第7話 ミートグラインダー

今日の天気は快晴だ。青い空の下での戦闘開始から数分、前線の兵士は恐怖を味わう。

そこら中を時速160キロのこぶし大のパイルが飛び交っている。敵はどこから出てくるかわからない。増援は無い。


硫黄島を守るために派遣された兵士約一万五千人は、硫黄島南の漂流木海岸に釘付けになっていた。というのも、降下した先でどの部隊もパイルの集中砲火を受けていたからだ。ドロイドは巧みに身を隠しているのかさっきから姿が確認出来ない。


空を見上げればウォーバードが次々撃墜され、時々撃墜された機体や残骸が俺達のいる砂浜に落ちてくる。


「車輛の裏に隠れて進め!何としても前進しろ!」


中隊長からの通信だ。後ろからは複数の水陸両用車が迫って来ている。俺は隠れていた車輛の残骸から身を出し、迫っていた車輛の後ろに移動する。途中パイルが頭をかすめたが当たらなかった。


水陸両用車に随伴しながら海岸を進み出す。俺の隣を移動していた名前も知らない兵士の胸にパイルが命中した。そのままビクビクと痙攣して倒れる。


海岸を抜けていないのにすでに多くの死傷者が出ている。浅瀬の方は死体から流れた血で真っ赤に染まっていた。海岸は兵士の死体や肉片、車輛の残骸がすでに無数にできていた。


あと少しで海岸を抜けられるというところで俺の前を走っていた車輛が砂浜にスタックしてしまった。前輪が空回りしている。

このままじゃ先に進めない。ジリ貧だ。

そう思っていると突然、スタックしていた車輛から耳をつんざくような鈍い金属音がなった。空回りしていた前輪も動かなくなった。多分パイルが直撃した。

ここからは自分で行けってことか、クソ。


覚悟を決めて水陸両用車の残骸から身を出す。それと同時に手持ちの煙幕手榴弾を投げる。白い煙が広がったタイミングでブーストジャンプ。残骸から一気に煙幕の中へ移動する。俺は煙幕を張れば少しでもパイルを回避できると考えていた。確証は無いが煙幕も無いよりマシだろう。

次だ。投げた手榴弾の効果が切れる前に次の煙幕手榴弾を投げる。煙の広がったところへ移動。煙幕の中でもパイルがかすむ音がする。これを二回ほど繰り返すと、艦隊からの艦砲射撃で出来た穴にたどり着いた。煙幕手榴弾はもう無い。よくやった方だ。


俺に続いていつの間にか軍曹とニカイドウ、オキタがブーストジャンプで穴に飛び込んでくる。白い煙幕を抜けてこっちに向かってきたサバルの姿も見えた。

その様子を見てつい叫んでしまう。


「サバル!早くしろ!死ぬぞ!」


「わかってるよ!」


そう言い返してサバルは穴に飛び込もうとする。

その瞬間、こぶし大のパイルがサバルの右足の膝下に直撃。サバルは右膝から下を吹き飛ばされた。そのまま穴に転げ落ちる。


「うわああああ!クソっ!」


足を吹き飛ばされたサバルが絶叫する。


「落ち着け、サバル!オキタ、足を診てやれ!」


軍曹の怒号が飛ぶ。それを聞いて分隊の救護兵であるオキタが救急キットを持ってサバルに近寄る。

なおも絶叫するサバルにオキタが口を開く。


「足を止血する。こいつを抑えてろ!」


そう言われて俺とニカイドウはサバルが動かないよう体を抑える。吹き飛ばされた足をオキタは慣れた手つきで包帯を巻き止血していく。

サバルは痛みのショックで気絶していた。


「チッ、俺とオキタはサバルを見てるから、トキワとニカイドウの二人で行って来い。他の隊と合流して、摺鉢山を確保しろ。」


「「了」」


その返事とともにニカイドウは自分の武器であるショットガンを構える。俺も小銃のコッキングレバーを引いた。


「よし、トキワ。行くぞ。訓練成果の発表会だ。」


「わかりました。」


そう言ってジャンプキットを起動。艦砲射撃の穴から出て、パイルに当たらないようにお互いジグザグに前進していった。ブーストで右へ横移動。正面にパイルが撃ち出されたのがわかった。すかさずしゃがむ。パイルが背中をかすめる。また立ち上がって、今度は左へ横移動。

また次の穴に飛び込む。ニカイドウもそれに続く。左右には何とか海岸を抜けてきた他の部隊の歩兵や車輛が前進していた。

ニカイドウが前方に指を指す。


「おい、ヤツら来やがったぞ。」


ニカイドウが指を指した先には無数のドロイドの群れがいた。俺は破片手榴弾を取り出し、ピンを抜いた。

ニカイドウはショットガンに対ドロイド用のバックショット弾を装填している。


ドロイドの群れに向かって手榴弾を投げる。

それに合わせてニカイドウはブーストで勢いよくドロイドの方へ突っ込んでいった。

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