第68話・盗難イベント
まあこうなるとは考えていたが、まさかやるとは思わなかった。イベントが始まり、表通りなど歩けばさすがに大丈夫かと思ったが、仕掛けて来た。
「武器寄越せ!」
「寄生虫の癖に出し惜しみしやがって!」
集団で自分を見ると反射的に爆弾系のアイテムを投げてくる。レヴィが防御系統の盾術を使用して防ぎ、こちらはガウム含めた魔法攻撃。
「ぐはあぁぁぁ」
「なんっ!?」
「つよっ!?」
当たり前だろう?
「こっちはアクセサリーでステータス引き上げてるよ」
戦闘用に火属性などの攻撃力を上げたりしている。しかし街中で魔法攻撃とかするとは。ちなみに犯罪者として活動していた彼らは教会やホームではなく、牢屋へ直送される。
「大丈夫ですか!?」
「イベント参加者です! 一応クランやらネーム公開しますので、確認お願いします」
「はいはい」
仲間と思わせて後ろから、という手段を取る者もすでにいるらしく、前々から協力してくれるクラン関係者と確認してから行動を共にする。まずは『宝石箱』クランへ向かう。
そこは少し戦場状態であり、どうも最初の襲撃で衛兵などが動けなくなり、イベントで調子に乗っているプレイヤーがいるらしい。戦闘は続いていた。
「【紅蓮】!」
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」」
ガーネットが纏めて広範囲で焼き尽くして、プレイヤーは牢屋へ送られている中、アッシュさん達が倒し切った。
「ひと段落か」
「ええ」
「おーい」
「ノートさん! 無事ですか!?」
「それはこっちのセリフですよ!」
店は半壊している状態で黒猫が見当たらない。ガーネット達も緊急だから配信を解くか悩むが、リスナーはこのまま続けて欲しいと願う者もいる。さすがに配信見ながらプレイはできないから、盗賊側がいるとは思えない。
「とりあえず爆弾持ちが特攻をかけて、いくつかとっておきが盗られてしまいました! ごめんなさい、こちらの不手際で!」
「状況は状況だからそれはあとで、いまはどうですか?」
「ダイヤに奪われたものの確認をしてもらってます」
奪われたのは竜属性の弓、宇宙属性の両手剣、無属性の攻撃マシマシロマン両手斧、竜属性のタンク用フルアーマー、星属性の回復特化杖。そして一番は性能爆上がり、物理魔法両方の攻撃特化ブレスレットだそうだ。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ宇宙属性両手剣は俺が狙ってたのに!」
「アッシュさん落ち着いて!」
「絶対取り戻すぞ!クランメンバーは至急こっちに来られる奴を寄越せ! ハイエルフ達を黙らせるのに必要なんだ!」
戦闘系、特に引き渡しを願っていたアッシュ達は必至だ。こんなイベントは初めてで、どんな抜け穴を使われるか分からない。もしかしたらなにかしらの手段で犯罪認定から逃れて、アイテムを所有することができるかもしれない。
おそらく向こうもバカではないから、トレード機能やら何やらを使い、安全な仲間に引き渡してイベント終了後も所持する気だろうと思われるため、町中をいまプレイヤー達が全力で探している。
「黒猫は!?」
「あの子なら全力で襲撃者達を追ってる!」
◇◆◇◆◇
「早くしろ! 追手が来るぞ!」
襲撃者達【ザ・ニューワイルド】は焦りながらトレード機能を使い、襲撃に関与していない仲間にアイテムを引き渡そうとしていた。
「ダメだ! これを受け取るとレッドアイコンになりますって警告が出る!」
「ちっ! タダのトレードだと無理か!」
舌打ちを打ち、手に持つ弓を見る。弓はどちらかといえばいらないが、性能は良いのは一目見ただけで分かる。
「彼奴らこんなもの独占して!これはプレイヤー全員に分け与え、かつ最前線を行く俺達の物にするべきなのに!」
「なに言ってるんだてめえ?」
瞬間、暗闇から飛び出た影に切り裂かれた。それは黒猫であり、悲鳴を上げる襲撃者。
「ま、待て!俺は参加してないからな!」
「ちッ!」
参加していない奴は刃を向けられない。誤認扱いでペナルティが入るからだ。だが………
「ふっ!」
「なっ!?」
後ろを向いた瞬間斬りかかれば関係ない。すぐに戦闘許可が下りたのを確認して瞬殺する。
「この程度じゃステータス制限で装備もできないくせに………」
狙いはどうも自分が持つ装備も狙われているらしい。ドロップできないはずだから、倒しても意味がないが、使われているのは痺れ薬付きだったり、動きを止められる系のアイテム。
それと共におかしなことは一点ある。それは所持していたプレイヤーだ。倉庫番としてアイテム管理していた人からメールが来て、動きを止められているとき、なにかのアイテムを使われたら中身が盗られたとのこと。おそらく、それを利用して所持武器とか奪う気だ。
「装備している物も取れる?」
「それを確かめるんだよ!」
また集団で来た。今回は多いこと多いこと。
黒猫は華麗に攻撃を避け、反射するように切り刻みながらうまく立ち回る。
黒猫はプレイヤー内では高い位置にいる。だが慢心はダメだ。だけど仲間を置いて先行する気持ちを抑えられない。これはノートと自分が必死に集め、いや、自分は集めただけだ。簡単ではないのは分かるが、これはノートが頑張って作った品物だ。正当な対価無しに所持されるのは許されない。
友人の作品を気軽に扱われたら、それは友人を侮辱することだ。それは看過できない。
「来い、全員切り刻んでやる」
そう決めた黒い猫は襲撃者を逆に襲い、キル数を稼ぎ始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます