第8話、椎津の戦い

さて、これから里見氏を壊滅状態にさせたいと思います、その方法は実に簡単です。まずは内通をしていた家臣に計略は成功しましたと報告して父上にはまるで真里谷信茂を討伐に向かうように出発をしてもらいます。




その時にはおそらく真実か、里見氏の者が見に来るだろうから本当だと信じてもらうために行動をします。そして父上は信茂がいる城に向かっている途中で信茂が軍勢を率いて別の場所に向かいます。もちろん父上には追ってもらいます。




それで城が完全に空城だと里見勢に思わせて残っている者たちで城を迎えてあげます。実はこの日のために火縄銃を百丁を準備しました、それも選ばれた百人を練習をさせてもいたので準備はばっちりです。




向こうは聞いたこともない兵器に攻撃をされるのですから混乱は当然起きる。大混乱をしている時に父上と信茂さんには背後から包囲をさせてもらって一気に殲滅をしようと計画をしていた。




父上はこれで本当に相手がこちらの計略に嵌るのかと聞かれたので自分は父上に対して




「安心していてください、父上。相手が計略をしてくる時にはこちらが必ず勝利をしますからだって向こうは自分たちの作戦が成功したと思って全く疑いもしないで攻めてくるでしょうからそれはそれは・・・ですから安心してください」




聞いた父上は才能があるお前がそう言うのであればそうだろうなと信じてくれて行動を開始したのであった。もちろん内通をしていた家臣は城門を開ける役目をして貰うことにした。




城門を開ければ向こうは確実に勝利を確信をして城門から一気になだれ込んでくるだろう、そこを弓矢や火縄銃でハチの巣にするという作戦。たまったもんじゃないよね、しかも敵は城門が開いているから多少の被害が出ても退却はしないだろうしそれでこちらは一方的に敵を倒せる。




少し卑怯かもしれないけど戦国の世である。そこはお構いなしにやろう、そう考えた自分は準備をして今かと今かと思いながら待っているのだった。




これが火縄銃を使う最初の戦いだ、必ず勝利をしてこの武器の強さを証明をしないとこの武器を作る予算が取れなくなるからね。それと民たちにはこの城と城下町が戦場になるから避難をするように呼び掛けておかないと。






そのころ、里見氏では内通していたものから手紙が来たのである、それは計略は成功して真里谷信隆は同族である真里谷信茂の討伐に向かったと報告をしていた。そして真里谷家を監視していた者からも同じ情報が届いて今こそ、久留里城の仕返しをする時が来たと思った。




里見義尭は正木時茂に五千の兵を与えて真里谷家の居城を攻めるように命令を下した。正木時茂は里見氏の中でもかなりの豪傑で特に槍術は大変優れておりあの有名な朝倉宗滴も誉めるぐらいに豪傑であり里見氏、最強の武士であった。




それを動かすということは里見氏も今回は本気で攻めとると言う思いがあった、この前の戦いの仕返しもそうであるがそれ以上に真里谷家がとても豊かな場所になっているのでそこを奪いさえすれば里見氏は一気に大勢力になりあの北条家とも戦える実力を持つことになる。




正木時茂も里見氏を大きくして己の名前も轟かせようと意気込んで出陣をしていた、報告によれば真里谷信隆と真里谷信茂は争いを始めたみたいで完全に計略が成功をしたと誰もがそう思って誰もいない真里谷家の居城に迫ってきていた。




そこに見た城下町は敵ながら見事と言うばかりの光景でこれを手に入れたらどれだけ豊かになるかと思いながら民などはすでに避難をしていた。時茂はそれはそれで助かったと思っていた。兵士たちが盗賊のような真似をする心配がなくなりまずは城に残っているわずかな城兵を殺して城に入って民たちを安心させなければと思いで城に迫ってきた。




すると城門で内通をしていた家臣が今から門を開きますと言って城の門を開かせた。良し、完璧だと思い城になだれ込んだ。時茂自身も勝利を確信して足軽たちと一緒になだれ込んだ。




しかし、いくら探しても敵兵は見つからず時茂は逃げ出したのかと思っていた時に本丸に繋がる城門の上から笑い声が聞こえてきたのである。時茂はその声がする方向を見てみるとそこにいたのはかつて久留里城で里見氏を壊滅に追い込んだあの男がいたのである。




時茂はまさかこの場所にいるとはと思って声を出して




「信政、三年前のあの屈辱的な敗北を挽回するべく我々はついにこの城を手に入れたぞ。お前も諦めて切腹でもしたらどうだ」




「おやおや、正木時茂さんは武勇のみしか優れていないのですかな。この状況で危ないのはあなたなのにそれを理解できないとは誠に残念だ。それではそんなあなたに良いものを見せてあげますよ。まさにあなたは歴史の変わり目を体験することになるのですよ。あの世で良い手土産になると思いますので・・・鉄砲隊、撃てーーー」




そう言うと城壁に隠れていた鉄砲隊が一斉に正木時茂に向かって発砲した。時茂は言葉のままでハチの巣にされた。本人は何が起きたのかとわからないまま絶命をしたのだった。




そしてそれに従っていた足軽たちはその衝撃な音でまずは驚いたところで更にここで大将が討ち死にして大混乱を起こした。すぐに信政は弓隊に追い打ちをかけろと言って隠れていた弓隊に一斉に攻撃を始めた。




もうすでに大将が死んだことで統率が取れなくなった者たちは我先へと逃げ出したが後ろの方までまだ状況が伝わっていないせいで逃げることができずにその間に火縄銃がまた発射できるように準備が終えたので今度は固まっているところに向かって一斉射撃をした。




いくら火縄銃が命中精度が低くてもこれだけ固まっていたら問題はない、それに当たった足軽たちは次々へと倒れてさらに混乱を起こしていた。




もう逃げるために必死で邪魔な味方を斬り殺し始めて同士討ちまで始まっていた。もう戦いと言わずに虐殺と言うべき状況になっていた。そうして終えるころには四千以上の死亡者を出した里見氏に対して弓矢で反撃をされた怪我をした足軽たちが数十人のみで完全勝利と言うべきところであろう。




残った足軽たちは武器を捨てて防具も脱いで降伏しますと泣いてきたので、ならば弓は使えなくさせろと言って、生き残った足軽たちは皆命令に従って弓を破壊したので、ならばこの門の中に入れ、そうすれば命は助けてやると言うとみんなその門に向かって歩き出した。




里見氏の被害は五千の兵力に武将、正木時茂を失ったのみではなかった。実はその間に真里谷信隆と真里谷信茂は南上総を攻めて奪われた領土のほとんどを奪い返した。完全に上総の国を奪えきれなかったがほとんどが真里谷家のものになり誰がどう見ても真里谷家の大勝利に終えた。




椎津の戦いと呼ばれるものは真里谷家の勝利に幕を閉じたのであった。これを機に真里谷家は更に勢いを増して里見氏は没落に向かい始めたのは言うまででもない。




そして信政もこの勝利を一族みんなで祝おうと思い宴会の準備を始めるのであった。

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