第9話 摺鉢山攻略 その二

ガスと防毒マスク越しでよく見えない敵の方へ手榴弾を投げる。当たったのかはよくわからない。


手榴弾は残り一個。小銃の徹甲弾マガジンはさっき装填したものを含めてあと二つ。ロケットランチャーはニカイドウと別れる前の戦闘でどこかに行ってしまった。榴弾砲の弾丸は背嚢にあと十四発入っている。

これだけで摺鉢山を落とすには大分心許ない。


そんなことを思っていると正面から一体のドロイドがこっちへ向かってくる。すぐに小銃で応戦しこれを倒す。しかし弾倉の弾が無くなった。リロードする。これで予備の弾倉は無くなった。


左右からは味方の悲鳴と爆発音、それから罵声が聞こえる。このままここで足止めを食らっていては摺鉢山は数日かかったって落とせないだろう。

行くしか無いか。


そう思い黄色いガスの中ブーストを噴射。前方に数メートル移動する。摺鉢山の標高は172mで、日本本土の山と比べればどうってことはないだろう。

だが一人で登山をするわけには行かない。まだどれだけの敵が潜んでいるか分からないのだ。味方と行くのが最善だ。まずは味方を助けるか。


さっき爆発音のした右翼の方へ走り出す。まだ銃声が聞こえるからきっと仲間は無事だ。

そう安心してると、黄色いガスの中からドロイドが突然姿を表した。勢い良く前足を振り下ろす。


「クソっ、危ない!」


咄嗟に左へ転がり、振り下ろされた前足を避ける。

そのまま横になりながら俺を殺そうとしたドロイドへ左腕を向け、榴弾砲を発射。ドロイドを粉砕した。

すぐに起き上がり、また仲間の方へ向かう。


目の前に防毒マスクを着け、息をきらして膝を着いている兵士がいた。手を取り、話しかける。


「立てるか?俺はG分隊のトキワだ。君の所属は?」


「ああ、ありがとう。俺はタナカだ。所属はA分隊。」


「A分隊か。じゃあ中隊長は?」


「多分、近くにいる。」


まだハアハアと言いながらも俺の質問に答える。

周囲ではまだ銃声と爆発音が続いていた


「よし、ありがとう。俺一人じゃ心許ないから一緒に手伝ってくれ。」


「手伝うって、何をだ?」


「中隊長を探して、部隊をすぐに立て直してもらう。そこからまとまって摺鉢山を落とす。」


「そういうことか。分かった。」


そう言って彼は俺の手を振りほどき、立ち上がった。


「じゃあ、俺が前に出るから、援護してくれ。」


「お前そんなに強いのか?」


「...まあね。」


「なんだよ今の間は。」


疑わしい目でこちらを見る。まあ今の俺なら何とかなるだろう。左腕の榴弾砲を装填しながらタナカと近くの銃声の方へ向かう。


車輛の残骸の裏で中隊長と思しき人物と他数名の歩兵が正面へ小銃を撃っていた。すぐに中隊長達が撃っていた方向へ走り出す。


「誰だお前は!死にたいのか!」


中隊長が俺に向かって怒鳴る。当然だろう。味方の射線の通る敵の居場所へと突っ込んでいくのだから。


「すみません!中隊長!」


そう言いながら敵の方へ最後の手榴弾を投げ込む。ガスの中に敵の姿が確認出来ると、ブーストで接近しながら小銃を撃つ。まずは一体。そのまま弾切れになった小銃を下げ、今度は左に見えたドロイドの下へブーストで体当たり。素早く右腕の義手から繰り出される強力な拳を叩き込む。敵が動かなくなる。


次は足元の土が盛り上がった。すかさずブーストジャンプで真上へ飛び上がる。飛び上がった地面からドロイドの足が素早く突き出された。危なかった。

そのまま後ろに着地し、盛り上がっている土へ榴弾砲を撃ち込む。土が盛り上がらなくなった。倒したらしい。


流石にさっきの戦闘はキツかった。息を切らしているので膝に手を付く。そこに中隊長達が駆け寄って来る。


「急に射線に飛び出すな!誤射するところだったぞ!」


「すみません...中隊長...」


俺は息を切らしながら口を開いた。


「だがお前のお陰で助かった。所属は?」


「G分隊のトキワケイジです。」


「トキワか、覚えておく。」


「ありがとうございます。」


タナカも俺の下に駆け寄って来た。


「お前、十分強いじゃないか!」


「でもすげーキツかった。」


「十分な活躍だって!」


タナカは目を輝かせてた。俺はそう言ってくれるのがちょっと嬉しかった。


その後中隊長に部隊をすぐに立て直し今度はまとまって攻撃を仕掛けられないかと相談するとあっさり了承してくれた。中隊長もこのままではいけないと思いながら戦っていたらしい。


その後タナカと中隊長の分隊の援護兵に小銃の徹甲弾マガジンをもらった。


今度こそ摺鉢山を確保する。

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