第7話 危機

 四時限目の終わりのチャイムが鳴ると、景佑と黎慈はそれぞれの昼食を持ってあの空き教室に向かった。

 2人はそこで向かい合って座り、各々昼食を取りながら、衣百合についてのことを話し合い始めた。

「景佑、俺は朝の意見から変わらない。他人を巻き込みたくない」

「分かってる。ただ、俺考えたんだけど、あの人を直接夢に入れないようにすれば、危険なのは俺たちだけだし、大丈夫だと思うんだが、黎慈はどう思う?」

「つまり、衣百合に参謀的なポジションにすれば問題ないと、そうゆう解釈で間違いないな?」

「ああ、俺だって他人を巻き込みたくない気持ちは同じだ。ただ、仲間を増やさないことには、夢の中での活動限界がきっとくると思うんだ」

「確かにな。リスクも少ない。うん、それなら問題ない、、はず」

「俺らもあの世界についてはわからないことだらけだ。だからこそ、仲間がいると心強いと思うんだよな」

「俺も賛成だ」

「なら決まりだな。放課後、またこの教室で話し合う予定だよな?」

「悪い景佑、放課後に一個予定が入って、、、。帰りのホームルームが終わったら先に行っててくれないか?用事終わらしたら、すぐに行く」

「了解だ」

2人はそう言うと、景佑は何かに気づいたらしく、微笑していた。

「俺ら、話すのに夢中すぎて、飯に手をつけてなかったな」

「あ、そうだな。食べるか」

 2人はそれぞれの昼食を談笑しながら食べ始めた。



昼食を食べ終わると、ちょうど授業開始5分前のチャイムがなり、教室へ戻った。

午後も授業を受け、放課後になった。

 黎慈は二年主任の元に行くために、職員室へ向かった。

職員室に向かうと、黎慈は扉を開け『失礼します』と言って二年主任の席へ向かった。

 席に着くと、二年主任は舌打ちを黎慈に聞こえるくらい大きくし、話し始めた。

「ったく、おせえんだよ。もっと早く来れねえのか?」

「すいません」

「まあいいや。お前、今学生寮に住んでるよな。あそこ、来月で解体することになったから。他のやつにも言ってあるから」

 黎慈は、突然告げられたことに怒りを露わにし、机に拳を叩きつけ、学年主任に声を荒げて話し始めた。

「はあ?あそこは、仲間とこれから過ごすかけがえのない場所だ!それをお前らの勝手な意見で押し付けて?生徒のことを考えられないで何が教師だ?笑わせんなよカスが」

「あ?お前、いい度胸してるな。いいぜ、来月の最終金曜日まで待ってやる。それまでに俺を心変わりさせてみろ。そもそも、あの学生寮の解体を指示したの、俺だしな」

「当たり前だ」

 黎慈はそう言うと、職員室を出て行った。



苛立ちながら、黎慈は空き教室に向かうと、すでに景佑と衣百合が居た。

 衣百合の隣に空いている椅子があり、黎慈はそこに座った。

  黎慈と景佑は互いにアイコンタクトをとり、黎慈が衣百合について話し始めた。

「俺ら、昼休みに羽川さんについて決めたんだ」

「どう?考えは決まった?」

「ああ、一緒に夢について調べてほしい」

「ただし、少しだけ条件があります。夢の中に入るのは俺と景佑だけにしようと決めたんです。女の子をあんなところに行かせるわけにはいかないと思いましてね」

 衣百合は数秒考えた後、答えを出した。

「分かった。じゃあ私は、情報収集ってことでいい?」

「うん。こちらからもその役割、お願いしたい」

「分かった!ってことは今日から私たちは仲間だね!これからよろしくね、2人とも!」

そう言うと黎慈は立ち上がり、手を2人の前に出した。

 景佑と衣百合もその意図に気づいたらしく、2人も立ち上がり、黎慈の拳に重ねた。

 「じゃあ、俺はバイトだから!なんかあったらチャットに連絡して」

 景佑はそう言うと、教室を出て行った。



黎慈と衣百合は教室に取り残され、黎慈は先ほどの職員室での話を衣百合に話した。

その話を聞いていなかった衣百合は、黎慈同様怒りを露わにし、2人はどうするか話し始めた。

「正直、羽川さんにはすまないと思っています。もちろん、亮にも。俺の勝手な言動で寮について付き合わせることになってごめんなさい」

「謝らないで。私もあの寮を救いたいから。とゆうか、あの寮をそんな風に思ってくれたんだ。なんか、ありがとね」

「もちろんです。あの場所でいろんな思い出を作るつもりなんですから。勝手に壊されてたまるもんですか」

「そうだよね!とりあえず、解決策を見つけようか」

「って言っても、今のところは心変わりさせられるようなものはないんですよね

「まだ、時間はあるから。亮も交えて考えよう。とりあえず、今日は寮に帰ろっか」

  2人は、学校から寮に帰って行った。

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