第4話

 黎慈が学生寮に着いたのは昼前だった、夜まで特にすることがなかった黎慈は、亮をご飯に誘おうと思い、部屋に向かった。

コンコン、とノックし部屋に入るとそこに亮の姿はなく、黎慈は仕方がなく、1人で昼ごはんを食べに行くことにした。

 黎慈が向かったのは、近くにあったチェーン店『SOY ZERIA』に向かった。

 そこに着くと、入り口の近くに『バイト募集中』の張り紙が貼ってあった。

 黎慈がその張り紙を少し見つめていると、中から若い女性店員が出てきた。

「キミ、もしかしてバイトに興味ある?ここら辺じゃ見ない顔だけど、もしかして引っ越してきたとか?」

「いや、見てただけです」

 黎慈はそう言うと、店内に入り1人用の席に座った。

ここは豆料理が有名で、黎慈は大豆ハンバーグを頼もうと店員を呼んだ。

 ベルを鳴らすと、さっきの女性店員が来た。

「ねえ、さっきのバイトの件。どう?」

「少し考えてみます」

 黎慈はそう言うと、女性に大豆ハンバーグを頼んだ。

 女性店員は、注文をメモすると、厨房に消えていった。

黎慈は、頼んだものが来るまで色々考えることにした。

 (夢のこと、少女のこと、どこまでが真実なのかは分からないが、最初の電車で出会った女性。全てが、謎のこの街。やはり俺は誰かに導かれて、、、)

そんな考えが黎慈の頭の中に過ぎると、大豆ハンバーグがやってきた。

 大豆とは思えないくらい肉肉しい。

 黎慈はそれを平らげて会計をして、学生寮に戻った。

学生寮のロビーでは衣百合がソファーで寝ており、起こさないようにと忍足で自分の部屋に戻った。

 時刻は午後3時、まだ時間があると思った黎慈は、少し仮眠をとり、夢の中で会ったあの少女に会おうとした。

 スマホでタイマーをセットし、黎慈は眠りにつくことにした。


「あなたとは何か縁があるようだ」

 また聞き覚えがある声が聞こえ、黎慈は目を開けると、そこには朝、夢で出会った少女がいた。

「朝の私の質問の意図。分かってもらえましたか?」

黎慈はすでに覚悟を決めており、少女に答えを言った。

「もちろん、覚悟を決めてきた。夢の探究者とやら、受けさせてもらいたい」

「あなたならそう言うと思っていました。では、あなたを夢の世界に入れるように手配いたします。夜までには入れるようになりますので、またお越しください」

「では、私はこれで」

少女はそう言うと、視界が暗転した。

 黎慈は気づくと、起きており、スマホのアラームが鳴っていた。

 時間は午後6時を過ぎており、ちょうど夜ご飯の時間らしい。

下の階からいい匂いが漂ってくる。

 黎慈はロビーへ向かった。

ロビーのキッチンでは、衣百合が三人分の夜飯を作っていた。

 衣百合はこちらに気づいておらず、黎慈はキッチンへ行って衣百合の隣に行った。

「何か手伝えること、あります?」

黎慈はそう言って衣百合の顔を覗き込むと、衣百合はびっくりしたようで、『ひゃあ!』と言う声が聞こえた。

「ちょっと、びっくりさせないでよ〜!そうだなあ、、、じゃあそこの鍋見といてくれる?」

 黎慈は頷き、鍋を見ることにした。

鍋の中身を見ると、カレーが入っていた。

しばらく鍋を見ていると、衣百合が話しかけてきた。

「いやー、枝先くんは頼りになるよね。亮にも見習って欲しいよ」

「亮はどこに?」

「さあ?どっかに遊びに行ってるんじゃない」

そんな話をしていると、亮が帰ってきた。

「ただいま。黎慈、あの後教室には行けたか?」

「当たり前だ。朝はありがとな、亮」

 黎慈が言った言葉を聞く前に、亮はすでに自分の部屋に戻っていた。

 数分すると、亮が着替えてロビーの椅子に座った。

衣百合の『よし!』の声と共に、焼いた卵焼きをテーブルに持っていた。

 その後、衣百合はキッチンに戻り、大きめの皿を椅子がある場所に人数分持っていた。

並べ終わると、衣百合が黎慈と亮に対して話し始めた。

「今日はカレーだから、自分が食べたい量キッチンから盛ってね」

 衣百合がそう言うと、亮が衣百合のことを茶化しながら話し始めた。

「なんか今日の夕食、豪華だね。なんかいいことでもあったの?」

「な、なんもないよ。ただ、枝先くんと初めて一緒に食べる夕食だから、少しくらい豪華にしようかなって」

衣百合は、黎慈の顔をチラ見してから、少し頬を赤くし、空いた皿を持ってキッチンに向かった。

 亮は何かを確信したらしく、ニヤリといやらしい顔をしていた。

亮と黎慈の2人も空いた皿を持ってキッチンに向かい、適量盛り付けた。

 ロビーに戻り、三人が食卓を囲んでいると、隣に座っていた亮が小声で黎慈に話しかけた。

「黎慈、お前このチャンス大事にしろよ」

黎慈はなんのことを言われているのか分からず、困り顔をしながら亮の方を見ていた。

「お前、今の流れで気づいてないのか?まあいいや、衣百合もかわいそうだな、、」

2人で話していると、向こう側に座っている衣百合が話しかけてきた。

「ちょっと、2人で何話してんの?私もいるんだけど?」

 亮は慌てて取り繕い、三人は夕食を食べ終わった

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