第29話、反撃に成功するが・・・信政の孤立

しかし、前田家元も生きるために必死に逃げていた、こんなところで死んでたまるか。己は主が死んだ以上は混乱をしている主家をうまく乗っ取り、天下へと野望があるのだ。






こんな田舎侍みたいなやつらなんかに阻止をされてたまるかと思いで逃げていた。けれども足軽たちに足止めを命令をしても逃げる始末で慌てた前田家元は逃げている足軽を斬り殺したがそれでも逃げるのをやめるどころかむしろ勢いを増して逃げていく始末で待ってくれる者は誰もおらずに逃げていた。






佐竹家の家臣や足軽たちは普段から大名の佐竹義昭と前田家元に多くのお金や労働をさせられてもう嫌々であったが勢力はどんどん強くなって逃げ出せば殺されると思ってただ従っていただけであるが今ではその総大将も討ち死にした以上はもう逃げても大丈夫と思いで逃げていた。






これを見ていた真里谷信政はもしかして相手の士気はもう相当なほどに落ちている、今ならば相手が下ってくれるかもしれないと考えてすぐに声を出した。






「敵の武士たちよ、もし逃げると言うのであれば我々は追撃をしない。もし、こちらに寝返りをしたければその男を捕まえてくれ、そうすれば褒美も出す」






そう言うと逃げていた足軽たちが前田家元のところに向かい捕まえようとしていた、前田家元はこんなところで捕まって死んでたまるかと思いで必死に逃げていたが足軽たちは民や部下たちにとてもいい評判を受けている真里谷信政が捕まえたら褒美を出すという言葉を信じた。無論なこと真里谷信政は出すつもりだが。






それほどに足軽たちは佐竹家に対する忠誠度が低かったのだ、迫ってくる足軽たちを必死になぎ倒して逃げていたがここで真里谷信政が放った弓矢が足に当たり痛みのあまりに動けずにその場で崩れた。






そして迫ってくる真里谷信政は無表情な冷徹さを出しながら前田家元のところに迫ってきていたのである。それはまるで鬼が罪人を殺しに来るような光景であった。この時に前田家元は真里谷信政に対して命乞いを始めてきた。






「真里谷信政様、本当に申し訳ありませんでした。この度は佐竹のバカ殿に無理やり同行させられていただけなのです。あなた様に逆らうなど一切ありませんでした、諏訪姫様はこちらの方で保護をしています、すぐにお連れいたしますのでどうか、許してください」






「・・・なんでお前を許すと思った、お前は我々に大きな被害を与えた、民に家臣たちにそして自分にそんなやつをどうして命を助けなければならないのだ。お前には武士としての誇りはないのか。最後ぐらいは潔く死んだらどうだ、お前たちがしたことは必ず後世に伝えるつもりだ、だからせめて最後ぐらいは漢らしく死んだらどうだ・・・前田家元」








そんなことは嫌だと言って必死に逃げようとしていたがすでに怪我をしている以上はもう真里谷信政からは逃げられない、もう泣きながら命乞いをして助かろうとしていたがもう殺すつもりであるために真里谷信政の顔は無表情でありそれは見た真里谷家のものでさえ恐怖を感じるぐらいであった。






長い間、付き従っていた太田康資もここまで冷徹さを出しているのは初めてだと言うばかりに戦場の恐怖よりも真里谷信政に対する恐怖が勝っていた。本当の鬼みたいな感じを出していた。






もちろんそれを向けられている前田家元はそれ以上の恐怖を出して必死になって逃げていたがそんなことをあざ笑うかのように真里谷信政は傷を負っていないもう片方の足を持っていた刀で突きさしてそれを受けた瞬間に前田家元は悲鳴を上げて泣いていた。






更にすぐに殺さずに次は左腕をその次は右腕を刺していたぶっていた、その時の真里谷信政の表情は無表情もしくは笑っており敵味方問わずに本当に人間がすることなのかと恐怖を感じてみていた。






そして痛みの余りで前田家元はもういいから殺してくれとお願いをしてきたがどうして敵のお願いを聞かなければならないのだと言って止めを刺そうとはしなかった。そう、自然と力が尽きるまでいたぶるつもりであった。






前田家元はただひたすらにお願いをしていたが聞いてはくれずにそのままにして死んでいくのだなと冷たい声でそう言ってその場から離れてすぐに真里谷軍勢に対して






「皆の者、これより下総の国を一気に制圧をする。功をあげたい者、名前を残したいものは我に続けーー」






そう言うと真里谷軍勢は一気に進軍をした、そして佐竹家の足軽たちも勢いがある真里谷家に寝返りをして一緒に進軍をした、その時に誰もいなくなり前田家元のところに一人の武者が現れた。






「前田殿、あなたは確かに俺たちに対して酷いことをしてきた・・・けれど今回は殿が余りにもひどすぎる。武士としてせめての情けだ」






そう言って苦しんでいる、前田家元を止めを刺しに来ていた。それを見てありがとうございますと言って安堵をしていたそこに太田康資が刀で首を刎ねった。






太田康資は本当に今回のこのことは正しいと言えるのであろうか、それにしてもこれで真里谷家は一気に大きくなると思って先に進軍した真里谷信政に向かって走る前に太田康資は礼をして立ち去った。






この戦いで重臣と言える者たちが一気に亡くなり下総の国に勝ち戦の勢いで攻めて戦わずに下総の国を統一させたと思っていたら休む暇を与えることせずにそのまま常陸の国に侵攻をした。






そこでも二人の死が余りにも大きいためにほとんどの者たちが逃げて無人となった城を次々へと落としていた。こんな強行軍をするためにも兵糧などをこの三年間、貯めておりそこは問題はなかった。






そんな快進撃をして佐竹家の本拠地、太田城に迫った。流石にここでは籠城戦の構えをしていたがそれでもここまでの快進撃を聞いて籠城をしている者たちには動揺が走っていた。そのために諏訪姫やそして北条氏康の娘など引き渡し、そして下総の国と常陸の国を真里谷家に譲って和平交渉をしてきた。






それを受けた真里谷信政はここまでは勝ち戦と今まで貯めてきた兵糧などのおかげで来れたが流石に厳しくなってきているか。足軽たちにも疲れが出て来ている、ここは多くは求めずにこれを受け入れるか。






そう決めた、真里谷信政はその交渉を受け入れてまずは佐竹家が常陸の国から出て行った、佐竹家はとりあえず奥州のほうに逃げて国を立て直すつもりであった。






しかし、すでに多くの人材が失っており更に民などの心も離れている佐竹家はもうすでに立て直すことなど不可能に近かった。そして佐竹家にはもう天下をとることなど不可能になり没落も時間の問題になっていた。






その後に太田城に入り、この時に諏訪姫、北条氏康の娘などが保護された。真里谷信政は大変に喜んでいた。それは三年以来の再開で期待をしていた。






そうして評定の間で待っていると言ってから待っていると保護された二人が現れた、元気そうで良かったと思っていたら諏訪姫は一人の赤子を抱いていた。






気になった自分はその子はどうしたのかと聞くとどうやら捕まっている時に生まれてしまった子供、すなわちに諏訪姫は捕まっている時に前田家元の子供を産んでいたのである。






それを聞いて自分はならば後の災いになるから殺すことにすると言うと諏訪姫と北条氏康の娘がお願いです、どうかこの子を育てることを許してくださいとお願いをしてきた。






けれどもそんなことは許すわけないだろう、我々をここまで追い込んだ子供などのちの災いしかない。お前が殺す必要はないからこちらに渡せと言っても嫌ですとすぐに返答が返ってきた。






「ここであなたに渡せばこの子は確実に殺されてしまいます。なんで殺されることを分かって子供を渡す親などがいるでしょうか。親ならば・・・子供には生きて欲しい、生きて楽しいことなど教えたいと思うのが当たり前です。どこの世界に子供の死を願う親などがいるのですか」






そう言いながら自分に対して厳しい目をして陰陽術の構えをして睨んできていた。もう話にならないなと思いで無理やりに奪おうかと思っていた時にここで北条氏康の娘が






「真里谷様、もしここで奥方に危害を加えるつもりならば私はここで自害をします。そうなればあなたは恩人である人物を仇に返す男だということになります。奥方に危害を加えたければ加えても構いませんがその時にはここで自害をしてあなたに悪名を後世までに残して見せます、恩人を仇する人物だと」






そう言いながら北条氏康の娘は自分の首に小刀でいつでも首を斬るように構えていた。この女どもせっかくここまで助けに来てやったのに何様のつもりだと怒りのあまりに表情に出そうになっていた。






この時に今回の戦いの最大の功労者である、島津将希が話をしてきた。それもとても真剣な表情で話をしてきたので何事かと思いで聞いてみた。






「信政殿、この度の戦いで褒美の代わりにどうか奥方の想いを叶えてくれませんか。それを叶えるのであれば俺は一切の褒美はいりません。どうか、この戦いの功労者として聞いてくれませんか」






お前までそんなことを言うのか、そう思いでもし叶えないと言ったらどうすると聞くと島津将希が






「その時は何も褒美は受け取りません。ですがこの度の最大の功労者が何もなければそれ以下の者たちにも何も与えないということですよね。戦功第二位でも、首を挙げた者でも、それを無視して与えたら俺が後世まで不公平な主であったとこの国を出て広めてあげるまです」






イライラをしてきた、本当にこいつらはそこまでして自分を怒らせたいのか。そして戦功第二位である太田康資にも聞いてみた、すると太田康資も島津将希と気持ちは同じです、叶えてくれるのであれば領土など褒美話でも良いですと返答してきた。






そしてほかの功労者たちも同様でここに自分の味方はいないとわかり、立ち上がり






「そうか、そこまでみんなが求めるのであれば認めてやるよ。それで満足したか、お前ら。これでお前らにこの度の褒美は一切にならないからな。言い出したお前らだからな、武士として責任はとれよ」






そう言って怒りを面に出してそのまま評定の間を後にした、真里谷家は僅か五千で四万以上の大軍を破り、そして敵の総大将の首を刎ねてなおかつ下総、常陸の国を獲得したはずなのに真里谷家の評定の間はまるで負け戦のように静かになっていた。

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