第12話
黎慈は夢の中の出来事について話すために、早めに学校に行くことにした。
衣百合や亮がまだ寝ている中、黎慈は寮を出た。
黎慈は学校につくと、教室には誰も居らず、物静かな雰囲気が漂っていた。
教室には景佑は居らず、昨日景佑に呼び出された教室へ向かった。
教室につくと、景佑が何か考えているようで、窓側の椅子に座っていた。
景佑はこちらの存在に気づかず、黎慈が教室に入っても気づかなかった。
黎慈は後ろから景佑を呼びかけた。
「景佑!来たぞ」
黎慈がそう言うと、景佑が振り向いてハッとした顔で黎慈を見た。
「黎慈!昨日の夢の中での出来事なんだが、、、」
「ああ、分かってる。状況をまとめよう」
2人はそう言うと、夢の中で起きた事をまとめ始めた。
「昨日、夢の中で出会った少女から渡された物をつけた瞬間、景佑は何か感じたか?」
「何か得体の知れないものが、体に流れ込んでくるのを感じたな。おそらくだけど、そいつが脳内に直接語りかけてきたんだ」
「うん、俺と同じだ。その声が聞こえた瞬間、あの力が使えるようになったで間違い無いな?」
「ああ、不思議な体験だったな」
「昨日の夢での出来事は絶対に他人に話すなよ。他人を巻き込みたくない」
「お前もな、黎慈」
そう言うと、景佑が黎慈の前に拳を出し、黎慈がそれを深く握った。
その瞬間、誰かがこの教室の扉をゆっくりと開けた。
黎慈が振り向くと、そこにいたのは衣百合だった。
景佑は衣百合のことを知らないらしく、黎慈に話しかけた。
「誰?お前の知り合い?」
「同じ寮に住んでる先輩だ。でも寝ていたはずじゃ、、」
2人が話していると、衣百合が口を開いた。
「私、寮の玄関から誰か出て行くのが聞こえたから、不思議に思ってついてきたの。ごめんね、悪趣味で」
「今の話、最初から聞いていたんだけど、2人はこの街の夢についての真相を知りたいんだよね。おそらくだけど、今広まっている噂通りだと、かなり危ないと思うから、できればやめてほしい」
「だけど、それを私には止めることはできない。けど、真実を求めるなら、、、」
衣百合は一呼吸おき、話し始めた。
「私にも手伝わせてほしい。もちろん、無理にとは言わない。だから、2人には放課後までに考えていてほしい。また、放課後にこの教室で」
そう言うと、衣百合は教室を出て行った。
黎慈と景佑は衣百合の処遇について話し合い始めた。
「景佑、俺はさっき言った通り、他人を巻き込みたくないのは変わらない」
「でも、俺らの夢についての話を知っている以上、仲間に引き入れるしかないんじゃねえか?変な噂流されても面倒だし」
「衣百合はそんなことする人じゃないとは思うんだが、確かに一理ある考え方だな」
教室の外の声が騒がしくなってきた。
どうやら電車通学の生徒達の時間らしく、一旦は昼休みにまた考えをまとめることにし、2人は教室を後にした。
2人が教室に戻ると、前の扉の近くで衣百合が立っていた。
手には小さな布の袋を持っており、黎慈が帰ってくるのが見えると、衣百合がこちらに歩いてきた。
衣百合は布の袋を黎慈に渡した。
黎慈はこの布の袋の正体がわかっておらず、困惑した表情で衣百合を見た。
「それ、お弁当。机の上にあったのに持っていかなかったでしょ。届けにきたの」
そう言うと、衣百合は自分の教室の方向に歩いて行った。
去り際、衣百合は黎慈の耳元で囁いた。
「さっきの件、考えておいてよ。生徒会長として、色々と解決したいの」
黎慈と景佑が教室に戻ると、何か勘違いをされているらしく、黎慈と衣百合の関係性について噂されていた。
黎慈は特に気にせず、自分の席に座った。
しばらくすると担任が教室にやってきて、朝のホームルームを始めた。
「あい、週番号令」
「起立」
「礼」
「着席」
「えー、今日から早速通常授業なので、気持ちを切り替えて臨んでください」
「あと、一週間後には部活動結成があるので、部活に所属している奴は忘れずに行くように」
「んじゃあ、終わり。週番、号令」
「起立」
「礼」
朝のホームルームが終わると、黎慈は教室の前の扉にいる担任の木俵に呼び出された。
「黎慈だっけ?今日の放課後、二年主任の和寿先生が話したいことがあるらしいから、その人のところまで行くように」
「お前、この学校に転校して間もないんだから、あまり変な行動起こすなよ」
「特に景佑と仲が良いようだけど、十分気をつけて生活するように」
そう言うと、担任は去っていた。
去り際に担任が何かを言った。
「何か起こしたら、仕事増えるだろクソが。手を煩わせるなよ」
まるで生徒を金稼ぎの道具としかみてない木俵の裏の顔に、黎慈は恐怖を覚えた。
黎慈が教室に帰ると、始業のチャイムが鳴って、休み時間になるまで授業に勤しんだ。
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