大学生にはなれたけれども

天伊あめ

第1話

 大学に入学してから早1ヶ月。私は順調にぼっちになりつつあった。


 なぜこうなったのか。

 別に人に声をかけるのは苦手ではない。というかこの1ヶ月間でそれはずいぶん得意になったものだと感じている。


 私は人に声をかけまくった。

 初手で失敗したため履修の仮登録は一人で行うはめになったが、最初の講義すべてで隣に座った人に声をかけ、インスタを交換した。そのため、どの講義も最低一人は課題内容を聞ける人間がいる。


 が、現在は週3でお昼ごはんを一人食べている。なぜだ。


 たしか最初の一週間は友達(私は同年代の同性はだいたい友達だと思ってる)と食べていたはずなのだ。


 ……少人数授業はともかく、大人数授業で友達と待ちあわせとかいらないよな、と思ってたからかもしれない。

 約束なんかしなくてもまた会える。それか、来週は来週、新しく友達になった子と食べればいいやという甘い考えのせい。

 2限終わって家に帰る子も多いのだと、2週間目に知った。


 別に一人行動が苦手というわけではない。最初こそ緊張したが、すでに一人学食だって余裕だ。正直食べながら会話するのは苦手だし、もともと一人でいるのが好きなのだ。


 でも、さすがに週3ぼっちはきついかった。しかも、下手すれば週4ぼっちになるかもしれない状況だ。


 もっと人と喋りたい。

 私は一人が好きで、一人の時間がないと駄目になるタイプの人間だが、それと同じくらい人が好きで、人と一緒にわいわいするのが好きなのだ。


 しかし、前述の通り、私は食べながら会話するのが下手というコンプレックスみたいなのがあるし、周りの子はもうグループで固まり始めているのかれない。

 そう考えると声をかけるのも躊躇ってしまう。


 先日、とりあえず2限で隣になった子に声をかけてお昼ごはんをご一緒させてもらおうという心づもりで教室に入った。愕然とした。

 まだ4月なのに、だいぶ空席が目立っていた。こんなに席が選び放題な中で「隣りに座っていいですか?」と聞くにはかなりの精神力が必要だった。私にはそんなのはなかった。


 最近はけっこう昼休みの時間が苦痛だ。連休明けを考えるだけでも吐き気がする。高校生に戻りたい。

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大学生にはなれたけれども 天伊あめ @ameriamamori

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