Page:04 今日も明日も安全委員長!
「安全委員会です!安全に十分気をつけてお祭りを楽しんでください!」
夏休みは終盤。
そんな今日は夏祭り、花火大会の初日。
会場は今年も家族連れで賑わっている。わいわいと人であふれた屋台通りは、最後の思い出作りに子どもが走り、青春の思い出作りにカップルが腕を組み、夜中のほろ酔い気分の大人たちが思い出作りにどんちゃん騒ぎ。それは警備員として控えるテントの大人たちも同じで、酔っ払いの相手をするくらいなら自分たちも酒を飲みたいよ、なんてグチグチぶちぶち言っている。
ああ情けない! 非常に情けない! もっともっとやる気を出すべきなのに!
……何なら引率の先生たちまでどこで油を売っているのか、それとも伝達ミスで先に見回りしているのか分かったものじゃない。まあ毎年時間通りになんて来ないからね、と係のおじさんおばさんは笑っているのだから許しがたい。ここら一帯は平和で住民性は決して悪くない町なのだけど、それにしたって町の安全がタンポポみたいに勝手に生えてくると思っているのかもしれない。むしろ勝手に生えてくるのは危険の方だろうに。楽観的なのは勝手だけど、それを全世界共通のものにするのはいただけない。
安全に過ごす、危険から身を守る、それを全員が意識して初めて安全になるのではないのか。角子、決して自分が考えすぎだなんて思わない。むしろその実感があるくらいだ。
このままお手伝いの名目で椅子に座り続けていたら、いずれどこかで安全が損なわれてしまうような気がする。このままではいけない。何より、このままでは角子に根っこが生えてしまう。勢いよく跳ねるように椅子から立ちあがって、角子は大人たちの方へ声をかけます。
「では、
「おお、やる気だねえ。どれ、ポスターの代わりにお小遣いあげるから好きなもの買っておいで」
「ありがとうございます! でも遠慮します! 角子はお祭りの安全を守るためにやってきた、安全の
「ははは! 子どもは気負わなくても、大人がいれば大丈夫なんだけどねえ。真面目だねえ」
そんなやる気のない態度で何を言ってるんだか。この有様では頼めるものも頼めないじゃないか。やっぱりこういう平和ボケした、臭いものに蓋ができるような大人たちではだめだ。危険なものに見て見ぬふりをしてしまう大人ではだめなんだ。決意を新たに固めてテントの入り口で出発準備をする。
普段から町の安全を守っている安全委員会は、夏休みでも夏祭りでも年中無休。町の危険に休みがないなら、安全委員にだってお休みはない。お気に入りのパーカーを羽織って、お守りの委員会たすきをかけて、首からは百円均一のメガホン、大人達から印刷してもらったポスターはリュックへ。運動靴はしっかり踵を確かめて、軽く準備運動。角子の心のように、やる気十分の髪の毛もぴょこぴょこ跳ねた。
……そうだ。委員会が終わって時間があったら、ここに来る前お家でおばあちゃんから貰ったお小遣いで屋台の焼きイカを買って食べるとしよう。今年はお隣のおじちゃんがイカが大漁だって喜んでいたんだ。
「それでは、いってきます! 安全委員会、しゅつどうです!」
「はーい、いってらっしゃーい。気をつけていってきてねー」
安全委員会所属、安全委員長――
町の安全のために、イカ焼きのために、今日も頑張ろう。えいえいおー。
【Page:04 今日も明日も安全委員長!】
それじゃあさっそく、夏祭りの安全を守っていこうと思う。
角子の役割は、事前にどこの屋台にポスターを掲示してもらうか、許可を貰っているところに渡す仕事。もしお酒や煙草のような非行に走っている学生や、犯罪、事件を見つけたら、それは携帯で大人に連絡……なのだけど、正直あの大人たちの様子では連絡しても意味はないと思った。小学生の自分にできること、かつ花火大会という場の雰囲気を乱さないためにできることとなると、ある程度高が知れているのだけど、もしそんな場面が見つかるようなら角子直々に拳骨しよう。
「安全委員会です!安全に気をつけてください!」
声かけは一番ポピュラーなもの。屋台から屋台までの間をメガホンで声を張り上げながら歩く。効果の程は全くと言っていいほどないけど、あるとないとではかなり異なる。具体的には、恐らくイクラとトビッコくらい違う。だから角子はあんまり滅気たりしない。何事も心意気が大切だって、おじいちゃんも言っていた。だから無駄にはならない。
食べ物の屋台にはどこも行列でどこが列なんだか分からないくらい。オモチャを扱っているクジ売りや射的、ボールすくいなんかは親子連れでごった返してる。毎年のことながら、よくこんなに人が集まる。花火大会効果は凄い。人の隙間を歩きながら、角子は一生懸命に安全を呼びかけていった。
「おや!そこのちびっ子、止まってください!」
「……ぼく?」
人混みの中を一人で歩いている青っぽい髪の小学生くらいの子どもを見つけた。夏祭りらしく藍色の甚平を着て青の鼻緒の下駄を履いた子。小学生くらいだと思った理由は、角子より小さい身長に見えたから。でも足を止めた彼に近づいてみると何だかあまりそうでもなかったかもしれない、もうすぐ百三十センチくらいになる角子と同じ身長のようにも思った。
ただ、男の子か女の子かもよく分からない、どちらかというと女の子っぽい顔立ちのちびっ子は角子を純粋そのものの顔でじっと見つめ「おねえちゃん、どうしたの?」と舌っ足らずに言うじゃないか。この感じ、やっぱり年下なんだ。これは大変だ、このままでは安全を損なってしまう。
「お姉ちゃんは安全委員会です! あのですね、お父さんか、お母さんはどちらに?」
「えーっとね、花火大会の、会場にいるよ。まだ花火まで時間があるから、あそんでおいで、っておこづかいくれたの」
「では、君は一人で回っているのですか?」
「ん? んー……ひとり、うん。ひとりだよ」
なぜ少し歯切れが悪くなるのかは不明だが、彼はひとつ頷いた。大変だ、年下が大人も連れずにこんな人混みの中を歩いていたら迷子になるに決まっている。すぐにお家の人のところに戻ろう、と声をかけようとする角子の思惑とは反対に、男の子は次にこう言った。
「おねえちゃん、金魚すくいのやたい、どこにあるか知ってる?いちばん、いきがいいとこ」
金魚すくい。ああ、お祭りの定番だ。金魚すくいであれば夏祭り会場に3、4箇所はあったはず。何ならすぐそこに人が並んで賑わう 金魚すくい屋台がある。
「え。ええっと……金魚すくいだったら、そこにも」
目の前にある金魚すくいの屋台を手で示すが、ちびっ子はこてんと首を傾げて、次にさらりとこんな返しをした。
「あんなのは金魚すくいじゃないよ。ここ人通りが多いし、あの屋台は子ども向けの大きいあみを使って、きゃっち、あんど、りりーす? してるから、弱ってるんだ。ぼく、人のきょういをしらない、やせいの金魚がほしい」
子どもってなんだったろう、いやむしろ子どもだからか。角子も小さい時、こんなにいけ好かない子どもだったかな……いえ、角子はまだ九歳なので十二分に子どもなのだけど、それにしても今時の年下って、と表情が崩れてしまうのが自分で分かる。ちびっ子は、角子が何も知らないことを悟ったのか、それとも自分で屋台の当たりをつけているのか、きょろきょろと周りを見回している。とても真面目に話を聞いてくれる雰囲気ではないので、角子はせめて男の子に地図の予備を渡した。……金魚すくいの屋台があるところに赤マジックで丸印をつけて。
「と、とにかくですね。屋台は、おうちの人と一緒に行かないと安全じゃないです。人も多いし、迷子になっちゃいますよ。だから花火が終わったあとに、お家の人と……」
「まいごになってるのは兄ちゃんだから、ぼくはだいじょぶ……あ、やば。ぼく、もういかなくちゃ! ばいばーい!」
「それどういう……ああもう、気をつけてくださいねー!」
元気よく走り去ってしまうちびっ子は、屋台通りの入り口側に向かい、あっという間に人混みの中に消えてしまった。こんなに人が多いと迷子だけでなく誘拐や他の犯罪にも巻き込まれないか大変心配だが、深追いしてその他大勢の安全を損なうわけにはいかない。
ただ、ちびっ子の言葉の真相は案外すぐに角子の元へと息を切らして、カランコロンと駆けてきた。学校がある時期ならいざ知らず、角子が夏休みに彼と顔を合わせたのは初めてのことだった。……そう言われると、髪や顔の形が何となくそう見えなくもない。
「飛田さん!はぁ、はあぁ……なぎさ、ああ、えっと、弟見てない?」
「おや、てるみどのではありませんか」
やってきたのは、同じ学校に通っている
彼は臙脂色の甚平に赤い鼻緒の下駄を履いていた。頭には戦隊物のお面をつけているし、腕にこれでもかと食べ物やオモチャの入ったビニール袋を提げている。とんでもなくお祭りに浮かれている。これは走りにくいのも、安全を損なっているのも納得。彼はようやく息を整え、豊かな表情筋をこれでもかと困っている形にしながら話を続ける。
「ぼくの弟、ぼくと身長同じくらいで、服はじんべいで、青っぽくて、なんていうか、生意気な感じ、だと思うんだけど。このあたりで声が聞こえ……たような気がする、んだよね。飛田さん、見なかった?」
何となく声については断定しているような気がするのは気のせいなのか。彼が敢えて曖昧な言い方をしているような妙な違和感があるものの、そんなこと角子が聞いても仕方ないので協力することにした。何より先ほどのちびっ子、迷子になってるのは兄ちゃんだと言っていたし、この大きな迷子――実は身長は角子の方が高い。照美殿はクラスでもかなり背が低いのである。つまり彼は弟より身長が低いのかもしれないのだ。――を家族の元に送り届けるのも安全委員会の仕事とみた。
「生意気かは分かりませんけど、同じような感じの、先ほど金魚すくいの屋台を探している子には会いましたよ。向こうの方に走っていきました」
「ああ多分それだ。弟、金魚すくいにしか興味ないんだ。……はあ。金魚すくいの屋台なんてそこにもあるのに何で他のところに行っちゃうんだろう」
「いきがいいのじゃないと、いやって言ってましたね」
「あいつ、金魚食べる気か……?」
生気の抜けた顔と低い声でぼそっと彼が呟くので、角子もドン引きだ。角子の反応に気づいて彼は、どうしたの、なんて不思議そうないつもの様子に戻った。今のは何だったのか。いやいや、まずもってなぜ食べる発想になった。照美殿、弟のことを何だと思ってるんだい。
気になったけど聞くのはやめておいた。彼は頭のお面と腕にかけた袋の位置を走りやすいように直していたから追いかけるつもりだ。角子が引き留めたら悪い。せめて安全のために荷物を半分持って一緒に追いかけても良かったのだけど、普段の様子を考えるとそれをいいよと認める彼でもないと思う。彼は面倒見の良さも相まって1人で何でもやってしまうのだ。
「飛田さん、弟のこと教えてくれてありがとう。たすかったよ」
「いえ。てるみどの、弟さんの安全はまかせましたよ!」
「うん。弟と、あと金魚の命は守るよ。お兄ちゃんだからね。じゃあ飛田さん、またね!」
「お気をつけてー! ご安全にー!」
さりげなく金魚の命は彼の中でまだ危ういもののままらしいことを口にして、彼は荷物をガッシャガッシャと揺らしながらバタバタ忙しなく人混みの中へ駆けていった。あの様子だと袋の中身は無事では済んでないだろうけど、人の安全には関わらないと踏んで特に気にはしないことにした。
それに、角子にはまだにもやるべきことがある。そう、安全委員会はまだまだ安全のためのポスター配りの途中。声掛け以外にもやらなければいけない仕事が残っている。角子は次にお祭りの中心へ向かって歩き始めた。
「んっしょ、よし! ここの電柱にも貼りました! あとは、あっちの屋台通りと、救護テントですね!」
ピッと伸ばして電柱に両面テープで貼ったポスターに満足しつつ、足場を貸してくれる屋台にお礼とポスターを配っていく。いやはや、町の人のサポートあっての大々的な安全の呼びかけは効果はさておき良いもので、周りの関心の向き方が普段の活動と雲泥というか月とすっぽんというか。
こう、チラッ、と見てもらえる。凄い! 凄いぞ、お祭り効果!
角子は次に呼びかけのために救護テントにやってきた。毎年ハメを外した大人たちが怪我をして病院に担ぎ込まれることを受けて、去年からだったか本物のお医者様がここで待機するようになったとか。全く、安全に無頓着な大人たちは困ったものだ。安全こそ人生で最も気に留めるべきものだというのに。
「こんにちは、安全委員会で――」
「だから少し休ませて欲しいって言っただけじゃない!」
「ええ。ですから、特にお怪我がないようなので、休むだけであれば休憩所の方でご休憩いただきたいのです。道でしたら案内致しますよ」
おや。何か揉めてる。テントの奥の方で白衣を着た大人二人が、ギャンギャン大きな声を出す相手に何やら説得している様子だ。声を荒げているのは何やら身なりの良さそうな夫妻で、主にというかほとんど奥様の方がヒステリックにいろいろ訴えている。もっともそれは小学生の角子が聞いていても言いがかりに近いような内容だった。
「あんな汚い休憩所でなんて休めないわよ! 子どもが走り回っていて危ないし、うるさくて話にならない!」
「一旦落ち着いてください。大変申し訳ありませんが、我々もいつ怪我をした方が来てもいいように設備を整えておく義務があります。ですので……」
「あなたそれでも医者なの!? 私は妊娠してるのに、お腹の子まで危険に晒していいって言うの!? ほんと、医者になるような女ってろくでもないわね!」
わあ、すごい言い訳だ。どう考えてもお医者様の方が真っ当なことを言っている風に見えるのに譲らない。どうしよう、ここのテントにもポスターの掲示を頼みたいのに、あれじゃお医者様たちに声をかけるのは難しそう。
奥様の方は顔に血が上るほど興奮して叫んでいて、これはもう夕方のカラスの方がまだ大人しいくらい。なので、角子はこの奥様のことはあまり得意ではないかもしれない。ああいう、怒っている人は視野が狭くて大変に危険だ。安全を損なっている。
「おいガキ。そこ邪魔」
角子が仕方なく入口で待っていると、横から声をかけられた。向くとなんとまあ身長の高い男の子。角子が見上げるくらい高い。小学六年生、いえ、もっと上の学年? いや、というか安全委員長として来ているのに邪魔とは何事。
ああそうだ角子も祖父母から教わった、灰汁色って言う。その少年は灰汁色の短い髪で、目つきの悪い白目がちな目は赤紫色の瞳がちょんと飾られてる。服装は白のワイシャツにベージュのジーンズ。色違いのりんご飴を三つも片手に持って屋台で飼った食べ物の袋もたくさん腕に提げている、なんてアンバランスなんだろう。安全を損なってしまう……と思ったが、もう片方の手はギプスで固定されてる。もう一度顔をよく見たら顔の右側も包帯で覆われている。この人こそ立派に怪我人だ。
「角子はジャマではありません。安全委員会の安全
「は? 安全委員……あぁ、町内会と組んでる小学校の体験学習か。……親父ィ! 客!」
少年の低いガラガラ声がテントの奥まで通り抜けた。夫妻の相手をしてた大人の男の人が驚いた様子で振り返り「タスク、客じゃなくお客様! あと、お父さんだ!」と言い返した。少年は非常に面倒臭そうに大きな溜め息を吐いて、りんご飴を一口噛み砕きながらテントの中に入っていく。こんな態度だが一応お医者様のご子息らしい。
「まあ、なんて野蛮な子どもなの!? 仕事にかまけてろくな教育してないから愛情不足であんな子に――」
「おいオバサン、うるせえんだよ。こんなとこにいちゃもんつけるほど暇なら何しにきた? ってか祭りの会場まで来てガキが走ってるとか汚ねぇとか当たり前のこと言ってんなよ、文句あるなら来んな。家から花火見ろ。騒ぐな。邪魔だ。帰れ」
「まあお行儀の悪い! 愛されていないから大人に失礼な口を利けるんだわ!」
「そうだな。こんなに怪我をしているのも、どうせ不良と喧嘩でできた傷だろう? 育ちが知れるよ……」
「そうよ! あなた達、医者でも子どもの気持ちは分からないのね! 親失格だわ!」
言いたい放題じゃないか。聞いてる角子まで何だかムカムカしてきた。ここは安全委員長として、一つお灸を据えるべきかもしれない。メガホンを取って角子が指摘しようとしたところで、お医者様の男の人がスッと椅子を立った。
「……ご夫妻。わたくしの息子の非礼は謝罪いたします。ですが失礼ながら、生憎と勝手な憶測で物を言われるのは、この子の親として我慢なりません。見たところお元気そうですし、もし救急の御用とあればこちらの名刺の番号までどうぞ。それでは、帰っていただいて結構です。お大事になさってください」
男のお医者様が差し出した名刺は受け取らず、椅子を倒す勢いで立ち上がった奥様が、ずかずか早足で出ていく。ついでに角子の方を汚い物を見る目で睨んでいた。旦那さんも無表情でそれの後に続いて出て行った。低い声で、低俗だ、汚らわしい、とぶつぶつ呟きながら。
いやはや、嵐のような夫妻だった、とテントの奥に向き直った瞬間に少年が女のお医者様から思い切り頭に拳骨を食らわされるのが見えた。あれは痛そう。ああいうのも安全性を損なう事例として覚えておこうかな。
「痛ェなおい! なにすんだお袋!」
「仮にも患者様に向かってなんて口利いてるの。あーあ、ほんとよくできたかわいくない息子だこと。本格的に誰に似ちゃったかなァ」
「間違いなくアンタの遺伝だろ元ヤンババ――痛ェ! 事実だろうが! 家庭内暴力で一一〇番するぞ!」
「せめてただのババァにしなさい! しつけの一環を家庭内暴力にいちいち数えるなんて警察のご迷惑になるでしょう!」
「二人とも。お客様の前でみっともない喧嘩はやめなさい」
至って冷静に父親に窘められて、少年と母親は「あ」と角子を見てシュンと肩を落とした。角子ショック。少年にすら忘れられていたらしい。
こちらにやってきた男のお医者様は膝をついて角子を目を合わせてくれた。近くまで来て初めてこの男の人もかなり大きな体をしているのが分かる。医者と言うよりテレビで見るような柔道の選手くらいがっしりしてた。大きな体と優しい顔が何だかミスマッチだ。
「ごめんね待たせてしまって。町内会から話は聞いているよ、安全委員会のポスターを持ってきたんだろう?」
「はい! 安全委員会、委員長の飛田角子です! ポスターの掲示をよろしくお願いします!」
「はい、確かに預かったよ。お祭りの安全のために頑張ってくれてありがとうね」
ポスターをその場で見やすい位置に貼ってもらいながら、お医者様に安全を任せてもらえて角子も誇らしい。腰に手を当て胸を張って大きな声で返事すると、「元気いっぱいで素敵ね」と女のお医者様も笑ってくれた。なんと優しいお医者様夫婦、あの少年がああなる理由が本格的に分からなくなりそうだった。
「飛田……あ。テメェ、私立小のガキか」
「おや! 角子のことをご存じでしたか!」
「ああ。安全安全ってやたらうるさいキモいクソガキがいるって」
「それは、わるぐちではありませんか!? 角子が安全にうるさいのはその通りですが、角子はキモくもクソガキでもありませんよ!
「何一つ間違ってないだろ」
「なっ、失れいです! とっても失れいで、人の心の安全をとってもおびやかしていますよ!」
言ってからハッと角子は冷静になった。いけない、いけない。
「うちのタスクがごめんなさいね。お詫びと言っては何だけど、チョコバナナ1本どうぞ」
「ババァ何勝手に渡してんだよ!」
「あのねェ。アンタりんご飴だって三本も食べるのにチョコバナナ、たい焼き、チュロスって、育ち盛りなのはいいけど栄養バランス考えなさい。糖分どれだけ摂るつもりなの? また虫歯になってピーピー泣きながらお父さんに歯医者まで担がれたいの?」
何と情けない光景でしょう。角子より大きな少年が泣いて、父親に担がれながら歯医者さんに向かう姿を想像すると、何だか可哀想な気持ちになってきた。角子はしっかり歯磨きをするとしよう。少年が言葉に詰まり心から嫌そうな顔をするので、お医者様たちは眉を下げていた。
「ほらね。だから角子ちゃん、気にしないで食べちゃって! タスクのおくちの安全を守るためにも、ね?」
なるほど。女のお医者様、角子のツボをよく分かっている。この人、とっても頭がいい人に違いない。安全のためと言われると角子は確かに遠慮せず貰っていいように思えて、彼には悪いかもしれませんが安全のための活動になる。角子は、すっかりお医者様に乗せられていた。こういう賢い大人を見習うべきなんだろう、角子は。
「はい、それではありがたく、いただきます! 息子さんのおくちの安全のために!」
角子は差し出されたチョコバナナの中から、緑とオレンジのチョコレートがかかったチョコバナナを選んだ。あっ、と少年が嫌そうな顔をしたのはそれが1本しかなかったから。実は角子も屋台で見かけて少し気になってた、チョコメロンバナナ。テントの椅子を貸してもらって、さっそく一口。
……仄かにメロンのような風味もする、大体チョコレートのチョコバナナ。生ぬるいバナナとメロンで何となく南国気分。よく噛んで食べていると横に椅子を持ってきた少年がドカリと座って「なあ、それうまい? 味は?」と興味深々に尋ねられる。「ちょっとだけ南国味です」と正直に答えた。彼は角子の感想に、へぇ、と気のない返事をしつつ、やっぱり物欲しそうにしながらりんご飴をポリポリ齧っていた。
「……テメェも大変だよなァ」
「んん? 何がですか?」
「何でもねェよ。委員会、頑張れよ」
「一体どういう風の吹き回しですか!?」
「普通に応援されて何が不満なんだよテメェ!?」
チョコバナナをごちそうになって、すっかりお腹も満たされた角子は次の呼びかけ兼ポスター貼りのためにまた出発した。なお、出発間際に少年から何故かあれもこれもと屋台のお菓子を渡されたので、彼のお口の安全のために少し空きができたリュックに仕舞っておいた。
「安全委員会です!! ポスターの掲示をよろしくおねがいします!!」
「はいよ! ご苦労! 角子ちゃん、お駄賃にイカ焼き食べるかい?」
「えへへ、今はまだおシゴト中なので、あとで買いに来ます」
「それなら一番大きいイカを角子ちゃんに焼いてやろう!」
「おじちゃん!! あとで!! あとで買いに来ます!!」
最後のポスターを屋台の人に渡してポスター配りは終わり。隣の家のおじちゃんがやってるイカ焼き屋台は近くに酒飲みの大人達が陣取ってカップ酒を開けているからか、あまり客足もない。いやはや角子、こんなお祭りの端までえらい。お仕事が1つ終わった。
あとは安全委員会として声掛けと、非行少年の通報のお仕事だけ。それとなく見回りをしながら、ぐるっと会場を回ってまた警備担当のテントに戻ったら委員会の仕事はおしまい。
それにしてもここまで歩いて先生たちに一人も会わないなんて、どういうことだろう。まさか角子に安全の全てを担うようにという暗黙の了解!? それは小学生の角子にはあまりに荷が重い。あとで会ったらどうしてなのか聞いてみよう。
夏祭り会場は小学校通りのある住宅街寄りの町の通りを何本か貸し切って開催している。花火を打ち上げるのは少し離れたところにある河川敷。花火大会の開会時刻が迫り、一番広くて見やすいお祭り会場の通りへ人が移動し始めていた。だから、こんな端も端、花火の欠片も見えないような場所は危険の溜まり場は角子が安全のために見回るべき場所。
「ほらお坊ちゃん、金。寄越せよ。持ってんだろ?」
「も、……もって、ないです。ぼく、おかねは……」
「さっき屋台で札出したでしょ? 見てたんだよね。大人しく財布を出すなら痛い目には合わせないであげるけど」
そこで角子は見たんだ。通りの端のちょっとした路地。明るい時間なら学校までの近道にする人もいるだろう路地で、小さな男の子が高校生くらいの大きな人たちに囲まれている。人生ではじめて見た、これはカツアゲだ。まさかお祭りではしゃいで本当にこんなことをする人が出るなんて。
とりあえず、警備テントへ連絡を……と携帯を操作していると、ぬっと角子の前に影が。あっと声を出すより早く、角子は首根っこを掴まれて路地の奥に連れ込まれてしまった。おお、教科書で習った絶対絶命とはこういうことを言うのかも。危険な状況なのに、角子はちょっとだけワクワクしていました。
角子から携帯を取り上げた高校生たちは下品にニヤニヤ笑って、今度は角子のリュックも取ろうとしたので背中側が壁になるようにして、必死に荷物を守る。おばあちゃんからもらった大事なお小遣いと、少年からもらった屋台のおやつが入ってるんだから。
ちらっと見えた小さな男の子は、すっかりぎゅっと目を瞑って怯えているけれど、角子が壁に背中を当てているのを見て真似しているみたいで、多分、壁に当てて隠しているズボンのポケットに財布が入っているんだ。そのポケットのある方を壁に当てて、取られないようにしている。
「……あ」
あわや人生初カツアゲ寸前の角子、ここで改心のひらめき。そうだ、そうだった。いいことを思い出した。ぎゅーっと首を縮めて提げていたメガホンに口をつける。息を吸って、叫ぶことは一つ。
「いやぁああああ!!! かじだあぁ!!! かぁじだああぁ!!!」
これぞ、ざ、おばあちゃんの入れ知恵。助けてーとか、襲われるーよりも効果的な、なぜ鶴なのかは謎な鶴の一声、火事だ。怖い目に遭ったら火事だーと叫ぶのが一番いいって言ってた。みんな野次馬したくてこっちに来るからって。高校生たちは今度は慌てて、叫ぶ角子のことをグーで叩こうとした。
「おいコラァ!! 悪ガキども!! 何やってる!!」
「げっ、人来た。逃げるぞ!」
しかし間一髪、火事だー作戦は大成功……? それにしては少し不自然だけれど、とにかく、屋台をやっていたお隣さんのおじちゃんが駆けつける。どっすんどっすんと巨漢が近づいてくるので、高校生たちはすぐに走って逃げていった。鼻息荒く赤い顔で、普段の運動不足を体現するおじちゃん。いやあ、もう走れないわ、とすぐにカラッとした笑顔になる。
「おじちゃん、ありがとうございます!! それにしても、耳がわるいのに角子のこえがきこえたんですか!?」
「がはは! なぁんも聞こえないね! そこのちっこいのが声をかけてくれなきゃ、何にも気づかなかったわ!」
ああ、どうりで。不自然の原因はそれだ。屋台をやってるお隣のおじちゃんは耳が遠くて、近くにいても声を張らないと聞こえない。離れたところの角子がメガホンで叫んだくらいじゃ、聞こえるわけがないのだ。
おじちゃんが振り返る先、路地の入口のところから、何とも目が綺麗な青色の少年がニッと笑って覗き込んでいる。彼がおじちゃんに声をかけてくれたみたい。わざわざ耳の悪いおじちゃんを選んで声をかけなくても……というのは少し贅沢かもしれない。
「そっちの坊主は怪我してないかい!」
「ぁ……ぁ、えと、あの……だ、だいじょうぶ……」
「怪我してないそうです!!」
「おお! そうかいそうかい!」
おじちゃんは満足そうに、がはは、と笑うとさっさと路地から出ていった。おじちゃんが避けてくれないことには、角子と男の子も出られないから、助かると言えば助かる。行きましょう、と角子は男の子の手を引いて路地から出た。そう長い時間いたわけではないのに、何だかお祭りの通りが一層眩しいような気がした。
「ぁ、あの、あ……あり、あ、りが、とう……ござい、ます……」
小さな男の子は、くるくるの焦げ茶の天然パーマといった感じの髪で身なりは何となく、いや、確実に高級品で固められている。あのお洋服のリボンのロゴ、角子でもテレビで見たことがある超有名なブランドのものじゃないか。確か、お洋服1着で高級メロンを何箱も箱買いできるくらいのところだ。これは、カツアゲされそうになったのも頷ける。こんなオシャレな格好の子どもを一人で歩かせたらいけない、ご両親。
これまた絶対に高い革靴の先を地面にゴシゴシ擦って、……ああ、靴に傷がついたりしないか角子がヒヤヒヤする。男の子はリボンの端を摘み、視線をおろおろとさせてから、やっと下から覗き込む形で角子を見た。ウサギみたいな、少し不気味な真っ赤な目だった。
「いえ、角子は何もしてませんよ。それより、お金、とられてませんか?」
「あ。あ、だ、だ、だいじょうぶ、です……」
壁側になって守られていたポケットから出てきたのは、財布、というかカードケースのようなもの。これまた高いブランドのロゴが入っている。にへ、と無害そうに笑っているが本当、そういうの容易く人に見せるの良くない。カモってこういうことを言う。これも町の安全を守る活動のために覚えておこう、注意事項の一つに書き加えた方がいいくらいだ。
「それで? 君、お家の人は? ついでにこの猫の飼い主知らない?」
「なぁーご……」
「ぴゃっ!? ね、ねこ……!?」
横から口を割って、というかさっきからずっとそこにいた中学生の――ひょっとすると救護テントの少年と同じくらいの歳かもしれない――少年がにこやかに言った。彼は晴れ空のような青の瞳を細めながら大きな猫を肩に乗せており、猫の爪がガッシリ食い込んで「あいたたた」と苦痛を訴えていた。
少年は茶髪で、少し地味な服装。良くも悪くも一般家庭というような見た目で、本当、綺麗過ぎる瞳と肩にしょった猫以外は何の特別感もないどこにでもいそうな少年だった。カツアゲから助けてくれた相手でも、肩に猫が乗っていなければ何も印象に残らないだろうと思った。
背負われた猫は白い長毛の猫で、明らかに野良猫には見えない。赤い鈴付きの首輪も巻かれている。これは何とも、高級な飼い猫ちゃん。よく大切にされた猫ちゃんに違いない……けれど、この少年の猫にしてはあまりに綺麗すぎた。
「ね、ねこは、し、しらない、です。ぼ、ボク、ともだち、と金魚すくいのところで、やくそく、してて……でも、さ、さっきの人たちに、お、おいかけられて、は、はしってるうちに、みち、わからなくっ、なって……!」
何という悪の高校生。角子の安全ブラックリストに入れたいくらいだけど、人相の特定ができないので難しい。うーん残念。話ながら小さな男の子はひくひくと泣いてしまい、両手でカードケースを握った。それ早くポケットに仕舞ったほうが、っていつのタイミングで言えばいいのか角子はすっかり見失ってしまった。
「そっか。じゃあ、一回お医者さんのテントに行って、そこから迷子センターに行こう! お家の人、すぐに来てくれるよ!」
「ぼ、ボク、けがしてない……」
「あ、ううん。僕が地図読めないから知り合いに道を聞こうと思って。顔は怖いけど面倒見いい友達なんだ、だから大丈夫だよ! ヨシタカおにーちゃんにまかせなさーい!」
と、胸を張ってぽんと叩くものだから、少年の肩に乗っていた猫が地面に降り立った。そのままどこかに走って行ってしまうかと思ったが、そんなこともなく角子の足元にいる。この猫ちゃんは一体どうしたら。カオスだ。多分今日の活動の中で、今が一番カオスでアドリブ抜群の場面だ。
「そうそう、安全委員さんにはその猫を任せたいんだよね。さっきのおじさんのやってるイカ焼き屋さんのところで見つけたんだ。ほら、猫ってイカは食べられないっていうから、イカ焼き屋さんの側にいるのは危ないと思って」
「なるほど。迷子の猫ちゃんなのですね。でしたら、角子が迷い猫を引き受けましょう! 安全委員会にお任せください!ですので、二人はどうぞご安全にお祭りをたのしんでもらえますよう、おねがいします!」
「あはは、よかった。助かるよ。僕、猫は流石にどこにつれていけばいいか分からなくて困ってたんだ」
ああ、勢いで承諾してしまった。言ってから少し困りつつ、少年と小さな男の子が手を繋いで歩いていくのを見送る。少年は空いた手を大きく振って、小さな男の子は角子の方に首だけでお辞儀をしていた。
「にゃあご」
「あ……猫ちゃん!待ってください!」
結局、猫と一人がお祭りの通りに残された。猫ちゃんが角子を見て、どこかに歩いていく。逃げてしまっては飼い主さがしができない! と思ったけど、そもそも飼い主さがしなんてどうしたら? もうすぐ花火大会が始まるから、人もかなり移動していてとても呼び止めて聞ける感じではなかった。猫ちゃんがあんまり迷いなく歩いていくから、角子はほとんど連れて行かれる感じでふらふらっとお祭りの入口の方へと戻ってくる形になった。
入口は入口の方でも警備テントはもう通り過ぎていた。猫ちゃんを追って辿りついたのは見晴らしの良さそうな小さな公園。猫ちゃんは何にも考えてなさそうにそこのベンチに座った。
『――ただいまより、花火大会を開会します』
「あ。花火……」
と、放送からそんなに間を置かずに花火が上がる。ひゅるる、どん! と大きな音を立てて何発も空に明るい光が飛び散って消える。この公園は周りの建物の遮蔽物が少なくて、とても綺麗に光る花火でいっぱいの空が見える。
「猫ちゃん、これを角子に見せたかったんですか?」
猫ちゃんは何も答えなかった。……それに角子は、あまり花火が得意ではなくて。猫ちゃんの方も空を見ているようにも、毛繕いに夢中なようにも見えた。
どん、どん、と花火が立て続けに上がる。せっかくなので、角子はリュックの中のお菓子を食べることにした。たい焼きもチュロスもすっかり潰れて冷えてしまっていたけど、でも委員会を頑張った後の甘味は何だか無性においしく思えた。これは、お腹いっぱいでイカ焼きが食べられないかもしれない。
三十分くらいで花火大会が終わった。閉会アナウンスがあると猫ちゃんは見計らったように、ぽんとベンチを降りて、角子が止めるよりもずっと速く横断歩道の方く飛び出してしまった。ああ猫ちゃんが安全を損なってしまう! というか飼い主さんは!? 追いかけようにもちょうど電気のカッコウが赤信号に切り替わったところだった。
「あ、パンプキンさん……! お、お祭り会場に、いた、んですか?」
「ふなぁん」
「パンプキンさんも一緒に花火みたら良かったのに。キャシー、ブラシとオヤツ持ってきてたんだぞ」
道路を渡り終わった猫ちゃんの進行方向から、姉弟のような男女が歩いてきた。ぶつかるかと思って慌てたのは角子だけで、女の人が屈んで慣れた様子で猫ちゃんを抱きかかえてしまった。男の子も猫ちゃんを撫でていて、猫ちゃんは何だか満足そうにしている。あの人たちが飼い主さん、でいいのかな?
「猫ちゃーん! 帰り道も、ご安全に、ですよー!」
メガホンを手に猫ちゃんに叫ぶ。あの猫ちゃん頭が良さそうだから、いっそ交通安全のことも教えてみればよかった……猫界の広告塔に違いないのに。
姉弟のような人たちは道路向かいからメガホンで叫んだ角子を変なものを見る目で見てから「パンプキンさん、お祭りで、何かして、しまったのでしょうか?」「さあ?お利口だし、悪いことしないと思うけど……」と足早に離れていきました。うーん、あれならとても安全に帰れそう。少なくとも1匹で走って行くよりは、ずっと安全だ。ああ良かった。
猫ちゃんの帰宅も見送った角子は、遂にお仕事が全部終わった。ホッとして、くるりと警備テントへと走って向かう。花火大会が終わる前に戻る予定だっただけに、きっと大人も心配しているに違いなかった。
こうして角子は、立派な安全委員長としてのお勤めを果たしたのだった――。
「……それで、先生たちもそろって、角子のことわすれて、テントでお酒をのんでたんです」
翌日。家に帰ったその日は時間が遅かったこともあってすぐに寝てしまったので、朝起きるなり角子はおばあちゃんにもお祭りの話をしていました。
朝ごはんは、隣のおじちゃんの屋台から買ったとても大きなイカ焼き。何だか生っぽかったので、おばあちゃんが焼き直してくれた。よく焼けたあつあつのイカ焼きをフォークで刺して頬張りながら、角子は昨日のことを事細かに話した。
おばあちゃんは朝ごはんを食べる角子を見ながら、うんうん頷いて話を聞いてくれる。角子の安全委員会の話を真面目に聞いて、それなりに同意してくれる祖父母のことが、角子は結構好きだ。
「若いのなんて、そんなものさ。お酒が入ったり、お祭りみたいな特別な場所だと人はそうなるようにできてるからね」
「そうなんですか? うーむ、安全をそこなっています。良くないです」
「それはそうだけど、そうは言っても大人になるとどうしてもねぇ」
夏祭りの委員会活動の思い出は、とても勉強になると同時に安全じゃない、危険だと思うがいくつもあった。安全委員会として見逃してはいけないものだったと思う。だから、あの思い出はこれからの安全委員会をもっと良くするために使わないともったいない!
角子は町の安全を守るために、できることを全部したい。安全のために角子が危険になってしまうのは、ちょっと嫌だけど……でも、それで安全になるなら。角子が安全を守れるなら、それは、きっと角子がするべきことなんだと思う。
「まあ角子は生真面目さんだから、そんな大人にはならないさ。そういう人たちには、酒は飲んでも飲まれるな、と言ってあげなさい」
「前も教わった、反面教師、ですね。うん、委員会の感想文に書こうと思います!」
「ふふ、そうしてあげなさい。先生たちもちょっとは反省するかもしれないよ」
「はい、何もしないよりはずっといいですよね!」
今日は、そして明日は、その先も、もっとたくさんの安全が守れるように。町がもっと安全になるように。
やっぱり角子は安全委員会が大好きで、町の安全を守るのが大好きだから、みんなが安全に過ごすために角子も安全のことをたくさん考えていたいんだ。
「それでは今日も1日、ご安全に!」
END
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