先日のこと

バブスラ

令和5年8月号

キスを交わす。


「……」


「…何考えてるか当てよっか」


「え?」


「忘れられないんでしょ?その子のこと」


「そんなこと――」


「あるでしょ」


「……」


「出てって」


「…ごめん」


「いいから早く」


「…ありがとう」


部屋を飛び出す。

深緑のガウンを纏う貴女は、最後まで綺麗だった。


ネオンを駆ける。

間に合え!間に合え!!

見慣れた黄色のポロシャツ。

駆け寄り手を引く。


「きゃ!」

「はぁ…!はぁ…!」

「えっ…なんで」

「ごめん!俺、やっぱりお前じゃなきゃダメだ!!」

「…!ばか…」


キスを交わす。

君で潤う心と唇。

閉店間際、今の僕らに別れのワルツは似合わない。



『安いからメンターム試したけど唇荒れたから閉店間際の薬局にベビーワセリンを買いに行った話』

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