるのに桃花さんに向かって笑顔にしている我が子を見捨ててしまったことを、時々夢でも見るそうだ。






もう何度泣いたことか忘れてしまうほどに・・・そう聞いているとその子も可哀そうだが桃花さんも可哀そうだと思うのだった。きっと状況が状況であれば大切に育ててきっといい家族になれたはずなのにと思っていた。






そしてどうして自分をここまで助けてくれるのかと聞くと桃花さんは自分がその見捨ててしまった我が子に何となく似ているから見捨てることができなかったと言うのだ。そして自分の置かれている状況はひどくもし見捨ててしまったらきっと後悔をするからと思ってここまでしてくれていたのである。






そうなのか、自分は桃花さんの子供に似ているのかと思いで分かりましたと返した。その後は桃花さんと話し合いをしてこちらから当主の座を譲れば最悪の状況は免れると考えた自分と桃花さんはその翌日に評定を開いて話をしたのであった。






「実はみんなに伝えたいことがある、我、真里谷信政は一族に家督を譲りたいと思っている。最近は家臣たちの統率などができず、そして外交もうまく行っていない主であるためにここはほかの真里谷一族から新たな当主を出したいと思っている。無論、自分はそのまま国外に出て行くつもりだ」






それを言うと家臣たちの多くが賛成をしていた。やはり、みんなは自分が当主だということが不満だったのであろう。けれどもこれで殺される心配は無くなったと思っていた。その後にすでに謀反を起こすつもりだったので準備をしていた。






もう今日から実行したいと言って家臣たちが多くが言ってきていたので自分はならばそうしようと言ってその場で家督を譲ったのである。これで晴れて自分はもう真里谷家の当主と言う身分ではなくただの牢人としてまずは落ち着くまで生きて行こうと思いでその場を後にしようとしたら






「そう言えば、信政。お前がどうして評定の間にいるのだ・・・ここにいる不届き者を始末しろ」






そう言うと一斉に周りの家臣たちが立ち上がり自分を殺そうとしてきた。自分はその場から逃げ出した。けれども周りがすべて敵であり逃げても逃げても敵が待ち伏せをしておりすぐに包囲をされてしまった。






「なんでだ、自分はすぐに出て行くつもりだ。ならば明日までにこの国を出て行かなければその時に殺すがいい。少しぐらいの時間は欲しい、それぐらいは良いだろう」






そう言うと包囲をしている人が見から父上が出てきた、自分はすぐに父上に対して自分はすぐに家督を譲りましたので後はこの国から出ています、今後はこの国に関わるつもりはないですから見逃してくれないでしょうかとお願いをしたがここで父上からとんでもないことを聞かされたのである。






「確かに家督も譲り、この国から出て行くのであれば見逃していたであろう・・・それが本当の子供であればな。残念ながら幼かったお前には知らなかったかもしれないがお前は養子なのだ、それも天から落ちてきた子供だ。誰の子も分からない奴を今までは実の息子として育ててきたが去年あたりに実の子が生まれた以上はお前は用済みだ、さっさと消えていくがいい」






今まで本当に優しかった父があんな冷徹に自分に向かって話していた。それがとても悲しくてしょうがない、それが本当でも自分をここまで育ててくれたあなたを本当の父親と思っているのになんで血が繋がりがないからそう簡単に切り捨ているのですか。






自分は分かっていればそれを教えてくれたら自分が本当の息子ではないということを教えてくれたら自分は理解をして父上の子供に家督を譲りをしたのにすぐにしょうがないと思いで気持ちが納得したのに・・・なんでですか、そこまで自分は信用できない人物でしょうかと聞くと






「そうだな、戦術と内政は本当に素晴らしいほどの才能がある。その上でお前を生かしておけば後々の災いとなる。今はする気がなくてもその後にする可能性だってある以上は生かしておけばのちの災いになりそして他国を強化するしかない。ならばここで殺すのが一番の良い選択だろう」






そう言いながら笑っていた、そしてここでほかの者たちに手にかかって殺されるか、自ら腹を切って死ぬかどちらが良いと言われた。ここまで勢力を大きくしたお礼だと言っていたが自分はもう長年にわたって信じていた父上に裏切られてもうどうしようもなかった。






父上だけは自分のことを昔から理解をしてくれていると思っていたのに信じていたのにそれは自分の妄想だけだったようだなと心で笑っていた。桃花さん、あなただけでも無事にこの国から出られることを祈っていますと思って腹を切ると言って準備を終えた次の瞬間に急に周りが暗くなった。






太陽の光を遮るような大きな雲でも出てきたのかと思っていると周りの者たちが何だあれはと言って上に向かって指をさしていた。そして自分も指をさしている方向を見てみるとそこにいたのは巨大な大きな蛇でありそれが八頭も繋がっているのだ。






これを見た時には自分は本当に運がないと思って自分の不幸に対して笑って笑いきれなくなっていた。おそらく八岐大蛇なのであろう、最後の最後で化け物と出会うとはと思いながらその八頭のうち一頭が自分のところに来て口を大きく開けた。






捕食をされるのですか、でも栄養になるのであればそれも良いかな。もう生きるのに疲れた、好きに食べていいよと思いで逃げずに待っていた。これまでの不幸に父上の本心を聞いてもう生きる気力を失っており逃げることもやめていた。






そうして自分は八岐大蛇に丸呑みをされてしまったのであった。もう考えたくないと思いで自分は飲み込まれて急に意識が遠のいてそのまま手を離した。ただ、もう二度と意識など手に入れたくないと思いながら。






でも丸呑みをされて普通ならば恐怖を覚えるはずなのにどうにも恐怖は出てこなかった。むしろそれどころかどこか安心感が出て来ていた。なんでだろうな・・・・まあ、わかるわけないか。

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