第12話、真里谷家の念願と周辺の行動

そうして自分たちはある程度の軍勢を率いてまだ上総の国で里見の勢力にある城に向かって進軍をしていた。その時に竹丸がどうしてこれほど少ない軍勢にしたのですかと聞いてきた。




別に少ないとは言わないよ、だってこちらには五千もいるのだからさ。まあ、もっと引き連れることは可能であったけど実は出陣をする数日前にある密偵からの報告があったのだ。




それは里見氏と千葉氏が同盟を結んで真里谷家を倒そうと言うのだ。まあ、里見氏はもちろんのこと千葉氏も酒井氏などが落ち延びており更に言うと里見氏が滅びたら今度は真っ先に狙われる場所なので千葉氏も危険を察知したのであろう。




だから同盟を結んで対抗をしようとしていた。これを聞いた自分は悪い手ではないが、それをするのには遅すぎたなと感じていた。これがもっと数年前からしているのであればかなり良い手だと思っていたけど遅すぎだよと思う。




だから軍勢が多く見える陣形で里見氏に迫ってきていた。これで里見氏が千葉氏に背後から攻めてくれるように要請してくるはず。なのでまた父上に刀の中に手紙を送って千葉氏が攻めてくるので森の中に伏兵などをおいて撃滅をする作戦を考えて伝えておいた。




その後に余裕だったら城攻めもしてくださいとお願いをしていた。攻城に関しては真田幸隆さんが考えてくれた。この人が考えたのであれば落城は不可避だなと思っていた。




そうしてもらうために出来る限りこちらに向ける兵力を削ったわけですよ。もちろん安房の国に攻めるときには少し工夫をしないといけないですけど。




そのようなことを考えながら遂に上総の国で里見方、最後の城に迫った。ここが安房の国に対しての防衛線なので敵方も士気が高かった。今までは攻めては負けていたが防衛戦ならば勝ち目があると思っていたのであろう。




だが城攻めで一番大切なことは何かと真田幸隆さんが教えてくれました。それは人の心ですと。到着して城攻めを始めた瞬間に内通していた城内の兵が一気に城門を開け、なだれ込むように攻めると僅か一日で攻め落としてしまった。




しかもここに配置されていたのが里見氏の精鋭部隊で、これで安房の国に侵攻が出来るようになったと同時に真里谷家の念願であった上総の国を統一したのである。




非常に喜ぶべきであるが、まだ戦が終わっていないから祝い事はまた今度だと思って進軍を再開する。その時にそこそこよい報酬で後方から応援をしてくれる民を募集した。




人数はかなり集まって、その者たちに多くの旗を持たせて進軍する。ついでに服装は足軽の格好をしてもらうようにお願いをした。もちろん戦う訳ではない、ただ後方からついてきてくれるようにお願いをしただけだ。




 何も知らない里見氏はこれを見てどう思うだろうか? ありえないぐらいの大軍が迫ってきていると誰もが思うだろう。すでに精鋭部隊は全て壊滅しており、城に攻め寄せるだけで降伏してきて戦わずに城を奪っていく。そして、とうとう里見氏最後の城を包囲した。




 既にこの城以外はすべて真里谷家の物になっており、敵方の城に対しては千葉家がこちら側に味方をしてくれたからここまでの軍勢を出せたと城方に向かって言い放った。




 信じられないと思っていただろうが、夜になればありえないぐらいの焚火の数や旗などを見て嘘ではないと思わせる。本当は千葉家はまだ我々と敵対しているのですけどね。




 その翌日から城に籠城をしている足軽たちが次々へと降伏してきた。自分はそれを受け入れて足軽たちには武具をおいて領地に帰るのであれば許すと伝えると、降伏してきた足軽たちは皆それを受け入れて領地に帰った。




 そのためにどんどんと城側の士気が落ちて、そして包囲して十日目で里見氏の当主が自分は責任を取って切腹するからどうか妻子と城兵の命は助けてくれないだろうかと懇願してきた。




自分は目の前で切腹をするのであれば、真里谷家の嫡男として保証すると答えを返すと、里見家当主はありがたいと言って翌朝切腹をすると伝え、その日は城に戻って行った。




 翌日になって里見氏当主が約束通り白装束をまとって城から出て来ると、自分の目の前に来て切腹の準備をすると、自分は最後に声をかけたのであった。




「家臣や家族を思ってそちの行動は誠に武士であった。里見氏のことは真里谷家が後世まで伝えておこう。里見氏は立派な武家だったと」




当主はありがとうございますと言ってそのまま腹を切った。最後まで恥ずかしい行動はせずにそのまま絶命する。それを見届けた自分はこれほどの武士をこのまましておく訳にはいかない、丁重に弔ってくれと僧侶にお願いをした。




 城方は武器を捨てて投降し、こうして安房の国も真里谷家に統一された。約束通りに城兵、里見の妻子は保護をし、この城の近くに家臣や家族を助けるために勇敢な行動をした里見氏、当主の墓を作る。




間違いなく誇るべき武家であった、それを倒したのである。上総の国も当たり前だがこの安房の国も豊かにしなければならない。のちの世まで豊かな場所になるように努力をする必要があると決意を固めて自分はその場を後にした。




こうして戦国時代、安房の国を中心に勢力を持っていた里見氏はこうして滅んだ。竹丸はあんまり戦いが出来なくて少し残念であったみたいだが、あまり戦いをせずに国を取れて勝利したのだから少しは喜んで欲しい。




 真田幸隆さんにはお見事ですと褒められた。これで真里谷家は関東でも屈指の勢力になりましたなと喜び、自分もこんなすごい人が褒めてくれるのは嬉しいので素直に喜んでいた。




 安房の国を統一した翌日、真田幸隆さんの次男が誕生したのである。それを聞いた自分たちは、真田幸隆の次男の出産と安房の国に、そして念願であった上総の国の統一を祝って宴会を開いた。






そのころ上総の国は、信政の予想通り千葉家が上総の国に向かって侵攻を開始してきた。




 背後から襲って真里谷家を倒そうとしていたが森の中で伏兵に遭って壊滅的被害を与えられ、領地に逃げたが真里谷家は勢いのまま千葉家の城まで迫ってきた。




 城ならば大丈夫だろうと油断していたが、この時千葉家の兵卒に変装して紛れ込んでいた足軽が、城門を開けて城をあっという間に制圧してしまった。




 これにより千葉家は領地の半分ほどを真里谷家に奪われた。こうして真里谷家は上総の国、安房の国、そして下総の一部を支配をする大名家に成長する。




まさに飛んでいる鳥を落とす勢いに成長する。しかし、この成長は良いことばかりではなかった。それまで属国扱いにできると思っていた北条家は危機感を感じ始めていた。




  常陸の佐竹家も、千葉家を倒されると常陸の国に侵攻できるようになってしまうので警戒をして千葉氏と同盟を結ぶように行動を始める。そして両上杉もこのまま北条家と真里谷家を放置するのはまずいと考えて同盟をして北条家と真里谷家を倒そうと動き始めていた。




 上杉両家はまずは北条家から倒そうと考え作戦を考え始める。そう、後に三大奇襲戦と呼ばれる。厳島の戦い、桶狭間の戦いに並ぶ、川越の夜戦がまさに起きようとしていた。




それを背後から動かしているのは駿河の国を支配している今川家であり、そして今川家の軍師と呼ばれる男の存在である。その男が関東の情勢を聞いて思うことはただ一つであった。




 真里谷家の嫡男である。真里谷信政は稀にみる英傑であり、このまましておけばいずれ北条家を飲み込み我々の背後を脅かす存在になると考えて真里谷家の勢いを止めるべく作戦を考え始めるのだった。

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