第20話

 目を開けると、先日離脱した場所に立っていた。

景佑もそこにおり、作戦の最終確認をした。

「いいか景佑。お前は最初に扉の近くまで行くんだ。そして化け物を引き連れて行ってくれ」

「その間に黎慈が扉に入るんだな。大丈夫、ちゃんと覚えてる」

「無理に化け物を倒さなくてもいいからな。あくまで景佑は陽動だ」

「扉の中の記憶を見たら、あの場所で合流しよう」

 黎慈は公園の中にある真ん中の休憩所を指差した。

景佑は頷き、扉の近くまで2人で歩いて行った。

 2人は扉が見える場所まで来た。

 景佑は先陣を切って走っていった。

景佑は黎慈の方を見て、手を振った。

 しばらくすると、景佑の声が聞こえた。

「お前らの相手は俺だ!追ってこい」

 大量の化け物が景佑を追って行くのが見えた。

化け物が公園の外に行ったのを見計らって、黎慈は扉まで走って行った。

 景佑を追っていかなかった化け物が数匹おり、黎慈は戦闘になる事を覚悟した。

黎慈を見るなり、化け物たちは迫ってきた。

 黎慈はブラムを応用して倒すことにした。

 黎慈が持っている力は、対象物に触れるとその部分を爆発させる能力である。

力を入れれば入れるほど爆発範囲が広がっていく。

 その力を使い、化け物が黎慈の直線上になったタイミングで発動した。

 黎慈の力が化け物の体を介して連鎖するように爆発していった。

「やっぱり。この力、思った以上に汎用性があるぞ」

化け物との戦闘を終えた黎慈は、扉の方へ向かった。

 禍々しい赤い光を放つ扉の前に向かうと、謎の声が聞こえた。

『俺は、、、、、俺は!』

 黎慈は扉を開けて中に入って行った。


「お前、キモいよ?w」

 どうやら教室にいるようだった。

 目の前にいる数人の女子高校生が面と向かって言った。

その光景に違和感を感じた黎慈はその女子高校生に何か言おうとしたが、声が出なかった。

 まるで他人の体の中にいるような感覚で、身動きができなかった。

しばらくすると、笑いながら女子高校生が教室から去っていった。

 黎慈はこれが 隠された記憶 だということに気がついた。

何もしないでただこの光景を見ていると、視界が移り変わった。

 次は同い年くらいだと思われる複数人の男子高校生に、体育館で指を指され笑われていた。

「お前、こんなんもできないのかよwだからインキャなんだよw」

 その言葉と同時に、授業終了のチャイムのようなものが鳴った。

 男子高校生たちは持っていたバスケットボールを記憶の主に投げつけた。

「お前これ片付けておけよ。それくらいしかできないんだから」

そう言うと、男子高校生たちは笑いながら体育館を去って行った。

 また目の前の光景が変わった。

「あんた、またテストでこんな点数取って。お兄ちゃんを見習いなさいよ」

 家の中で母親らしき人物に説教を垂れられているようだった。

視界に涙が浮かんできた。

 そして、また光景が変わった。

辺りは暗く、誰かの声が頭の中をよぎり始めた。

「なんで俺だけなんだよ」

「これでも精一杯やってるんだよ!なんで色々言われなきゃいけないんだよ!お前らにそんな権利はねえんだよ!どっか行けよ!邪魔なんだよ!」

黎慈は、これが記憶の主のトラウマ。夢の主人になった原因だとゆうことを確信した。

黎慈が一度瞬きをすると、扉があった場所に立っていた。

 景佑にこのことを報告するために、合流地点に向かった。

合流地点にはすでに景佑が『待っていました』と言わんばかりの顔をして立って

いた。

2人は椅子に座って、黎慈が体験したことについて話し始めた。

「じゃあ、体験したことを話してくれるか。黎慈」

「ああ」

「おそらく、あれは夢の主人のトラウマに違いないはず。そして、その記憶が原因で夢の主人になった」

「やっと進めたな。どうする?ドリームキーパのところに行くか?」

「ああ、確認しに行こう」

2人は椅子から立ち上がり、ドリームキーパがいる場所へ向かった。

 2人は目的地に向かって歩きながら、景佑がどのようにして陽動をしたのか気になった黎慈は、景佑に聞いた。

「景佑、あんな大量の化け物たちをどうやって処理したんだ?」

「ああ、ブラムを使ったんだ」

景佑の力は、魔法のような弾を無数に打てるといった能力だ。

「俺の力を応用すると、レーザーのような直線上のビームを打てるんだ」

「それを使って、化け物が直線上に重なったところでドカン」

「いやー、気持ちよかったな」

 しばらく歩いていると、城壁のような壁があった。

壁に沿って歩いていくと、ドリームキーパが立っていた門のような夢の核に入れる

入り口が見えてきた。

 近づいていくと、ドリームキーパが立っているのが見えた。

「汝ら、隠された記憶を見つけたようだな。ならば、夢の核への道を開けよう。自ら破滅へ向かう愚者たちよ」

 ドリームキーパがそう言うと、姿が白い雪の結晶のようになって消えていった。

2人はこの後どうするか話し始めた。

「ここから本番だな。黎慈」

「ああ、だが今日は一旦帰ろう。衣百合にも情報共有しておきたい」

「それもそうだな」

 2人は夢の世界から離脱した。

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