9 「あだ名の由来」


『もしかして、帝翔さんがダミアン?』



俺はマリアに言われたことを、ふと思い出した。



『聖奈ちゃんから帝翔さんの名前は聞いたことがないんですけど、ダミアンっていう幼馴染がいることは何度か聞いたことがあって』



確かに、俺は聖奈にダミアンと呼ばれていた。


由来は、1970年代からシリーズが始まったホラー映画「オーメン」の主人公の名前からだ。


ダミアンは悪魔の子で、周囲の人を不幸にさせる。


何故俺がダミアンなのだろう?


確かに父さんは男尊女卑、モラハラ気質の悪魔のような人間だが、それなら兄さんの方がダミアンという名に相応しい。


ダミアンと同じ6月6日生まれで、何人もの女性を泣かせている。


俺は聖奈のことを実の妹のように可愛がっているのに、悪魔の子呼ばわりとは心外だ。



「いただきます」



俺と父さんは手を合わせてから食事を始めた。



「最近はどうだ? 何か変わりはあったか?」



父さんは毎回食事中に、俺の近況を聞いてくる。




「聖奈が異動してきたよ。俺のところに」



俺は報告した。



「龍一の娘か」



聖也のパパ...雷門龍一は父さんの親友だ。


高校の同級生で、そのまま同じ大学に行き、同じ会社に就職した。


何を隠そう父さんは雷門の専務だ。



「龍一の娘はいずれ結婚して退職するだろうから、軽い仕事だけ任せておけ」


「結婚...って、相手いないじゃん。彼氏いないって」


「雷門家の娘が一生独身というわけもないだろ。そこに愛があるかは知らんが、雷門の娘と結婚したい男は世の中山ほどいる」



確かに、聖奈と結婚すれば雷門一族の一員になる。


お金に困ることはないだろう。



「お前は駄目だぞ」

 


父さんが俺に釘を刺す。



「龍一の娘と結婚なんて、絶対に許さないからな」



子供の頃から言われ続けて耳にタコが出来る。

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