第8話 摺鉢山攻略 その一
ニカイドウがショットガンを構え、ブーストで勢いよくドロイドの群れに突っ込む。俺は手榴弾を投げて敵を牽制、ニカイドウに続きブーストで前に出る。
右では車輛が群れに向かって車載機銃を撃ちまくっている。他の機械化装甲歩兵も突撃を始めた。
ニカイドウはまず正面の敵に一発撃ち込んだ。敵が動かなくなる。排莢。またブーストジャンプを使って上に飛び上がり今度は左の一体に弾を撃ち込む。着地した後一旦後ろに下がって飛来したパイルをかわす。また排莢。ニカイドウは一進一退しながら前後左右の敵にバックショット弾を正確に撃ち込んでいた。
ニカイドウがブーストで俺の隣に下がって来た。
多分弾切れだ。すかさず俺は左腕の榴弾砲のトリガーを引く。正面に着弾。敵を一体粉砕した。
今度は俺の番だ。そのままブーストを駆使して群れに突っ込む。群れに向かって持っていた小銃のトリガーを引いてぶっ放した。徹甲弾がドロイドの体を貫通。そのまま動かなくなった。弾倉が空になる。リロードしようとすると、右から一体のドロイドが鋭い前足を振り下ろそうとしているのが見えた。避けるのは間に合わない。そう思って銃を捨て、勢い良く右へブーストし、敵に体当たり。そのまま押し倒して起き上がるタイミングを与えず、スーツのフルスロットルで敵を殴りつける。ドロイドの体が粉砕。
ハアハアと息を切らしていると、正面から一体のドロイドが高速で迫っていた。すると今度は後ろからショットガンの装填を終えたニカイドウが散弾を迫っていた敵に撃ち込む。
済ました顔で俺の方を見る。
「お前、銃使うより殴る方が強いんじゃねーの。」
「ちょっと危ないんでやりたくないですね。」
「よく言うよな。一体それで殺してるのに。」
いつもの口調で変わらず話す。実際殴るのはスーツのバッテリーを大きく消費するし、疲れるから俺はやりたくない。捨てた小銃を拾って新しいマガジンを挿し込んだ。榴弾砲も装填していると味方の無線が入る。
『右翼を突破したぞ!これで摺鉢山への道が開けた。摺鉢山の攻略を行う部隊は車輛について来い!』
無線を聞いたニカイドウが口を開く。
「やっとだ!急げ急げ!」
「落ち着いてくださいよ。」
味方の車輛に続こうとした瞬間、足元の土が突然盛り上がった。
とっさに叫ぶ。
「先輩!ドロイドだ!地中から出てくる!」
叫んでから後ろを見ると俺の足元だけでなく、無数の土が盛り上がりドロイドの足が見えていた。
ニカイドウがこちらへ駆け寄る。
「チッ、おいトキワ!ここは俺がやっとくから、お前は味方と摺鉢山を落としに行け!」
「俺もやります!」
「いいや、お前は行け!上官命令だぞ!」
ニカイドウに上官として命令されたのはこれが始めてだった。味方はどんどん俺達から離れ、摺鉢山に向かって行っている。俺は不安な思いでニカイドウから離れ、味方のもとへ走り出した。
「死なないでくださいよ!」
「当たり前だろ。」
そう言って別れた。まあニカイドウならここを任せても大丈夫だろう。
味方の車輛隊と歩兵とともに千鳥飛行場を押さえ、摺鉢山の近くまで来た。
また正面にドロイドの群れだ。車輛が車載機銃を撃ち始めた。周囲の歩兵隊もそれぞれ小銃やロケットランチャーに榴弾砲を発射している。硝煙で前が見えない。
煙が晴れるのを待ち、ドロイドの群れにぶっ放してやろうと小銃を構えていたが、煙が晴れても敵の姿が見えなかった。
さっきまで正面にいたはずなのに、どこに行った?
沖縄でも感じた違和感だ。こういう時のヤツらは確実に何か仕掛けてくる。
そう考え身構えていると、摺鉢山の方から何か小さな球体が低速で、かつ綺麗な曲線を描き飛来しているのが見えた。
球体がそれぞれ俺達の足元に着弾。それと同時に球体から黄色い煙のようなものが出ていた。俺はその黄色い煙について教本で見たことがあった。
大声で叫ぶ。
「毒ガスだ!マスクを着けろ!」
そう叫び、息を止めて急いで背嚢から防毒マスクを取り出し装着した。しかしマスクが間に合わずガスを吸い込んでしまった歩兵数名が泡を吹いて倒れ、動かなくなった。
俺はまだ二回目の出撃でガス攻撃を見たことがなかったが覚えていて助かった。ドロイドの使うガスの種類はサリンに近いらしい。
黄色いガスとマスク越しにもうすっかり見慣れたドロイドのシルエットが見えた。
くそったれな侵略者に俺は再び手榴弾のピンを抜いた。
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