第24話

教室に着くと、衣百合のほかに見知らぬ人がいた。

 おそらく女性で身長は小柄で、見たところ一年生と言ったところだろうか。

 黎慈は教室の扉を開け、入って行った。

中に入ると、早速衣百合が話しかけてきた。

「お!結構早かったね」

「さっさと抜けてきたからね。で、話ってのは?大体内容は想像してるけど、、、」

「あと、そちらの方は?」

 衣百合は椅子から立ち上がり、座っている小柄な女子の紹介を始めた。

「この子は一年生の子。名前はちょっと伏せるんだけど、何やら 夢 について知っているらしくてね。それで、私に放課後連絡くれたんだ」

「は、初めまして、黎慈さん。先ほど、衣百合さんから説明は貰いました。転校生の方なんですよね?」

「ちゃんと説明してもらえたみたいだね。そうだよ、今年からこの街に来た枝先 黎慈です」

 黎慈はその女の子に挨拶をすると、近くに用意されていた椅子に座った。

衣百合も座り、真剣な表情になった。

「じゃあ、早速本題に」

 すると、女の子が話し始めた。

「昨日、夢を見たんです」

「今、目の前にいる黎慈さんと衣百合さんが出て来る夢を」

「、、、!」

 黎慈は驚嘆した。

 その表情を見て、衣百合が夢についての科学的な一般論について説明を始めた。

「そう、一般的に夢には自分が会ったことがある、見たことがある人が出てくると言われている」

 衣百合は肘を太ももに置き、頬杖をついた。

「私は生徒会とかで見るかもしれないけど、黎慈くんは違う」

「でも、実際に俺を見たのは今、この時間が初めて」

「ほ、本当になんでもないかもしれないんですけど、その夢の内容が肝心で、、、」

 一同は息を呑んだ。

「衣百合さんが、死んで、、、」

その子の目が少し潤んでいるように見えた。

「どういう内容だったか、言える?」

「はい、、、」

 その女の子は一息置いて、その夢の内容を話し始めた。

「なんだか大きい広場のような所にいたんです。まるで、候成山公園のような」

「空はなんだか異様そのものでした。赤黒く、月よりも数十倍ある何かが浮かんでいました」

「周りには形容したがい化け物に溢れかえっていました」

「その化け物に衣百合さんが体を真っ二つに、、、」

「そこに黎慈さんもいて、、、」

体が震えていた。

それに気づいた衣百合は、その女の子の背中をさすっていた。

「言ってくれてありがとね」

「い、いえ。では、失礼します」

 その女の子は教室を出て行った。

完全に足音が聞こえなくなった。

 黎慈はその夢が明らかに“あの“夢の世界であることを確証していた。

「確実に、あの夢の世界の話だ」

「でも、あの女の子はどうやって、、、」

 黎慈が思考をめぐらしていると、衣百合が話し始めた。

「黎慈くん、正夢って知ってる?」

「もちろん知ってるけど、、、まさか?」

 二人は俯いた。

「、、でも、やっぱりなんか変」

 衣百合の顔がますます気難しくなった。

「そうだな」

「いや、そうじゃなくて」

「?どう言うことだ?」

黎慈が考えていることとは違う考えを持っているらしい。

 衣百合の顔は下を向いていた。

「確かに、黎慈くんが夢に出てきたのもおかしいけど、、、」

 一息置いて、衣百合が黎慈と顔を見合わせた。

「あの子、学校内で見たことないんだよね」

「そりゃあ、一年生だし」

「私、入学式に生徒代表として出席したんだよ?一回くらい見たことあってもおかしくなくない?」

 夢と言い、この街は謎が深まるばかりである。

「言われてみれば、、、」

「しかも、入学式の出席人数は200人中200人」

 黎慈も疑問に思った。

 少し考えていると、衣百合が話し始めた。

「実はあの子、私にクラスも名前も教えてくれなかったんだよね」

「ますます怪しいな」

 衣百合は体を伸ばした。 

「まあ、今更驚かないけどね。夢の件もあるし」

「一応、景佑にも連絡しておくか」

「うん。そうした方がいいと思う」

 そう言って二人は解散した。

黎慈はすぐに景佑に連絡した。

“今大丈夫か?“

すぐに返信が来た。

“なんだ、急用か?“

“聞いておいて欲しい話があってだな“

 黎慈は話の全容を景佑に送った。

“俺ら以外に、夢の世界に、か“

 景佑も何か思うところがあるらしい。

“一応、今日行っておかないか?“

“そうだな“

“また連絡する“

 黎慈はスマホをバッグにしまい、グラウンドへ再度向かった。

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