第21話・イベント期間:不穏な連中

 今日は畑の世話をしてバイトの方に力を出すかと決めた。食堂や図書館のバイトをして、そのまま釣りの方に行く。お魚をストックしておきたいからね。黒猫も釣りしてみるといって、途中で合流した。


「わんわん」


「こんちわー」


「こんにちは」


 今日はリファ達も一緒だ。さすがに雷魔法は禁止と言いつけて、グリモワールも一緒だ。しんじゅも跳びはねて、お魚を楽しみにしている。


 そして釣り仲間集まる岬へとたどり着き、共に魚を釣ることに。


「メシマグロゲット!」


「すっげーさすがスッキーさん!」


「あの人ほとんどメシマグロかクロコダイしか釣ってねえや」


「すっげー」


「ソロトップの黒猫さんに言われると照れるね。食堂に持ってく? 刺身にして食わせてくれるよ」


「いいんすか!?」


「なら俺らも酒サーモン出しますよ」


「やっべ、メメザシしか釣れてねえ」


「メメザシでも乾燥アーツ使えばいい出しで茶漬け出してくれるぞ」


 そんな感じで和やかに話していると………


「おいお前ら!」


 突然ガラの悪い連中が現れた。


「ここから出てけ、ここは俺らの狩場だぞ!」


「は? なに言ってるんだお前ら?」


「レベル一桁の癖に陣取ってるんじゃねえ!」


 そう言って急に武器を向けながら囲って来る。その様子に黒猫が無表情だが不機嫌になったのが分かる。


「おい!PKが無いからって武器を向けるなよ!」


「るっさいどけ!」


 そうしていると黒猫が俊敏に動き突き飛ばした。


「ぐはっ!?」


「………前線だけじゃなく、こんなところでバカ騒ぎして」


「知ってるのか嬢ちゃん!」


「あっ、こいつら『ザ・ワイルド』だスッキーさん!」


 そのクラン名は確か、ガチ勢の中で一番悪目立ちするクランだったな。狩場の独占、PKまがいのモンスターを引き連れて擦り付けるやり方をしたという。


 モンスタープレイヤーキラー、MPKの方は運営が仕様上取り締まるのが難しいと頭を痛めているという話だ。だが現場を捕まればGM権限で重い罰が下る。


 それ以外にもアイテムの独占とかしてるって噂だ。


「く、黒猫!? テメエがここを独占してたのか!」


「人聞きの悪いことを言うなよ! 広いんだから黙ってやる分にはあんたらのところもあるぞ!」


「るっさい!ここの魚は全部ポイントに変えるんだよ!」


「はっ!釣れなきゃ意味ねえだろ」


「バカか、こうやるんだよ!」


 そいつはそういってなにかを取り出した。あれは?


「はっ、やめろーーー!?」


「スッキーさん!」


 海へと投げたそれをスッキーさんがキャッチした瞬間、爆発した。えっ!?


「いまのなんだ!?」


「爆薬系アイテム!? 発見されたって話だけど、彼奴らんなもん投げ込んだのか!」


「スッキーさん!? 死に戻った!」


「あれはフレンドファイヤありの高火力アイテムなんだよ!」


 おいおい!街中で爆薬物使うか普通!


 黒猫が完全にお怒りでフーーーという顔で武器を構える。


「黒猫ダメだ!」


「放してノート、こいつらボコれない」


 ダメージが無いが、武器を相手に振るうことはできる。ただし刃物を振り下ろされることは暴力に繋がるため、運営対象になってしまう。


「なんだビビってるのか!? ここの魚を全部ポイントに変えるんだよ。邪魔すれば容赦しない!」


「【レッドチェーン】」


 突然、魔法陣から赤い鎖が出てきて、バカたちを捕まえた。


「なんだ!?」


「衛兵!?早いだろ!」


「こいつらついに街中でもやらかしたな」


「ガーネットさんと、もう一人は」


「『傭兵部隊』のアッシュだ。もうGMコールしているし、さっきまでのやり取りは放送されているぞ!」


 配信者達が現れ、そう宣言する。だがバカ達はそれどころではない。


「熱々熱々!」


「なんだこれ!」


「熱のスリップダメージを与えるからね。お前らように組んだ魔法だ」


「いいのかよ配信者!俺らにこんなことして、GMが黙ってないぞ!」


『それはこちらのセリフです』


 そして現れたのは衛兵と、衛兵になったGMだった。


『街中での危険物使用の現場を確認。一部プレイヤーがプレイヤーに攻撃行為をしていましたが、そちらもお話だけにさせていただきます』


 そう言って『ザ・ワイルド』が消えて、ガーネットさんとアッシュさんが消えた。


「だ、大丈夫なのか?」


「大丈夫。ガーネットもアッシュも同じことしているけど、感謝されるだけで厳重注意並び、アカウント凍結や垢バンは彼奴らだけ」


 黒猫が不機嫌が治らない。ガウムとしんじゅ、グリモワールが心配してリファが来て、ようやくだ。


「大丈夫ですか黒猫ちゃん」


「サファイヤ。ヒーラーの回復職、薬師だよノート」


「あらあら、お友達ですか?はじめまして」


「はじめまして、これは?」


「はい。釣り人のプレイヤーの皆さんすいません。たぶん、ウチの企画のせいでこんなことに」


「どういうことですか?」


 知り合いということもあり、俺が釣りプレイヤーのかわりに話をする。どうもサファイヤさんの後ろにいるのは配信者さんチームであり、釣りでのポイント稼ぎをしようとした企画があったらしい。


「たぶん、彼らのこの行為は我々トップ攻略勢の邪魔です。平原エリアの独占だけじゃなく、こんなところまできて。皆さんには申し訳ございません」


「謝らないでください。少なくても皆さんは釣り企画を立てただけでしょう?」


「そうですが」


「少なくてもどこで漏れた? ポイント稼ぎの企画を組んだけど、最終日まで内緒だったぞ」


「あっ、それはたぶんやはり別口かもしれませんよ」


 釣りスッキーさんのクラン仲間がそう告げる。メシマグロを釣り続けたスッキーさんがかなりポイント稼いだので、掲示板で話した。そちらの線もあるらしい。


 そして帰って来たスッキーさんとガーネットさんとアッシュさん。やはりメシマグロが美味しいと知って、集めに来たらしい。実に迷惑。


 この後は何事も無かったかのように過ごした。企画も最初はともかく盛り上がったらしい。目玉はメシマグロを二本釣るスッキーさんの動画だ。


 しかし『ザ・ワイルド』。今後気を付けないといけないな。

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