第2話

 その聞き覚えのある声を聞いた瞬間、黎慈は飛び起きた。

目を開けると、そこは電車の中にいたときに見た部屋と同じ空間だった。

 ただ、少し違う点が、電車で見た女性がおらず、代わりに少女が黎慈の目の前に立っていた。

 黎慈が挙動不審に辺りを見渡していると、少女が再び話しかけてきた。

「今日はお疲れかもしれませんが、この話だけ聞いていただけますか?」

 その問いに黎慈が頷くと、少女が話し始めた。

「まず、この空間についてです。この空間は私とあなたしか認識できない空間であり、外と同じ時間が流れています。今、私とあなたが話しているこの時間も、現実でも等しく流れています」

「そして、あなたもここに来るまで耳にしたであろう、この町の 夢 の話」

「この町の夢は、他の夢と違い、夢が実体化。所謂、正夢が起こると、その夢をみた人が死ぬ、といったものになります」

「私は、その原因を探るために現れた、救世主。夢の探究者を手助けするべく、現れ

ました」

「私は、あなたが夢の探究者の才能があるとお見受けしました。誠に勝手なお願いなのは重々承知しているのですが、夢の探究者として、この町の 夢 の原因を特定してはくれないでしょうか?」

 少女が話終わると、どこからともなく目覚まし時計のアラームの音が聞こえてきた。

 その音が鳴ると、少女はまた黎慈に話だした。

「今日はここまでのようですね。次に会うときまでに、ご自身の意見を固めておいてくれると幸いです。では、お時間ですので私はこれで」

 少女がそう言うと、視界がどんどん暗くなっていった。


 気がつくとすでに朝になっていた。

仮眠から起きることはなく、そのまま寝てしまっていたようだ。

 黎慈は、先程の状況や少女が言っていたことを整理した。

「夢、、、夢の探究者、、、夢が実体化、、、ねえ?あまりに現実的じゃなさすぎるけど、羽川さんが 夢 について隠すそぶりをしたのも、なんとなくだけど納得できるし、いっちょ信じてみるか!」

 黎慈は覚悟を決めたらしく、学校の制服に着替えて学生寮のロビーに向かった。

 ロビーを階段から見下ろすと、衣百合は椅子に腰かけており、朝食を食べていた。

 衣百合の隣には、昨日ぶつかった小柄な男子生徒が座っており、同じく朝食を食べていた。

 衣百合は階段からこちらを見ている黎慈を見つけると、手招きしてこちらに来るように誘導した。

 黎慈が階段を降りると、衣百合が話しかけてきた。

「おはよう!朝食、私が作ったから良かったら食べてね」

 衣百合はそう言うと、自分が食べた後の食器を片付けてキッチンへ向かった。

 ロビーには黎慈が、小柄な男子生徒が残された。

黎慈は、衣百合が作ってくれた朝食を食べるために、椅子に座った。

「いただきます」

 そう言うと、黎慈は朝食を食べ始めた。

皿の上には、ベーコンエッグとサラダが乗っており、もう一つの皿にはトーストされたパンが乗っていた。

 黎慈は、それらを食べながら、小柄な男子生徒に話しかけた。

「そういえば名前を聞いてなかったよね。ひとつ屋根の下で暮らすんだから、仲良くしようぜ」

「、、、諸藤 亮。多分だけど、君と同じ2年生だよ」

 亮がそう言うと、黎慈は「ぶぐふぉお」とゆう音と共に口に含んでいた水をホースの如く吐き出した。

 数秒して黎慈が落ち着くと、また亮に向かって話だした。

「、、、本当にすまん。ちょっと信じられなくて」

 少し笑い混じりに黎慈が話すと、それを笑いながら話し始めた。

「別に気にしてないよ。もう慣れっこだし。それよりも、これから一年間よろしくな、黎慈」

「もちろん、よろしく!てか、なんで俺の名前を?」

「さっき衣百合から聞いた」

 亮と黎慈がそんなことを話していると、階段から制服を着た衣百合が階段から降りて来た。

 一階に降りてきて、衣百合は黎慈達に話し始めた。

「2人とも、さっさと食べて片付けてね。今日は始業式だよ。一日目から遅刻とかヤバイからね。特に枝先くん。」

そう2人に忠告して、衣百合は学生寮を出た。

 黎慈達も、朝食を食べ終わり、キッチンへ食器を片付けた。

どちらも制服に着替え、黎慈は亮につられるように学生寮を出た。

 数分歩くと、学校が見えてきた。

 校門の前には桜並木が満開で、おそらく入学式であろう新入生が学校に入って行くのが見えている。

 学校は、A棟からD棟まであり、田舎にしてはかなり大きな学校であるのがみて取れる。

 亮と黎慈は上履き置き場まで行くと、そこにはクラスの割り当てが書いてあった。

どうやら黎慈の教室はB棟の2階、二年五組らしい。

 亮は二年一組でここから、黎慈たちは別々の教室へ登校して行った。

 黎慈は教室に着くと、黒板にクラスの席の割り当てが書いてあるのを目にした。

黎慈の席は窓側の前から二番目の席で、外がよく見える席だった。

 黎慈はその席に座り、あたりの様子を伺った。

 教室にいるクラスメイトは、ほぼほぼ全員が面識があるらしく、楽しそうに春休み中の出来事について話していた。

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