第3話
その話し声の中に、 夢 について話しているのが聞こえてきた。
「今日、隣のクラスのさっちゃん。休みらしいよ、噂の 夢 のせいで」
「ちょっと、やめなよ。転校生くんもいるんだし、気軽に夢の話題出さないでよね」
やはりこの街には何かがある、と黎慈は確信したが、昨日の男子生徒と衣百合の件がある手前、ダメ元でクラスメイトに聞いてみることにした。
まずは、隣に座ってスマホをいじってる男子生徒に聞いてみることにした。
「なあ、突然悪いんだけど、君は 夢 ってなんだかわかる?」
「あんた、転校生だろ。ごめん。その質問には答えられない。他をあったてくれないか。って言っても誰も答えてくれないと思うけど」
案の定、ダメだった。
黎慈は自分の席に戻った。
その数秒後に男の担任らしき先生がやってきて、朝のホームルームを始めた。
「はい、週番の人、号令かけて」
「起立」
「礼」
「着席」
そう言うと、生徒が全員座り、担任が話し始めた。
「はい。私が一年間このクラスの担任になる、木俵です。担当教科は、数学です。」
「今日の日程は始業式が体育館で行われるのですが、その始業式が終わったら即下校です」
「下校が早いからってハメを外しすぎないように」
「じゃあ、週番号令を」
「起立」
「礼」
担任の木俵がそう言うと、各々が話始めた。
クラスの居場所がないと思った黎慈は、始業式が始まる前に亮のクラスへ行こうとした。
教室を出ると、おそらく同じクラスの生徒であろう男子生徒に話しかけられた。
容姿は、身長が高く、制服を着崩し、少し近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
「君、転校生でしょ。ちょっとこっちきて」
黎慈は男子生徒に言われるがまま、人気の少ないC棟の空き教室へ向かった。
2人はそこへ着くと、男子生徒がすぐに本題を話し始めた。
「君、この町の 夢 について気になっているんだろ。いいか、この話に首を突っ込むのはお勧めしないが、そんなに気になるなら、教えてやる」
「今は始業式が始まるから詳しくは話せないが、放課後。またこの教室に来てくれ」
彼はそう言うと、教室への階段を登っていった。
黎慈はD棟の教室で今言われたことの本意について考えていると、始業式開始5分前のチャイムが鳴った。
黎慈は急いで教室へ帰ると、すでに担任と生徒が待っていた。
全員が集まると、並んで体育館へ向かった。
体育館に着くと、衣百合らの生徒会の面々らしき生徒達が整列指導をしていた。
黎慈達の並ぶ場所は、右から六番目の場所らしく、そこに生徒会の人が連れていった。
しばらくすると、全生徒が集まったのか、始業式の生徒挨拶が始まった。
「これから、始業式を始めます」
生徒が壇上から降りると、次は校長らしき人が壇上に上がり、話を始めた。
「えー、みなさんお久しぶりかと思いますが、、、、」
だが、校長の話を真面目に聞いてるのはごく一部で、話すなり寝るなり色々やっている生徒が多かったが、前からさっきの男子生徒がアイコンタクトをとってきた。
黎慈は放課後に男子生徒のところに向かうことを決めた。
いつの間にか始業式が終わっており、生徒達は各々自分たちの教室へ戻っていった。
教室に帰るとすぐに帰りにホームルームが始まり、担任の木俵が話し始めた。
「今日はこれで終わりですが、明日からは通常授業が始まりますので、みなさん休まないように」
「それでは、解散」
担任のその声と共に、席を立ち、帰る者や友達と話し始める者などが多かった。
黎慈は、早速さっきの空き教室へ向かった。
教室へ着くと、すでにさっきの男子生徒がおり、こちらを見るなり少し笑った表情見せ、話かけてきた。
「本当に来たんだ。そんなに知りたいんだ、この街の 夢」
「当たり前だ。この街に一年間住むんだ。少しでも自分の中での疑問を晴らしておきたい」
「そっか、分かった」
黎慈は、 夢 についてついに話してもらえると思い、少し気分が上がっているところに、男子生徒が提案を持ちかけてきた。
「夢 について教える代わりに、少し協力してくれないか。この街の 夢 が原因で死んだ友人のために」
急に神妙な空気になった空き教室に、緊張が走った。
黎慈は、この街の真相と謎の少女達の真相を知るために、提案を受けることを決めた。
「ああ、この街に来てから色々不思議な体験をしてるんだ。それを確かめたい」
「分かった。少し長くなるから、そこの椅子に座ってくれ」
黎慈は、黒板の近くにあった鉄パイプ製の椅子を持ってきて座った。
座ると、早速男子生徒が話し始めた。
「この街の 夢 は、他の人間が体験できる夢じゃないんだ」
黎慈が疑問に思っていると、男子生徒がさらに話し始めた。
「どうやら、夢が現実世界で具現化。所謂、正夢が起こると、その正夢を見た人が数時間後に死ぬ、と言った現象なんだ」
「その現象で、俺の友人は死んだ。」
「俺も詳しいことは分からないんだが、だからこそ一緒に調べてほしい。地元の奴らだと死ぬ可能性があるって言って誰も調べてくれないんだ。頼む、俺の亡き友人のためにも、力を貸してほしいんだ」
どうやらあの少女が言っていたことは本当のことであるようだ。
黎慈は後に引けなくなり、自分に課された使命を感じ、覚悟を決めた。
「お前から話を聞いたんだ。もう後には引けないさ。この街の真相、突き止めてやる」
黎慈がそう言うと、男子生徒はそっと胸を撫で下ろした。
「そういえば、名前を聞いてなかったな。俺は枝先黎慈。お前は?」
「高杉景佑だ。これからよろしくな」
2人は自己紹介を済ませると、硬い握手を交わした。
黎慈は、まだ疑問に思っていることがあり、景佑に聞いた。
「ただ、原因を特定するなんて、どうやってやるんだ?夢の中に入って原因を探るくらいしか方法がない気がするが、、、」
「お前、鋭いな。すでに方法はあるぞ。まず、今黎慈が言った通り、夢の中に入ることだ。この街の夢は共通夢も存在するらしい。そしてその中に入るには、アイマスクをつけて寝る、とゆう事なのが俺の調べで判明した。はい、これ」
景佑はそう言うと、黎慈にカバンから取り出したアイマスクをあげた。
黎慈は笑いながら受け取ると、微笑しながら話し始めた。
「本当かそれ?笑 まあ、できることもないし、今日やってみるか」
「ああ、頼む。今日の深夜、また夢の中で落ち合おう。じゃあ、また」
景佑はそう言うと、空き教室を出て行った。
黎慈も同様に、教室を出て、帰路についた。
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