13 「動画でお勉強」
「...わかった。まだ10分くらい時間あるよな。お前に見せるわ」
聖也はスマホをいじりながら言う。
「興奮する画像でも探してる?」
「アホか! 動画見せるんだよ! 付け方を教える動画。探せば絶対あるだろ」
いつもエロ動画送ってくる聖也のことだから、エッチなの探しているのかと思った。
部屋は違うが、働くフロアは一緒なので、二人で同じ階に降りる。
「にーや! あっ...おはようございます、先輩」
先に来ていたのか、ちょうど女子トイレから聖奈が出てきた。
今日は髪をポニーテールにしている。
「あ、可愛い」
俺が褒めると、昨日のこともあってか、聖奈は顔をしかめた。
「髪の毛結んでるの可愛い」
今日はちゃんと伝える。
ぬいぐるみじゃなくて、聖奈が可愛い。
「...明日から髪おろします」
「なんでだよ」
素直じゃないな、聖奈は。
「にーや、何してるの?」
聖奈は兄の方へ近寄った。
片手でスマホをいじりながら、もう片方の手で待てと合図する聖也。
「今この童貞の為に、コンドームの付け方の動画探してるんだよ」
「ホント何してんの? 会社で」
聖奈が冷たい目で俺達を見る。
すまんな聖奈、俺は先に卒業する。
「お、これとかいいじゃん。聖奈もいつかの為に一緒に見とけ。ちゃんとした動画だから大丈夫」
そう言って聖也は、俺達二人に動画を見せた。
看護婦のような格好をしたお姉さんが、模型を使って説明する。
「へえー、あんな袋に入ってるのね」
なんだかんだ聖奈は興味があるようだ。
お姉さんが一瞬で模型にゴムをつけたので、俺と聖奈は声を出して驚いた。
「すごい! あっという間だったわ!」
「清楚な顔してなかなかやるな」
二人で食い入るように動画を見る。
「いやいや、普通だから」と聖也は言うが、いざという時もたつかないか俺は心配だ。
普段イケメンで生きてるのに、行為中カッコ悪いと思われたくない。
自主練するか...。
その時、エレベーターの到着音がして、扉が開いた。
聖也はスマホを瞬時にしまって、お辞儀をする。
「おはようございます!」
オールバックの髪に、冷たい印象を与えるシルバーフレームの眼鏡。
エレベーターから降りてきたのは父さんだった。
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