27話 素顔と師父としての尊厳
うまい具合に吸収を手助けできている。二人とも魔法で体に循環させる、ということに慣れているから外側からも誘導がしやすい。思ったよりも早く体中を回ったからか、まだ丹薬の効能がかなり残っている。このまま放置しておくにはもったいないな…血丹術もしたわけだし、丹田のところにとどめておくか。2人とも感知はできないが、今後功法を修練することがあれば、活用することもできるし、今後怪我したときにまた治療のも使えるからな。
「…よし!二人とも終わったぞ、もう楽にして大丈夫だ。精神も楽になっているはずだし、体の傷もよくなっているだろう?」
「ほんとだ!すごいね師父!」
「これは…すごいな…これは私の家族の治療に活用できないか?」
「それは…コーネリアの家族を診てみないと分からない。あ、それと2人が戦っていたグリフィンは潰れて心臓を取れなかったが、俺が倒した群れのはとれるはずだ。」
「そうか…よかった。本当にありがとう、天老君にミラ」
「気にしなくていいってコーネリア!私もいい訓練になったからさ!死にかけたけど…(ボソッ)」
「ミラの言う通りだ。あくまで俺たちは依頼として受けただけだからな。」
「わかった…、でも本当に2人には感謝しているわ。これで兄も助かる…」
「助けたい家族ってお兄さんだったの??」
「あ、ああ…そうなんだ」
「無事に治るといいね!」
「その…ミラは私が兄を助けようとしてると知っても…何も思わないのか?」
「?どういうこと?」
「男は傲慢で自己中で怠慢の屑っていうのが、世の中の常識だから…そんな男を家族だからといって助けようとしていることに反感とか…ないのか?」
「ん-そういうのはないよ。私自身は男と会ったことがないからよくわかんないし、ママもあったことのない人を創造とかで決めつけるのはやめなさいっていつも言ってくるし。なにより…もしコーネリアのお兄さんがさっき言った通りの人なら、こんな命を懸けてまで助けようとはしないと思うんだ。」
「そうか…ミラはいい人だな。」
「照れるってコーネリア!」
ミラの話を聞く限り顔を見せても問題なさそうだ…クラウディアにもな。これで一安心だ。
「あ、ていうかさ!もう治療も終わったわけだし、さっそく顔見せてよ、師父!」
「さっそくか…まあいいだろう。見せるといったのは俺だからな。」
そう言って俺は仮面を外して、声も変えないで元に戻した。
「これでいいか?2人とも」
「「………」」
2人とも無反応だ。
「どうした?なにか反応をくれるとうれしいんだが…それとわかっていたと思うが、天という名前は偽名だ。俺の名前はアドリウスという。もちろんほかの人がいるところでは今までの天老君だったり、師父と呼んでもらうが、この3人しかいない場でならアドリウスと呼んでもかまわない。」
なぜか反応が返ってこないので名前も教えた。顔を見せたのだから名前を隠していたところであまり意味はないからな。なのに…まだ無反応だ。
「そろそろ反応をくれないか?せっかく素顔を見せたんだから。」
「師父…いやアドリウス…すごくかわいいよ!」
「へ?」
「私もかわいいと思うわ!」
「?!」
あ、…そういえば俺の慰安の年齢って6歳だったな…、2人より年下じゃないか…。なるほどこの反応は…自分より年下の男の子に対するものだからか!
「ていうか師父が私より年下って…本当だったんだね!なんか普段の言動から勝手に年上かと思ってたけど…身長とかみたら絶対年下だったけどね!」
「アドリウスか…間違いなく将来はかっこよくなるな。兄さまよりかっこよくなるだろう。」
「そうだよね!間違いなくかっこよくなるよ師父!」
そうして俺はそんなことを言われながら、ちやほやされたままその日を過ごした。ハハ…師尊としての威厳はもうゼロだな。
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