6 「黒髪スーツのイケメン」


聖也との昼食はだいたいカレーかラーメン。


会社近くは飲食店が多いのに、だいたいこの二択だ。


時々違うものも食べるが、今日は俺が選んでいいとのこと。


今週三度目のラーメン屋に入った。



「またここかよ。まあでも今日は童貞くんが面白かったから良しとしよう」



聖也はまだ俺のことを笑っている。


さすがにイライラしてきた。


いつも食べているもやしラーメン定食を注文して、俺はスマホをいじる。


マリアのSNSでも見て癒されよう。


ちょうど数分前に新しく投稿されていた。



『あー結婚したい。

私もう26なのに彼氏いなくて焦る!

誰か声かけてくれないかなー。

黒髪スーツのイケメンがいいなあ笑』



俺はスマホを落としそうになる。


彼氏いない?


いつの間に別れたんだ?


彼女の投稿には、オシャレな飲食店で撮った料理の写真が多い。


てっきり彼氏とデート中に撮ったものかと。


彼氏と別れてることに気付かなかったなんて...俺はマリアの何を見ていたんだ!


黒髪スーツのイケメンに声をかけられたい?


俺じゃん!


生まれて一度も染めたことがない髪。


毎日必ずスーツで出勤。



「聖也、俺ってイケメンか?」



コーラを飲んでいた聖也が呆れた顔をする。



「は? いきなり何?」


「俺ってイケメンか?」


「まあ...顔は良いよな。内面に問題はあるけど」



自他共に認めるイケメン...マリアが求める男の条件が全部揃っている!


こんな投稿見たら、仕事してる場合じゃない!

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