16 「態度に出す」



12時。



「童貞! 昼メシ食いに行こーぜ!」



聖也が昼食を誘いに来た。



「今日どこ行くかジャンケンしようぜ」



俺が勝ったらラーメン屋、聖也が勝ったらそれ以外...というジャンケン。


俺は聖奈の方を見る。


彼女は机の上に弁当を広げていた。


聖也と一緒に食べるつもりではないのか。


秘書課は馴れ合うタイプではない人間が多い。


勿論秘書課同士仲が良い者もいるが、一人で昼食を食べる者も少なくはない。


しかし兄を借りてまで聖奈を一人にするのは、なんとなく気が引けた。



「俺はいい。ここで食べる」



聖也は...まあ、一人でもいいだろう。



「え? マジ? 一緒に食べに行くと思って、聖奈に弁当作って貰わなかったのに」



不満そうな聖也。


沖縄から戻ってきて、実家にいると思ったが、兄妹で暮らしているのか。



「まあいいや、俺カレー食いたいから。一人で食べに行ってくるよ」



そう言って聖也は出て行った。


俺はこれ見よがしにため息を吐く。


何をするわけでもなく、机に肘をついてそっぽを向く。


聖奈の視線は感じた。


それでも何も言ってこないので、もう一度ため息を吐く。



「先輩...出前頼みましょうか?」



やっと聖奈が話しかけてきた。



「もやしラーメン定食」


「えっ、昨日と同じですか?」



問いには答えない。


同じもの食べて何が悪い。


俺が返事を返さないので、聖奈はラーメン屋に注文した。



「先輩、あの...今日指示していただいたタスクなんですけど...少し減らしていただけませんか?」



電話をかけ終えた聖奈が言う。


急ぎの仕事ではないが、意地悪して「今日中に」と指示していた。



「これじゃあ今日...一緒にお買い物行けないです」



そう言われて俺は振り向いた。



「行ってくれるの?」



聖奈は控えめに頷く。


やったね。



「明日の会議の資料と、社長のスピーチの台本は俺が作るよ。あと終わらなそうなのあったら言って」



気分が良い。


聖奈に餃子1個あげてもいいかな。

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